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自身も9回転職のキャリアコンサルタントが指南|専業主婦の再就職成功術

「子育てが一段落したらまた働きたい」と考えている専業主婦は、少なくはないでしょう。でも、いざ、仕事を探し始めると「自分にはどんな仕事が向いているのだろう」「経験がなくても働けるだろうか」とあれこれ考えてしまい、なかなか一歩が踏み出せない。そんなみなさんのお悩みに先輩ママがお答えします。キャリアコンサルタントとして5,000人以上の求職者と向き合い、自身も9回の転職を経験した、さつきうみさんにお話を伺いました。

さつき うみさんプロフィール
1972年福島県生まれ、茨城県育ち。2児の母。親の強い希望で公務員(小学校教員)を目指し、お茶の水女子大学に進学するも、適性に限界を感じ旅行会社に就職。その後出版社や印刷会社で働く。転職が多いことをきっかけに、人材業界に興味を持ち、10年以上就職支援業務に従事する。のべ5,000人以上の働き方や人間関係の悩みと向き合ってきた経験から、2020年にキャリアコンサルタント(ライフ・コーチ)として独立。現在はWebライターとしても活動中。

自分の感情にフタをしないようにする

産休や育児などで仕事のブランクが長いと、再就職は不安になりますよね。「仕事と家庭が両立できるだろうか」「職場でうまくやっていけるだろうか」など、考えたら切りがありません。

子どものいる専業主婦は、子どもを最優先に考えています。「病気やケガに素早く対応したい」「行事にはできるだけ参加したい」「子どもが帰ってきたときには家にいてあげたい」。そういった思いに応えられる仕事を探している人が多いです。でも、条件だけで決めてしまうと長続きしないケースもあります。2年間でパートを3社変わることになって「自分の何がいけないんだろう?」と悩んでいる人もいました。

どんな仕事を選べばよいのかわからない人は、いつのまにか“自分の感情にフタをする癖”がついてしまっているのかもしれません。子育ては我慢の連続です。私の場合は、子どもから目が離せないのでトイレを我慢するようになったり、自分が風邪を引いても悪化するまでほったらかしにしていたり。そんな日々を過ごしているうちに「自分が我慢していれば全てうまくいく」と思い込んでしまい、「これがしたい」という発想が出てこなくなってしまうのです。

まずは、「自分の感情にフタをしていないか」と意識を向けることが大事です。そして、「何が食べたい」「どんな服を着たい」といった身近なことから自分の声を聞く練習をしていきます。自分の声を聞くということは、「それをしてもいいんだよ」と自分に許可を出すということでもあります。こうして、少しずつ感情を表に出せるようになってくると仕事選びにおいても意思が出せるようになってきます。

自分を知ることで、自信を取り戻す

何が自分に向いているのかわからない人は、自信を失っている状態です。小学生の頃、将来の夢を文集に書いた記憶はないでしょうか? 子どもの頃は、誰もが将来の夢を無邪気に語ることができていました。それが、大人になるにつれてマイナスの体験をしたり、聞かなくていい人の言葉を聞いたりして、だんだん素の自分が出せなくなってしまうのです。それを取り払う必要があります。

方法としては「自己理解」がおすすめです。自己理解とは、自分の考え方の傾向や価値観を理解することです。具体的には大事にしたいことの優先順位、好き嫌い、譲れないこと、やりたくないことなどを書き出し「見える化」していきます。

手軽にできる方法として、「親しい人に自分のよいところを3つ聞く」というワークがあります。客観的評価を聞くと「そんなふうに見てくれているんだ」という発見があり、周囲との関係もよくなるので一石二鳥です。

自己理解に取り組んだ結果、強く出た傾向に対して成功体験を紐解いていくと、自信を取り戻すきっかけになります。自己理解については、本もたくさん出ていますし、ハローワークでも受けられるので、ぜひ取り組んでみてください。

