見出し画像

30代、コツコツと“貯金”はできなかったけど。

10年ほど前、つまり30歳の頃、エッセイストの横森理香さんの取材をさせていただいたことがある。健康や時間の使い方に関する取材で、40代半ばだった横森さんが健康や美容のためにしている早寝(たしか21時就寝)とその効果など、興味深い内容だったのだけど、衝撃的だったのは次の一言だった。

「30代の積み重ねが、ぜんぶ40代に出るんです」。健康も美容も仕事も、人としての深みも、ぜんぶ。そんな意味合いだった。「コツコツと“貯金”すること」を勧めてくださったのである。

そんなすばらしい30代の予習をさせてもらい、それが頭の片隅にあったものの、我が30代はどうだったのだろう。楽しかったこともたくさんあったが、たいてい20代は100メートル走のようで、30代は登山のようだったから、あまり“貯金”の余裕はなかった。うん、ほとんどできなかったと言えるだろう(苦笑)。それを終えた今「これからくるのね……」と少しヒヤヒヤして、“一括貯金”したくもなっているけれど、きっと無理。夏休み明けに残った宿題をやる生徒よ(私)、新学期は地道に取り組もう。

一方で、この40代の景色がえらく穏やかで、気に入っている。人生の休暇中のような余白と、自分と周囲を見つめられる余裕。歳を重ねるって、楽しい。20、30代にはあまり思わなかったことを、強く実感している。いつかくる下山の前にこの眺望を焼き付け、書きとめておこうと思う。