語源)配偶者関係の語についての覚書
妻という語の語源について、気になったことを調べたことをまとめておく。
▌「妻」の語源説
刺身のツマや連れ立った女が由来であるという言説を見た。妥当性があまりにも低い説を、語源として他人に紹介するのは、やめたほうがよいと思われる。
そこで、一つの実践例として、現行の語源説の妥当性を判断してみたい。日本語学が専門でなくても、他者に紹介する・説明する場合は、比較的妥当な語源説を紹介するべきだと考えるからである。
できる限り、日本語学の知見を正確に扱いたいが、不勉強のため、至らぬ点が多いと思われる。
【語源説の検討】
語源説が妥当かどうかを判断するときには、いくつか注意しなければいけないことがあるように思う。
第一に、古い用例と意味が合致するか、である。たとえば、上代の用例を見る限りでは、妻(つま)には配偶者を呼ぶような意味があると考えられる。そして、女性に限定された語ではないこともうかがえる。このような古くからある意味と合わない語源説は妥当ではない。
第二に、当時からみてありうる省略・語構成か、である。あまりに長い言葉の省略や、逆転した語構成は妥当ではない。
第三に、他の関連語との関係を説明できるか、である。妻(ツマ)の場合では、端の意味のツマについても考える必要がある。
上記の視点から、今までの語源説を振り返ってみる。
まずは、『日本国語大辞典第二版』の語源説の欄から(孫引き)。基本的に、日国の語源説の欄は信用のおける語源説のほうが少ないと考えておいたほうがよいとされる。これらを一つずつ挙げて、コメントを付す。語源説を否定する意図ではない。
→このような省略がありえたか。端との関係は。
→着く身・付く身ということか。端との関係はどうか。
→このような省略がありえたか。
→このような省略がありえたか。
→夫の意味はどう生じるか。「トメ→ツマ」ならば、「オエ→ウア」の転。ありうるか。端との関係は。
→女性に限定せず、「配偶者」の意であったと考えればありえそう。端の家と考えれば、妻屋の呼称も意味が通る。
→このような省略がありえたか。
→服と配偶者にどのような関係があるか。
→夫の意味がどう生じるか。このような省略がありえたか。端との関係は。
→このような省略がありえたか。紐を解ける間柄ということか。
→端との関係は。
→端との関係は。
→端との関連は。
→トモは共に通ずるか。
次に、その他現在流布している説について挙げる。
①刺し身のツマのような、「添え物」語源説
→上代においてすでに、配偶者の意味で使われているので妥当ではない。日本国語大辞典の初出例の時代が下りすぎている。
②端(ツマ)由来説
妻屋説と関連。
配偶者より、端の意味が先であると考える説。
→サツマ・アヅマに端(ツマ)が残るとも考えられる。
→マは場所を示す形態素か(ヤマ・シマ・ハマ・ヌマ?がそうか)。メやミの交替や省略を考えなくてよい。
→御前・あなた・手前と同様に、前方を表す語の二人称への転用ではないか?とも思う。
【まとめ】
①連れ・付くの意味だと、端の意味と対立する。②女性に限定されない例がある以上、語構成に「女(メ)」が含まれるとは考えにくい。
③刺身のツマと関連付けるのは無理がある。
④トモ・タマも「端」と関連がない点をどう説明付けるかが不明
⑤端→妻・妻屋説は妥当に思う。
【足りないこと】
→先行研究を見る必要がある。
補 奥さんについて
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