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公益信託に関する法律案


 街中を歩くと信託銀行の名前が目につきます。
でも何をする銀行なのか分かりませんでしたので入った事も利用した事もありません。
 信託銀行は、キャッシュカードで現金の入出金や送金も出来る銀行業務の他に、財産や有価証券の預け入れして管理運営して貰う「信託業務」と、不動産仲介や遺言書の保管や遺言執行業務などの相続関連も行う「併営業務」が出来る金融機関だそうです。
 地元の貯金してる銀行でも投資の資料はありますが、財産管理までしている銀行の部署を見た事はありませんでした。

出典:一般社団法人 信託協会「信託銀行とは?」
ワンキャリ編集部 銀行と信託銀行の違い


 日本を代表する信託銀行には、三井住友信託銀行(SMTB)、三菱UFJ信託銀行(MUTB)、SMBC信託銀行の3社に成りますが、名前くらいは見聞きした人もいるでしょう。特に三井住友信託銀行は、信託銀行どうしが合併して誕生し、信託業務が業務の中心です。三井住友トラスト・ホールディングスに属し、グループの主軸の銀行です。



1・法律案について

 令和 6年 3月 5日、213回国会に内閣府本府・法務省所管で「公益信託に関する法律案」が内閣から提出され、参議員が先に審議しています。

提出理由
公益を目的とする信託による事務の実施を促進して、活力ある社会を実現するため、公益信託の引受けの許可及びこれに対する監督を主務官庁の裁量により行うこととしていた公益信託に関する制度を改め、公益信託の認可及びこれに対する監督を公益認定等委員会等の関与の下で内閣総理大臣又は都道府県知事が行う制度を創設する等の措置を講ずる必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。

公益信託に関する法律案

 会議の経過として、参議院で2024年4月2日内閣委員会(第五回)があり、公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律の一部を改正する法律案(閣法第四四号)と、公益信託に関する法律案(閣法第四五号)の両案について加藤内閣府特命担当大臣から趣旨説明がありました。4月4日には、内閣委員会にて議論がされる予定です。

 公益信託とは、個人や法人が、金銭等の財産を、学術、技芸、慈善、祭祀等の公益目的のために信託銀行等に預け、信託銀行等は、定められた目的に従って、その財産を管理・運用し、公益的な活動を行う制度です。
   主務官庁による許可・監督制を廃止し、内閣総理大臣又は都道府県知事が公益認定等委員会又は都道府県に置かれる合議制の機関の意見に基づき、公益信託を認可するものとする形になります。
 
 この法案では、預金保険法 、 農水産業協同組合貯金保険法 、不動産登記法 、公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律、一般社団法人及び一般財団法人に関する法律及び公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律 、信託法 、内閣府設置法 、総務省設置法の8つの法律が関係し、関係部分が一部改正されます。

 

概要




2・概要のポイント


 ①有識者会議最終報告に、現在の公益信託制度は大正11年法律第六十二号公益信託ニ関スル法律のままだとかいてありました。その現行法を見直すために法務省において公益信託制度を公益認定制度に一元化し、公益法人認定法と共通の枠組みで公益信託の認可・監督を行う仕組みとすることで、民間による公益的活動に関する選択肢を多様化し、活性化するための環境を整備する事に成りました。
 また法務省における「公益信託法の見直しに関する中間試案(案)の説明資料」には、現行公益信託法にはその法律の目的を表す規定はなかったので、改正法の「公益信託に関する法律」の(目的) 第一条は、「この法律は、内外の社会経済情勢の変化に伴い、公益を目的とする信託による事務の実施が公益の増進のために重要となっていることに鑑み、当該事務が適正に行われるよう公益信託を認可する制度を設けるとともに、当該公益信託の受託者による信託事務の適正な処理を確保するため必要な措置等を定め、もって公益の増進及び活力ある社会の実現に資することを目的とする。」となりました。その他細かい事が書いてあるので、関心のある方は是非お読みください(#^^#)
 
 2023年12月01日の時事ドットコムに、公益信託の記事がありました。現在400件程度が運営中で、合計運用額は約600億円。公益性が高いと認定されれば寄付金控除などの優遇措置があり、一般的な寄付と違い財産の用途を指定できるため、死後も委託した人の想いを適切に運用してくれます。     
 内閣府によると、金融資産の上位20%に入る世帯主の平均年齢は65歳。相続相手がいないなどの理由で、財産を社会貢献に充てたいと考える高齢者が増えているため、制度を整えて運用件数を増やしたいと考えたようです。

 ②概要の趣旨に「国民からの信頼を確保しつつ使いやすい制度へ」とあるのは、信託協会の令和5年3月末現在では、受託件数は385件、信託財産残高は554億円となっていますが、令和4年度中の新規受託状況は、受託件数2件、受託額1.5億円。 信託目的別に新規受託2件はどちらも奨学金支給でした。(参考資料:令和5年6月20日
  一般社団法人 信託協会 公 益 信 託 の 受 託 状 況
 殆どの国民はこの制度を知らないでしょう。
 2020年前後のコロナ禍で学費が払えず大学を退学した学生や自殺した若者も沢山いて、信託を受けた信託銀行は一体何をしていたのだろうと思います。