ポータブルスキルに目を向ける

経験やスキルがなくて自信が持てない人は、「ポータブルスキル」に目を向けてみてください。ポータブルスキルとは、業種や職種が変わっても応用できるスキルのこと。たとえば、前職の仕事をひとつずつ棚卸ししていき、その業務に必要な能力を分析していくことで、アピールできる強みを見つけ出すことができます。仕事の経験がない人は、掃除や料理など自分の得意な家事で考えても大丈夫です。

ポータブルスキルの洗い出しには、「ジョブ・カード」の作成が有効です。ジョブ・カードとは、厚生労働省が様式を定めたキャリアプランニングや職業能力証明の機能を担うツールです。ジョブ・カードの作成を通して、自分の強み・弱みに気づくことができ、目指すキャリアに向かってやるべきことが描けるようになります。ハローワークでは相談員と話しながら作ることもできます。

自分らしい働き方を考える

私は現在、キャリアコンサルタント、ストレングス・コーチ、ライターとして活動していますが、これまで決して順風満帆ではありませんでした。

大学を卒業後、旅行会社に就職しましたが多忙で体調を崩してしまったことや、キャリアアップしたいという思いもあって3年で退職。その後、印刷会社や人材紹介会社などに勤めましたが、ノルマがきつかったり理不尽な思いをしたりして、職を転々としていました。

転職活動に疲れきっていたある日、ハローワークに行くと相談員さんが私の話を親身に聞いてくれて、とても勇気づけられたのです。「こんなふうに話を聞いてくれる人がいたら、私もここまでひどい経歴にはならなかったかもしれない。私も人を励ます仕事がしたい」。そんな思いからハローワークで働き始めました。

契約社員として3年間の任期を経て、出産のため後ろ髪を引かれながら退職。その後、2人の子どもを授かりました。高齢出産であったことや上の子の発達に心配があったこともあり、再び働きに出ることはあきらめていました。

でも、どこかで社会と距離ができてしまうことに焦りや不安を感じていて。そのイライラが子どもにも伝わって、落ち着かない態度につながっているのではないだろうか……。いつからか、児童虐待のニュースを耳にすると「自分もいつかこんなふうになってしまうかもしれない」という不安に駆られるようになりました。

そんなとき、SNSで見つけた「自分らしく生きること」を学ぶコミュニティに参加しました。そこには、私と同じような悩みを抱える人がたくさんいました。ここでオンラインでも人とつながれることを体験し、「働き方を変えれば、また働けるかもしれない」と一気に視界が広かったのです。前に出ることが苦手な私が、まさか独立するとは思ってもみませんでした。

実際に家で仕事をするようになって気づいたことがあります。それは、職場でどれだけ人に気をつかい、疲れていたかということ。細かいことが気になる私には、一人で黙々と仕事をする今のスタイルがあっているようです。

信頼できる人に相談して、客観的な意見を聞く

9回の転職を経験した私が、これから再就職を考えている主婦のみなさんに伝えたいのは、一人で悩まないこと。信頼できる人やハローワークの相談員に相談してください。自分だけで考えていると、どうしても視野が狭くなってしまいます。客観的な意見を聞くことで、新たな強みに気づくことができるかもしれません。

以前、相談を受けた中に40代で接客業を希望している人がいました。しかし、子どもがいるため土日が働けないとのこと。そうなると、接客業は条件的に難しくなります。代わりに事務職を提案しました。

本人は40代で未経験ということもあり不安に思っていたようですが、接遇対応など安心してお任せできそうでしたので、数社ご紹介しました。すると、「落ち着いた対応ができる人を探していた」という会社から内定をいただくことができたのです。このケースでは、ていねいな対応ができることが強みとなりました。

たとえ経験はなくとも、あなたのどのスキルが評価されるかは、実際に面接を受けてみないとわかりません。求人票に書いてあることが全てではないのです。だから、気になる会社を見つけたら経験やスキルに関わらず、どんどんチャレンジしてください。

(取材・文/コクブサトシ 撮影/森木香蛍)

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