見出し画像

Kokugo_Note 高2現代文B・国語表現 #46

 締め切りの長い仕事が山積し、身動きが取れなくなるうちに片付けようと奮闘していると、ますます自家撞着に陥るという悪循環の渦中にあったので、筆が進まず終いだった。

 現在、夏季休暇中とは言え、部活動指導でほぼ日中を過ごしてしまうので(実際の指導時間は2時間半ほどだが、その前後で準備や書類仕事、打ち合わせ、振込などあれこれある)、結局は、不謹慎ながら部活動中に、試験問題作成や授業準備プランを練ることになってしまう。マルチタスクの方が捗ることもあるので、これはこれで楽しかったりする。

 頭の中の構想を、PCで出力していく作業は、職員室に戻ってきて着替え終わってからの1時間ほどしか時間を取ることができない。(さらに締め切りの長い、部署の仕事は棚上げしたままになってしまう。)

 帰宅してから夜にあれこれできるではないかと思う方もいらっしゃるだろうが、未就学児の育児をした経験があれば、その困難さを理解してもらえると思う。彼らは親が起きている時間は、一緒に遊んでもらえる時間だと認識しており、絵本のように読み聞かせをしたらすやすや眠ってくれる無邪気な存在ではないのだ。

 ともあれ、今は部活動大会引率で少し時間を取ることができたので、きっかけとして、第1学期の復習をしてみたい。

 中間考査では、随筆2本、評論1本を扱った。   ①青木玉「月あかり雪あかり花あかり」      ②リービ英雄「詩を翻訳する少年」     ③高階秀爾「『間』の感覚」である。

 随筆では「筆者はどのような体験を通して何を発見したのか」、評論では「どのような問題意識から、どのような法則・原理・仕組みを見出したのか」という、それぞれの文章構造の違いを確認した。

 定期考査の論述問題では、 
▼  ①のテーマのひとつ、「待つ」という語句から、「あなたの人生と『待つ』こととの関わり」について、短いエッセイを課した。※以前、大阪公立高校入試で似たような設問があった。

▼ ②のテーマのひとつ、「翻訳」から直訳と翻訳との違いについて、夏目漱石の挿話「I love you」=「月がとても青いなあ」の意図について論じさせた。 

▼ ③では、「関係性の広がりが日本人の美意識や倫理と深く結び付いている」という、筆者の言説を受けて、自分自身の日常生活からその事例を綴ることを求めた。 

 これらは試験前に事前に与えておいて、当日にそれぞれ100〜200字位で記述させるという形式を取っている。常体で、一文を短く、論理的に、根拠を明らかにして書くというトレーニングを主眼に置いているためである。

 以下、解答例として、よく考えられていたものをまとめて紹介したい。※ひとりがこの解答を書いているのでなく、こちらでまとめています。

 ▼ ①について、
 「待つということ」は、楽しい気持ちを高めることだ。誰しも危険を待ったりはしない。期待する気持ちは、その先により良い刺激や心地良さがあるからで、楽しみを膨らませていくものだと思う。その意味で「一度考えてみる」と言い換えることもできるだろう。例えば、USJなどのアトラクションでは1時間を待つことも多いが、この時、私は「空いている」という認識を持つ。待ち遠しい気持ちを共有する友だちが一緒だからだ。このように、「待つこと」は価値観の変容を促すものなので、私は待つことが好きだ。

 ▼②について
 日本人の慣習として「みんなが〜意識」は高いが、「私とあなた」意識はなるべく避ける傾向にある。共通の美しいものを観るという体験を共有することで、心が伝わると考えられていたのではないか。また、夜に男女ふたりで出歩くということ自体が特別だったとも考えられる。だから、「月がきれいですね」という呼びかけも「そうですね」という返答が当然、予想されるもので、お互いに心地良さを分かち合うことに繋がっているのだろう。だから、「我、汝を愛す」という一方的な通達は、個を優先する西欧文化では当然なのかもしれないが、日本では馴染まないものだから、漱石は翻訳したのではないだろうか。

 ▼③について
 日常会話において「関係性の広がり」を感じるのは、やはり人間関係である。日本では「長幼の序」という意識が強いので、目上の人より先に話してはいけないとか、まずは先生や親の話を聞かなくてはいけないとか、強い拘束力がある。その礼儀が美意識と見做されているところを日々感じる。授業を一方的に進められたり、黒板をひたすら写すことを求められたり、一方で、先生や親が怒っていることを忖度するように叱られたり、だ。何もかも明示して欲しいという訳ではないが、前提となっている事柄を知らされないで、受動的な立場に追いやられるのは本当に疲れる。以心伝心も時には良いかもしれないが、これからの日本文化の軸になって欲しくない。

 上の回答は子どもたちの回答を集約したものなので、高2らしくない表現もあるが、大意は変わらないのでご容赦願いたい。 ※ 念のため、webで剽窃がないかはチェックしているが、幸運なことに?引っかかることはなかった。

 第1学期前半のテーマは、ひとつの言葉の概念を丁寧に読み解く、というものだった。採点基準は、ルーブリック評価を用いて行った。

 新しい担当者の手法に慣れるまでは時間がかかるので、今までの国語の授業やテストから脱却する契機となれば幸いだと伝えている。

 

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?