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「令和四年度国有財産増減及び現在額総計算書」について、NHKから国民を守る党浜田聡議員の依頼により調査しました。


1・国有財産増減及び現在額総計算書の作成手続きについて


 国有財産には、代表的なものとして、国会議事堂、税務署、法務局などの庁舎やその敷地があります。皇居、国営公園、国道、河川も国有財産です。また、土地や建物といった不動産以外にも航空機や船舶といった動産、株式や社債などの有価証券、特殊会社などに対する政府出資、特許権や著作権などの知的財産権といったものがあります。


 「国有財産増減及び現在額総計算書」は、国有財産法第34条に基づき、内閣が会計検査院の検査を経た後、翌年度開会の国会の常会に報告されます。
 130兆円もの日本政府の歳入歳出及び決算は実に大変である事は理解出来るのですが、企業は四半期決算を行い株主総会までこなしているのを見ますと、日本政府の旧態依然のこのやり方は本当に妥当なのかと疑問になります。

国有財産増減及び現在額総計算書等に係る国会報告の制度・手続き
国有財産法第33条
① 各省各庁の長は、その所管に属する国有財産につき、毎会計年度間における増減及び毎会計年度末現在における現在額の報告書を作成し、翌年度七月三十一日までに、財務大臣に送付しなければならない。
② 財務大臣は、前項の規定により送付を受けた国有財産増減及び現在額報告書に基づき、国有財産増減及び現在額総計算書を作成しなければならない。
 ③ 内閣は、前項の国有財産増減及び現在額総計算書を第一項の国有財産増減及び現在額報告書とともに、翌年度十月三十一日までに、会計検査院に送付し、その検査を受けなければならない。
国有財産法第34条
① 内閣は、会計検査院の検査を経た国有財産増減及び現在額総計算書を、翌年度開会の国会の常会に報告することを常例とする。
② 前項の国有財産増減及び現在額総計算書には、会計検査院の検査報告のほか、国有財産の増減及び現在額に関する説明書を添付する。


 現在国会では、令和4年4月1日~令和5年3月31日までの国有財産について会計検査院の報告を元に審議しており、財務大臣と会計検査院から令和4年度末の国有財産現在額は131.8兆円で、このうち独立行政法人等への出資財産は98.2兆円、令和四年度中における国有財産の純増加額は5兆2862億円と報告がありました。
 なんと1年半前の国有財産状況の決算の審議をしているんです。皆さんは大体2年前のご自分の貯金高や株式所得や融資先、はたまた何を買ったかなど覚えていますか?

財務省 令和4年度国有財産の現在額



  
デジタル社会なのですから決算を早く出来ない訳じゃないと思います。少なくとも地方自治体では、3月末で歳出を締め、行政職員による様々な事業の確認をし、市民代表や地方議員にも見て貰い、12月には来年の大体の予算を決めます。来年の2月には議会が開かれ、議員からこれもして欲しいあれもして欲しいと言う様な質問が出ます。でもこの時点で言ってももうほとんど予算は決まってるので議員のくれくれには応じられません。
 ましてや現在は、来年の予算を決める為に行政は3月末締めてすぐに前年度の内容を精査します。一方議会でも議員が行政が行う事務事業の評価を行い、9月頃からの予算編成に反映させる為にスピード感を持って行う自治体が出てきました。さらに、6月頃から9月ぐらいまでに議会が予算決算委員会などを行い、前年度の決算を審議しながら次年度の予算に確実に反映させるなどの動きも見られます。
 近年世界は分断が進み、エネルギー革命や技術革新で情勢が急激に変わりつつあります。それらに対応する為に方向性が定まらず、かなりの財源が流出しています。
 出来る所は確実に歳出削減し、無駄無く事業を展開するには前年度分について決算修了後直ぐに財務省で総計算書を作成し、最低限令和6年度の予算には反映することが出来るよう様々な手続きの改善を願いたいものです。

つくば市の予算決算委員会の事例
つくば市議会では、令和3年度から、予算と決算を連動して審査することにより議会のチェック機能を強化することを目的として、9月定例会の決算審査において予算決算委員会の各分科会(総務文教、福祉保健、市民経済、都市建設)で市長等が執行した事業を選定し、議会から市長等へ「提言」を行っています。