公 益 信 託 の 受 託 状 況 (令和5年3月末現在)


公 益 信 託 の 受 託 状 況 (令和5年3月末現在)


 ③ 公益法人とは、社会一般の利益になる活動を行う法人です。公益法人認定法により公益性の認定を受けた一般社団法人や一般財団法人を指します。今回同時に「公益社団法⼈及び公益財団法⼈の認定等に関する法律の⼀部を改正する法律案(公益法人認定法)」として、改正予定で法案が提出され、同時に審議中です。
 公益信託と公益法人の違いは、公益法人は、一般に、事務所・職員等を置く必要があることから、一定の基本財産や事務所費用、人件費・物件費が必要となりますが、公益信託は、信託銀行等がその運営を行うので、専用の事務所や職員を置く必要がないことから、公益法人ほどの財産規模を必要とせずに、効率的な運営ができます。さらに、公益法人認定法と共通の枠組みによる公益信託の認可・監督、ガバナンスの法律、そして財務規律もそうです。

 また、気になるのは法案提出理由に書かれている「公益信託の認可及びこれに対する監督を公益認定等委員会等の関与の下で内閣総理大臣又は都道府県知事が行う制度を創設する等の措置を講ずる必要がある。」の公益認定等委員会等とは誰の事でしょうか?現在の公益信託の公益認定等委員会は、内閣府の行政庁から独立した第三者機関です。民間有識者によって構成され、公益性の認定や公益法人の監督に係る審議を行っています。国会同意人事に基づいて任命された7人の委員であれば公平と言えるかと思います。

公益認定等委員会
公益法人

 ④効果の欄に、『新しい資本主義が目指す「民間も公的役割を担う社会」の実現に貢献』の文章は、2022年6月7日岸田総理の目指す「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画」を閣議決定し、その具体策としてまとめたものの1つです。その中に「公正な競争を確保する競争政策を推進」とあるのですが、税金を使って民間に公益事業を競争させますよとしか見えません。この意味は、官が税金を使って民に競争させるってことですか?

経済財政部局の動き:政策の動き新しい資本主義の実現に向けて元内閣官房新しい資本主義実現本部事務局主査山内 一
新しい資本主義の グランドデザイン及び実行計画 2023改訂版P4

 

⑤この流れを見ると、「民間の力が最大限発揮できるよう、新しい時代にふさわしい公正な競争」は、コロナ後の分配と好循環の新しい資本主義において、民間ボランティアを昇格させ、内閣官房で公的資金を使い、困難な人達を高齢者の富裕層によってもたらされる基金や遺贈で果実を受ける政策のように思います。
 数十年後期高齢者が減少したあと、公益法人は一体どのような存在になっているのでしょうか?

厚労省人口の推


3・疑問

①一般社団法人信託協会がどのような位置づけの法人か判らないのですが、毎年報告されている「公益信託の委託状況」の書き方が少しづつ違っていて、わかりづらいです。
表やグラフで明示した報告をして頂きたいです。特に、今年度の支給件数や金額、傾向などのコメントと、推移も入れて頂ければ、必要とされる信託の傾向が解り易いと思います。

②公益法人と公益信託の内容の違いが、事務所のあるなしのようにも思え、ほとんど同じ条件になっているようにおもいます。公益法人は無くして、NPOやボランティア団体が公益信託のあっせんや紹介をする事で、本当の共助なのではないでしょうか?
わざわざ税金を使って公益法人や公益財団に信託をやらせる必要性が薄いのではないかと思います。

③公益信託はもっと信託のアピールをすべきです。
信託銀行も信託も内容を知りませんでした。一般人とNPO法人やボランティア団体に向けてSNSで毎日情報発信し、インターネットで検索や申込等が完結できる様にDXする必要があるのでは?

④高齢者の一人暮らしも増え確定申告漏れや遺産等の問題もあり深刻な状況ではあります。高齢者の遺産活用には、日本の未来を考え積極的に子育て支援に対してアピールをして欲しいと思います。そして、若者達の可処分所得が増えるよう減税して頂きたいです。

⑤公益信託は富裕層や財産を増やしたいと言う方が主に利用されていますが、こういう信託ないかなぁ~というリクエストは受け付けて貰えないだろうか?
減税活動して若者達を救いたいと考える減税派の活動資金を応援してくれるお金持ちはいないだろうか?
そう言った声に耳を傾けてくれる富裕層とのマッチングの機会が有ったらいいなぁ~と考えます。

以上です。
NHKから国民を守る党参議院浜田聡議員の依頼で調査いたしました。
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参考資料





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