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「あの日のフィルムと未だ来ないはずだった線路」

空が白み始める少し早い春の朝
はやる荷物を抱えながら
代り映えのしない今日にさえまだ躓くけれど
退屈だとうそぶきながら
ほどけた靴紐を固く結ぶ

“ありふれた僕たちの1ページ”

いつかあの未来にたどり着くとして
あなたは僕の傍にいてくれますか
さあ傘をさそう
流れる明日 手繰り寄せる糸
まだ針は止まらない

もういっそ
振りかざして ぶち壊して
全部忘れたいと
鏡に映る心はそっぽを向く
それでも
振り向いて 向き合って
そこにある確かな景色に
なぜだろう 涙が溢れる

こんなはずじゃなかったと叫んでみても
あの日のフィルムにはまだ届かなくて

溜息で白く霞む、もうすっかり暗い冬の夜
かさばる荷物を抱え込んで
変わらない毎日にまた躓き立ち止まってしまうよ
ダメだな 最悪だ 本音かな 本音かな
もつれた靴紐を眺めて

“ありふれた僕たちの1ページ”

いつか夢見たその答えには二度と
たどり着きはしないと知ってしまったけど
さあ傘をどうぞ
流れる昨日 絡みつく糸
ああ針よ動け

もう一度
走り出して 飛び込んで
やり直せたら
水面に映る雲で弾みをつけて
それでも
振り向いて 向き合って
そこにある確かな景色に
なぜだろう ありがとう

季節は移ろい 過ぎ去ってく日々と
心の空模様は時計のように
廻り 変わり 巡り また戻るけど
チックタック
進み続けろと
チックタック
発車のベルが鳴り響く
今 動き出すよ

もういっそ
踏み込んで 高く飛んで
全部見渡して
その目に映るすべてが愛おしくて
だから
振り返って 前を向いて
そこにある新たな道標に
一歩を踏み出して

こんなはずじゃなかったと叫んだとしても
あの日のフィルムを握りしめて
今立っているこのラインこそが
僕たちの未来そのものだから

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