市長は、議会の提言に対する対応を次年度予算に反映するよう努め、その結果を「議会の提言に対する対応」として議会へ送付します。

その後、翌年の3月定例会において、次年度予算案の審査を行う際に、議会の提言の内容が予算案に反映されているかのチェックを行います。


2・令和4年度国有財産増減及び現在額総計算書


 財務省が会計検査院に10月31日までに提出した内容になります。会計検査院に送付した令和4年度末の国有財産現在額は131.8兆円です。国有財産は諸官庁が管理する行政財産と、財務省が管理する普通財産があります。
〇行政財産26.5兆円:各省庁管理
 公用財産(庁舎など)
 国営公園などの公共用財産(国営公園など)
 皇室用財産(皇居 御所など)
 森林経営用財産(国有林野事業)
〇普通財産105.2兆円:財務省管理
 行政財産以外の財産。

下のグラフは財務省が政府や会計検査院に提出する内容を解かりやすくした概要です。

国有財産

見ずらいので会計検査院の令和4年度国有財産を置きます。



 財務省の国有財産に関する国会報告から、新型コロナウィルス騒動前の平成30年度末~令和4年度末を表にしてみました。明かに、財務省所管の普通財産のうち政府出資等(株式・権利等)が大きくに増えていました。

 P10の〔第8表〕令和4年度国有財産区分別増減額の「政府出資等」は差し引き増減4,6兆円、P11の〔第9表〕(価格改定による増減額を除いたもの)は約3000億円です。
 増減には価格改定の他にも政府出資や整理かえや配置換えしたりと様々ありますが価格改定の金額がずば抜けて大きく、株式や出資による権利が市場価格で4.3兆円も増えたという事かも知れません。例えば、P15に、財務省所管一般会計の普通財産2兆8821億円が価格改定で政府出資等5兆2314億円です。

P15

 

 下の表は、第2章 国有財産の現在額にある区分別のP5の政府出資等を、令和元年度~令和4年度までの独立行政法人等に注目して書いてみました。
 普通財産とは、財務省管理する行政財産以外の財産です。この表は普通財産の政府出資等の代表的なものです。他に株式や受益権などがあります。この独立行政法人の政府出資等は、単純計算ですがコロナ禍と後の3年間で15兆円も増えているのはあまりにも異常のように思いました。
 
 令和3年度末の財政投融資から日本電信電話株式会社は、
令和4年9月NTTによる自己株式取得されてますので、この準備という事でしょう。その後、NTTは令和5年7月1日1:5で株式分割し、令和6年4月17日NTT法改正が研究成果の開示義務を撤廃する改正として行われています。

 株式会社日本政策金融公庫は、日本政府が100%出資する株式会社で非上場です。株価が上がったとも思えませんから政府出資によるものだと推測しています。


ソーシャルビジネス関連融資 令和3年度実績12,465件1,137億円

 令和2年3月には新型コロナウィルスの対応による影響が大きく出始め、政府は日本政策金融公庫等で、特別貸付制度を創設し、売上が急減した個人事業主を含む中小・小規模事業者に対して、実質無利子・無担保の融資を行いました。
第一弾の緊急対応策で講じた5,000億円の資金繰り対策も含め、遡って適用。このほか、中堅企業、大企業に対しても、危機対応業務を発動するなど、強力な資金繰り対策を行いました。

 令和2年度の4法人27制度15兆5401億円(令和2年1月~3年3月)についての会計検査院の報告の内容です。


 結局ゼロゼロ融資の回収不能が騒がれ、今後も増え続けると予想されています。NHKの記事には「7291件、697億円が回収不能と判断され、「償却」されたことが分かりました。」あり、当時メディアでも大きく取り上げられました。



3・国会での議論


 令和5年12月に国会の決算委員会において、財務大臣と会計検査院より「令和四年度国有財産増減及び現在額総計算書」の報告がありました。
 検査の結果国有財産の管理及び処分は四件で、その内容も会計検査院のサイトに掲載されておりました。

