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文フリ振り返り(売りたい人のための覚書)

まさかの完売でした!

2019年5月6日の文学フリマで出した『昭和十二年十一月、東京』、おかげさまで、全数完売いたしました!

いやー、びっくりした。
作りすぎたかな、一冊も売れなかったらどうしようってビクビクしていたのがウソのように、開始からたくさんの方に来ていただき、余分に印刷していたぶんもあわせて42冊が2時間半ほどで売り切れてしまいました。(勢い余って献本予定のぶんも売ってしまった…どうしよう…)

こうなると「100部くらい売れたじゃん……」みたいな気もしてきちゃうんだけど、これはこれで良かったのだと思うことにします。

再販はいまのところする予定はありません。Amazonからお求めいただければ幸いです……

振り返り①売れた理由

「売れた!やったぜ大成功!」で終わらせるのは簡単なのですが、せっかくなので振り返りと反省をまとめていこうと思います。今後、出店される方の参考になれば嬉しいです。

カテゴリが良かった

文学フリマ東京は、およそ1000ブースの大所帯。カテゴリの配分は(体感的に)
小説…5
批評…3
詩歌…1
ノンフィクション…1
という感じ。

一般来場は5000人超と過去最大でしたが、一人ひとりが1000ブースすべてを回るのは現実的ではありません。そのなかで「ノンフィクション」は非常にとっつきやすいカテゴリだったのだと思います。
確かに「素人が書いた何か面白いもの」を探しに来たら、雑学や体験記などのノンフィクションは手に取りやすいはず。しかも「ノンフィクション・郷土」はおそらく私だけだったので、郷土史に興味のある方・年配の方が多く来てくださいました。

事前広報・WEBカタログ活用も有効

SNSでは小説カテゴリの盛り上がりが華やかで、創作界隈にいない私の広報活動はかなり徒手空拳な感じでした。「誰も見てないんじゃないか。誰も興味ないんじゃないか」と切なくなりながらTwitterやシミルボンコラムで宣伝を続けていましたが、当日「シミルボンのコラムを読んで」「Twitterで見て」とお声掛けくださる方が多くいらしてくれて「一人じゃなかった!!!ラピュタは本当にあったんだ!!!」という気持ちに……

反応薄くても、空振りな気がしても、発信はしていったほうが絶対いいですね…怖いけどね……
文フリ公式ページにあるWEBカタログも読まれています。開催前日に「気になる」数がぐんと伸びました。

チラシ、有効

呼び込みの際に非常に役立ったのが、チラシ。
ブースのポスターやPOPを見て気になった人に、「よかったらチラシだけでも」と声をかけると、通り過ぎながら受け取っていただけることが本当に多かったです。それで、あとになってから再訪、お買い上げしていただけるパターンもありました。
チラシは200枚用意して、140枚ほど配布した時点で本は完売。その後さらに40枚ほど持っていっていただけました。

また、完売後にブースを回って感じたのですが、実際に売っている本を手に「よろしければ読んでみてください」はちょっとハードルが高いと感じました。
本を受け取ったら立ち止まって読まなきゃいけないし、そうしたら「買うか買わないか」をその場でジャッジする必要が出てきます。その場でジャッジするのって、「ちょっと通りがかっただけの客」にとっては、かなり負担になることです。避けちゃうと思う。

ブースにも見本誌を置くと良い

文学フリマには見本誌エリアがあり、ブースの前で立ち読みするのが恥ずかしい人でもじっくり本を吟味できます。
それとは別に、ブースにも見本誌ラベルを貼った一冊があっても良いと思いました
今回、私は間違って見本誌を2冊用意してしまったのでブースにも置いたのですが、見本誌ラベルがベッタリ貼ってあることで「売り物じゃない」と認識できるのか、手に取るハードルがかなり下がっているように感じました。

ポスターを見て、チラシを見て、見本誌を見て…という一連の流れは、マーケティング用語でいう「アイドマの法則」に従います。とても古典的な考え方なので、おさえておいて損はないと思います。

Amazon併売、やっといて損はない

こちら、「オムニチャネル戦略」を参考にしました。
「文フリのほうが安いけど、Amazonでも買える」という仕組みは、カスタマージャーニーを進めるのに有効だったと思います。完売後にもチラシが40枚ほど出たのは、Amazonの販売情報が記載されていたからでしょう。
Amazonのほうも売れているといいけど…売上が反映されるのに1~2ヶ月かかるんですよね。こっちは本当に未知です。

イベント後の通販は、はじめからするつもりはありませんでした。売り手としては手離れが悪いし、買い手からしてもだいぶハードルが高くなってしまうんですよね。その点、Amazonのオンデマンドはお互いの負担がとても小さくなります。創作をしている方みんなたちに勧めたいです。

振り返り②反省点

ここまで、抑えきれないドヤ顔がにじむ「うまくいった理由」の話ばかりしてしまいました。しかし、反省点もいっぱいあります。懺悔も含め、やらかしたこともちゃんと書いていきます。

