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ハレ晴レユカイを歌って思い出したこと

友達とカラオケに行って、ハレ晴レユカイを歌った。『涼宮ハルヒの憂鬱』のエンディングテーマである。踊るSOS団の面々をぼーっと眺めていると、どういう訳か唐突に、すっかり忘れていた思い出のいくつかが忘却の彼方からboooon!とワープしてきた。折角なので書き留めておきたい。

僕が『涼宮ハルヒ』シリーズと出会ったのは2009年、小学5年生の時だ。角川つばさ文庫版の『涼宮ハルヒの憂鬱』をたまたま手に取ったことがきっかけだった。元々読書は好きな方で、ジャンルを選ばず色々読んでいたが、ライトノベルに触れたのはそれが初めてだった。そもそもライトノベルというジャンルも知らなかった。ハルヒが全ての原点と言っていい。

衝撃を受けた。こんな本があるのか。ストーリーも勿論抜群に面白いが、特に魅力的に感じたのは、主人公・キョンの軽妙な語り口だ。一人称で語られる作品はそれまでも読んだことがあったが、キョンの少し斜に構えた態度、ユーモアを交えた独白は、少し早めに厨二病を発症しつつあった小5の僕の心をガッチリ捕らえて離さなかった。それはもうめちゃくちゃに影響された。遊びで書いていた小説も、宿題の日記も、実生活も。当時の人格はほぼキョンと新八(=銀魂 メガネだったので)への憧れで出来ていた。ド真ん中の黒歴史。

未だに自己紹介のタイミングを迎える度に「ただの人間には…」ってかましてやろうかと思う。絶対やらないけど。ふとよぎる。

学園モノにハマった小中学生にありがちな、高校生活への夢想もした。今思うと、キョンに憧れていながらも思考はハルヒ寄りだった。ハルヒのストーリーは日常と非日常の割合が絶妙のバランス感覚で混ざっていて、ないとは言いきれないのでは?と思わせてくれる。自分の暮らす日常のすぐ真裏には、こんな非日常が潜んでいるのでは?今にも反転するのでは?エキセントリックな女子高生、巨乳の未来人にメガネのヒューマノイド・インターフェースにイケメンの超能力者が居るか居ないか、小学生だとまだ断定出来ないのだ。イタいとか言ってはいけない。とにかく高校生になったらこういう生活を送るんだ!といち語少年は思った。いじらしいことである。

周囲の人間に誰彼構わず薦めるという、オタク始めたてにありがちな失敗もやらかした。ありがちですよね?皆さんはなんの作品でやりましたか?そのせいで「あいつはどうやら…」と認識され、学校でほんの少し浮いた。「おまえまたうつのみやハルヒ読んでんのかよ〜!」とからかわれたりした。そんな栃木のご当地アイドルみたいな名前のヒロインは出ない。

つばさ文庫では『憂鬱』しか出ていないが、どうやら スニーカー文庫で続きが出ているらしいと気がついた日の情景はまだ覚えている。いや、忘れていたけど、思い出せる。冬休みか春休みの平日の午後で、晴れていたけど少し寒くて、隣町のデッカイ書店までワクワクしながら自転車を漕いでいった。あの時を超えるワクワクってまだ味わっていない気がする。

『驚愕』が発売されると知った時の興奮も思い出した。親のパソコンを借りてネットサーフィンをしている時に知り、初回限定版を通販で予約してもらい、発売日を待ちわびた。あの時ほど何かを心待ちにしたことはない気がする。

何巻が好きか、どのキャラクターが好きかを決めるのは難しい。今でも決められない。でも人生で一番最初に好きになった2次元の女の子は間違いなく長門。

振り返ってみると、僕は人生におけるいくつかの「初めて」をハルヒに捧げている。
・初めて自分で買ったCDはハレ晴レユカイ。
・初めて1人で観にいった映画は「消失」。

初めて「深夜アニメ」を認識したのもハルヒだった。それまではアニメと言えば平日夕方か休日のものだったから驚いた。夜中にもやってるんだ…!
初めて声優という存在を意識したのも当然ハルヒである。最初に覚えた名前は杉田智和さんで間違いない。

Wiiのゲームソフト《涼宮ハルヒの並列》をプレイしたことある人と友達になりたい。ハマりだしてすぐ買ってもらったものの、ゲーム慣れしていない小学生にループものは突破出来ず、何年後かに丸1日以上かけてやっとこさクリアした。攻略サイトとか見ればよかった。

この文章を書くにあたって調べたら、文庫本未収録のまだ読んでいない短編がいくつかあった。全部読みたい。ハルヒちゃんもちゅるやさんも。

ハルヒたちに出会った頃小学生だった僕は、いつしか中学生になり、(憧れだった)高校生になり、ついには成人してしまった。大好きな作品のキャラクターの年齢を抜かすのは、他の何にも例えようのない不思議な感じがする。ボロボロになったスニーカー文庫の赤い背表紙を見ると、卒業アルバムを見返すよりも色々蘇る。

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