第212回国会 参議院決算委員会 第1号令和5年12月11日
 
 国有財産増減及び現在額総計算書についての鈴木俊一財務大臣の報告です。令和四年度中における国有財産の純増加額は5兆2862億円余、国有財産法に基づく年度末現在額は131兆8347億円余と報告しています。
 岡村肇会計検査院長の報告です。
 令和5年11月7日、令和四年度国有財産検査報告した内容については、令和四年度末の国有財産現在額131兆8347億余円。検査の結果、国有財産の管理及び処分は四件で、その内訳は以下に成ります。
(会計検査院の該当事項のURLが入っています。)
①不当事項
政府出資等に係る不要財産の国庫納付に関するもの
②意見を表示し又は処置を要求した事項
多重無線回線の機能維持に必要な通信鉄塔及び局舎の耐震性等の確保に関するもの
③本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項学校施設の用に供する国有地の減額貸付けに関するもの
④国会からの検査要請事項に関する報告
防災・減災、国土強靱化のための三か年緊急対策の実施状況等に関するもの
国会からの検査要請事項に関する報告(検査要請)
防災・減災、国土強靱化のための3か年緊急対策に関する会計検査の結果について
別図表14 事業の成果物の活用状況の詳細


 令和5年12月11日第212回参議院決算委員会では、令和四年度国有財産増減及び現在額総計算書( 内閣提出)の審議がありました。
 その中で、会計検査院から、検査業務のうち検査報告に掲記する必要があると認めた特定の検査対象に関する事項は四件で、「株式会社日本政策金融公庫等が中小企業者等に対して実施した新型コロナウイルス感染症特別貸付等に係る貸付債権等の状況に関するもの」もありました。

 「令和四年度国有財産増減及び現在額総計算書」について会計検査院によって指摘され、令和4年度決算検査報告されたその内容について、現在国会で決算審議がされています。しかしながら、令和4年度の国有財産状況についての報告書が、時代の移り変わりが早い現代で、2年半も経った令和7年度に審議の機会を設けても質問者の熱意も感じられませんし十分に生かす事が出来るのかはなはだ疑問です。

 実際2024年5月13日 「決算行政監視委員会第一分科会」を見ると、所管大臣による説明には「会計検査院の指摘がありました所は、・・・・所要の措置を講じた所です。」としています。また議員による質問は、直接関係した物は殆ど無く、近年の政府の事業内容について苦言等を呈する議員が多いです。
 例えば、金村龍那議員(日本維新の会・教育無償化を実現する会)などは、2023年4月1日に発足した子ども家庭庁の質問をしており、案件とは直接関係は無い内容でした。
 決算内容を公開し議員が質問する事に大きな意味と、改善や行政監視の意味がある事は承知していますが、せめて次年度に質疑しその年から反映できる様に、決算を早めたり四半期決算で進捗状況を確認しながら議員が質問出来る様に、デジタルやAIを活用できないのでしょうか?
 

 令和6年4月8日 第213回国会 参議院決算委員会に至っては、本来こちらの委員会で国有財産についての議論される場所かと思うのですが、国有財産についての議論が全く見られません。(国会議事録の検索にかかりません)。参加されてる議員さんは、2年前の国有財産について質問は無いのでしょうか?他の方は年度の決算に関係なく質問してるのですから、令和4年度に限らず国有財産への疑問や質問も無いのは問題意識そのものが無いという事でしょうか?


 立憲民主党のサイトに決算審議が遅い事から、PDCAを回して早く審議をする法案を提出したようです。ですから全く関心が無いわけでは無いようですが、その後法案について国会で質問したような気配が見当たらないし、今回の決算委員会で提案した様子もありません。(議事録が全部出ていないので確認できませんがm(__)m。)

 2022年10月13日渡瀬裕哉氏が、「政府も四半期決算したら良いですよ。 都道府県別のGDPデータも数年遅れて公表されてます。」と投稿されていました。続いて、「デフォルト」とも。債務不履行が原因?予備費の影響で地方行政も追いついていかないという事でしょうか?
総務省は全国自治体システム共通化を行っており、少しは改善してきてるようですが。


4・政府出資等

 
 令和4年度2022年度の国有財産131.8兆円あるうち独立行政法人等への出資額財産が全体の75%にもあたる98.2兆円でした。政府出資先は独立行政法人83法人、特殊会社30法人、国際機関11法人、国立大学法人86法人、金融機関事業団等11法人の全部で221法人になります。
 政府が株式を保有する目的は、財源確保のほか、取引先との関係を維持・強化することや、安定株主を形成することなどですが、一方政策保有株式は企業統治(コーポレートガバナンス)の形骸化を招くリスクや、資本効率の悪化につながるリスクが指摘されてもいます。
 政府保有株式の大半は、企業や個人が購入する通常の株式投資とは異なり、もともと政府が所有していた特殊法人を株式会社に組織替えしたものです。その政府保有株式の代表格はNTT(日本電信電話)の株式で、NTT法では政府が株式の3分の1以上を保有すると定められています。