ウザ絡み対策

近くに若い女性が一人で出しているブースがあったのですが、そこにいわゆるウザ絡みカルチャーおじさんがちょいちょい引き寄せられているのが非常に見ていてつらかったです。
不慣れな様子の女の子が、どこか所在無げにしていたところを狙われたのだと思います。ダラダラと妙に上から目線で絡み続けるのでどうしようかと思いつつ、自分のブースが意外に忙しくて何も出来ないでいたところに女性の友人たちが来て、それで落ち着いたので良かったです。

ああいうの、あとあとになって傷付いていたことに気づけるんだよね。助けられなくて本当に申し訳なかったと思っています。今回いちばんの反省点です。
「会話のクロージング」も、とても大切なコミュニケーションスキルなんですよね…とくに女性は、自衛も含めて。

名刺あんまり意味ない

チラシよりも持っていきやすいように名刺も作成したのですが、なんか私ふつうに声かけまくっていたので、全然いらなかったですね……ハンドメイドイベントなんかでは、お品書きよりもショップカードのほうが(長く持っていてもらえるので)効果的だったりするのですが。文フリで興味あるのは普通に「本の内容」だもんね。
本につけた40枚は捌けたのですが、あとは20枚くらい出ていったかどうか?ずいぶん余っちゃいました。

完売後の接客

完売後でも見本誌を立ち読みしてくださっていた方にも話しかけてチラシを手渡していたのですが、余計なことしちゃってました。

完売後に見本誌を読んでいるということは、ほっといても立ち去り際にチラシを持っていくものです。むしろ声を掛けると、「読んでいる行為」に水を指すことになります。
それに気づいてからはブースの後ろでひっそりとおやつなどを貪っていました…

会場や見本誌エリアを見て感じたこと(売りたい人のための覚書)

完売後はさっさと撤収しても良かったのですが、近隣のブースにも失礼かと思い、しばらく会場内をぶらぶらしました。

見本誌エリアで手に取られていた本

見本誌エリアで手に取られていたのは、多くが「パッと見て目立つ本」でした。
つまり、

・版面が大きい
・厚い
・表紙がコート紙でフルカラー
・帯がついている

……身も蓋もないですけど、マジです。

ちょっと怖いことを言うと、

表紙・カバーがマットコート紙で、落ち着いたデザインの薄めの本は目立たないのでなかなか手に取られません。

さらに言えば、A4コピー用紙を使った白黒印刷の薄い本は、埋もれてしまって探しても見つけられません。

私の本は、マットコート紙カバー・帯なし・新書サイズだったので、とても地味でした。

本を作る人間が憧れる文庫・新書サイズは、見本誌エリアでは非常に「弱い」です。見本誌エリアで目立たせるためのデザインをする必要はないのですが、見本誌エリアでは目立たないということを織り込んだ販売戦略が必要だと思います(設営とか呼び込みとかね!!!)

東京会場のチラシエリアは効果が薄い

東京会場のチラシエリア、ギッチギチのカオス状態になっていました。
また、せっかく見本誌とチラシが同じ部屋に置いてあるのに、それぞれの置き場に関連性はなく、見本誌で気になってもチラシにたどり着けません。
ブースの呼び込みでチラシが捌けたあとで回収にいったのですが、たぶん一枚も減ってなかったんじゃないかな……今後、改善されるかもしれませんが、少なくとも今回は効果なかったと思います。

立て、呼び込め、座るな

前述した「アイドマ」と似た話になるのですが……なにごとも、「まず興味を持ってもらうこと」から始まります。だからイベントに出店してブースを飾るわけですよね……なのに、まったく呼び込みをせず、椅子に座ったまま本を読んだりスマホをいじっている人がけっこういたんですよね…。めっちゃ話しかけにくいし、話しかけたら買うまで離れられなそうで非常に近寄りにくかったです。っていうか座って待ってるだけなら出店する意味ないんじゃないの……?
この本が売れない時代に、わざわざ面白い本を探しに来た人って、素晴らしいロイヤルカスタマーじゃないですか。そんな方がたくさん目の前にいるのに、なぜ、なぜ視線を落として座ったままでいられるのか…!?ブース代だって安くないじゃない!?

楽しかったなあ……

ダラダラと書いてしまいましたが、今回で本連載は最終回といたします。本をつくるまで、本のつくりかた、文フリに出る方法、本の売りかた……いまの時点で開示できる情報は、もう全部書いたと思う。

Amazonからお買い上げいただいた田中里尚さん、本当にありがとうございました。

また、文フリ当日に来てくださいました読書人のJasmineさん星のさんそしてシミルボン事務局の中の方へも重ねてお礼申し上げます。

挙動不審で「アッ……アノ…!!ヒヒッ……!!!」みたいになっちゃってすみませんでした……

久々にいっぱい書けて楽しかったです!またどこかで。

あっ!「じぶん出版」に興味のある方は声かけてくださいね~!手伝いますよ!!

個人的には、もっとたくさんの家庭で眠っているはずの「爺ちゃんの自伝」をもっと世の中に送り出したいと思っています!!!


投稿日 2019.05.09
ブックレビューサイトシミルボン(2023年10月に閉鎖)に投稿したレビューの転載です


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