政府出資

 

政府保有株式


政府保有株式

 
 2011年11月に東日本大震災がありました。その復興に必要な財源を確保するための特別措置法として「東日本大震災からの復興のための施策を実施するために必要な財源の確保に関する特別措置法」(復興財源確保法)が作られました。復興の財源には復興債が発行され、その償還については毎年度見込まれる政府保有株式の処分収入や復興特別税の収入を順次償還に充て、令和19年度までに償還するようです。そして復興財源確保法には、日本たばこ産業 東京地下鉄(東京メトロ) 日本郵政の株式の売却などについても定められています。

 少し気になったのが、日本政府が95%を出資する海外交通・都市開発事業支援機構(JOIN)です。2015年からアジアを中心として海外のインフラ事業を日本の大手ゼネコンと展開しています。
 

海外交通都市会派圧事業支援機構


平成二十六年法律第二十四号
株式会社海外交通・都市開発事業支援機構法

平成26年3月26日、衆議院 国土交通委員会、太田国務大臣の述べた法案提出理由です。
世界のインフラ市場は、新興国を中心に、急速な都市化と経済成長により、今後の継続的な拡大が見込まれており、海外の成長を我が国に最大限取り込むため、我が国事業者の参入を促進することが必要です。  海外におけるインフラ事業、特に交通や都市開発の事業については、投資の回収に相当期間を要するとともに、事業環境の変化により収益の発生に不確実な要素を有しております。また、政府レベルでの調整も必要であることから、民間だけでは参入が進みづらい状況にあり、官民一体となった取り組みが必要となっております。

 しかし、既に10年以上経過し、政府出資が法律では二分の一以ですから95%も政府資本は大きすぎると思われます。国民の税金で行われる法人であったり海外投資ですので、結果を出しているのであれば計画的に民営化を図っていくのが良いと考えます。

5・浜田議員に質問して欲しい事

①決算の審議が1年半以上も経ってでは遅すぎます。なぜなら、議員が殆ど該当する事に質問されて無いので無駄です。
手続きを短縮し次年度には行い、地方自治体の様に次の予算編成に間に合う様にすべきと考えます。政府の決算はデジタル化されているかと思います。ネックとなっているのはどういった事ですか?
税金や社会保険料などの政府歳入を一カ所で行えるよう歳入庁を創設して税金や補助金・控除のダブリを整理し、シンプルにする事で時間短縮が可能と考えますが如何ですか?

②国会の予算決算と審議は、浜田議員の質問後どのように改善したでしょうか?また、予算決算を同時に行うにはどのように改善すればできるでしょうか?
地方自治体の決算と予算の審議の改善はされているでしょうか?政府への報告は遅滞なく行われていますか?
遅れる場合はどういった理由からでしょうか?

③令和2年度から4年度の国有財産で、財務省管轄の株式や権利の政府出資のみが大幅に増えています。原因はどの様に考えますか?
日本政策金融公庫のゼロゼロ融資で何兆円も使い、申請時の負担も大きく、焦げ付きも出てしまいました。
 一方で、国民はコロナや物価高騰で生活苦の状態でした。そこに、再エネ賦課金値上げで2020年5月1kWhあたり2.98円2021年1kWhあたり3.36円とさらに負担増となってしまいました。
 補助金等は本人の申請する負担も大きく、行政職員の残業代を払い、取って配る手数料も発生し、時間もかかるので非効率です。直接国民に届く賦課金の値下げや減税を、今後は考えて頂けないでしょうか?

こちらは浜田議員の質問の動画です。是非ご覧ください。


 下のブログも会計検査院に提出された報告書に関する投稿になります。併せてお読みいただくとより分かりやすいと思います。


資料:

〇政府から会計検査院へ報告するもの
1、令和四年度一般会計歳入歳出決算、令和四年度特別会計歳入歳出決算、令和四年度国税収納金整理資金受払計算書、令和四年度政府関係機関決算書
2、令和四年度国有財産増減及び現在額総計算書
3、令和四年度国有財産無償貸付状況総計算書

財務省サイトにある資料
令和四年度国有財産増減及び現在額総計算書
令和四年度国有財産増減及び現在額総計算書・令和年度国有財産無償貸付状況総計算書
令和四年度国有財産の増減及び現在額に関する説明書国有財産の無償貸付状況に関する説明書


以上になります。


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