#1 当方腐女子、BLが好きです
こんにちは、隠れ腐女子です。
先日、家族から、突然「ねえBLって何?」って質問を受けました。色々びっくりしました。
なるべく誤解されないように、そして私もバチクソに腐ってるとバレないように一生懸命説明したらすごく長くなったので、ついでにコラム連載始めてみます。
めっちゃくちゃ楽しい腐女子の世界、楽しさの一片だけでも伝えられたらいいな…
実はそれほど認知されていないのか?
ことの始まりは夫が部下からうけた恋愛相談。「彼女と話が合わない」というものでした。
「俺はゲームが好きだけど、彼女が興味を持ってくれない、俺は彼女のBL趣味に付き合ってるのに、なんか俺ばっかり譲歩してる気がして最近辛いんですよ…」という、(これだけで正直「マジかよ」って思う)愚痴を聞いて、同僚が「あー…彼女BL好きなんだあ…頑張ってるねえ」とうんうん頷く横で「一方的な譲歩はつらいよねえ…」と若者を労った夫が帰宅後私に聞いてきたのが
「ねえBLって何?」
ビックリしました。知らなかったのか。やばいアレとかコレとか隠さなきゃ。
内心の冷や汗に気づかれないよう慎重に説明したところ、思っていた以上に理解が難しい様子です。私はだいぶ昔から腐女子やってたので、当たり前すぎて言語化する必要もなかったんだなぁ…
腐女子って何?BLって何?
若い男性には比較的認知が進んでいる気がするのですが、夫(アラフォー)あたりのおじさま世代にとってはマジで未知の世界なのかもしれません。
BLは、クローズドな世界で成熟したハイコンテクスト文化です。
そのため、文化を捉えるために独特の用語を理解する必要があります(それが敷居の高さになってるのかもしれない)
腐女子(ふじょし)とは、「BL(びーえる)」が好きな女性のこと
腐ってる、とも言います。「女子」という単語は入っていますが、「いい年して女子って…」などと揶揄される言葉にはあたりません。(が、主に若い女性を中心に使われることが多いかも)
年齢を重ねたり家庭を持ったりした女性の称号には「貴腐人(きふじん)」なんてのもあります。ただ、貴腐人は主に、敬意を払うときに使用する三人称です。一人称ではあまり使いません。
BLって何?
和製英語「ボーイズラブ」の略です。ボーイズラブとは男性同士の性愛描写をメインにした娯楽です。
主に、「女性が男性を性的に消費する」ことを目的としています。
性的に消費ってのをもう少し言うと、
・アイドルの握手会に行く
・グラビア雑誌を買う
・スポーツ新聞のエロコーナーを読む
のと同じ行為です。制服姿の美少女がドアノブ舐めてる写真集と同じ娯楽です。
男性でBLに抵抗感を持つのって、自分の性が消費の対象とされる感覚に慣れていないからじゃないかなあ?
大多数の女性は、(コンビニのエロ本コーナーが存在することを受け入れる程度には)女性性が消費物扱いされることに慣れてしまっています。
良いか悪いかは別として、この違いは性産業の捉え方に大きなギャップを生んでいるはず。
腐女子をとりまく誤解
中途半端にかじった人に「つまりこういうことなんでしょ?」と一般化されるのを死ぬほど嫌がるのがオタクのめんどくさいところですね!
オタク女はみんな腐女子?
違います。ここテストに出ます、気をつけて。
前述の通り、腐女子とは「BLが好きな女性」のことであって、オタク女性全般を指す言葉ではありません。
腐女子じゃないオタクもいれば、オタクじゃない腐女子もいます。
・ゲーム好きは皆殺人犯予備軍
・マンガ好きはみんな性犯罪者予備軍
というのと同じ種類の誤解です。
オタク女を総称して「腐女子」と呼ぶ誤用をしてるのが↓です。
(意図的に誤用しているような気もする…)
「オタク=腐女子」という誤解を一度は提示しておいて、それを解くという流れがあるのが
本筋はけっこう重い展開のループものファンタジーですが、腐女子解説のくだりは膝を叩いて笑いました。絵もかわいくて良い。
BLってつまりゲイのことでしょ?
違います。断じて違います。
BLを楽しむ際にゲイ文化はとても参考になりますが、BLとゲイは全くの別物です。
これは、よく言われる「BLはファンタジー」というフレーズが象徴しています。
ゲームの世界で戦う女性キャラクターに化粧もトイレも必要ないのと同じ理論で、BLと現実のセクシャルな嗜好は異なります。
BLならではの性行為の様式美もありますが、男性向けエロ漫画の「くやしい…! でも感じちゃう…!」と同じたぐいのファンタジーであって、真に受けるべきものではありません。クリムゾン先生尊敬してます!
ゆえに、大半のBL作品は、ゲイやセクシャルマイノリティーのレプリゼンテーションとしては機能していません(とても慎重に表現するとこういう言い方になる)
と同時に、ゲイ文化へのレプリゼンテーションとして機能している良質なBL作品も存在し、絶大な支持を得ています。
腐女子はスクールカースト最下層
実際そうでもない。
スクールカーストとは、中学・高校あたりのティーンにみられるピラミッド型の階級序列のこと。
図解するとこんな感じ。
…辛い…
色々悲しくなってくるので言及は避けますが、「私コミュ障だから~~~w」なんて言ってる腐女子に実際に会ったときの
このへん感!
仕事にプライベートに充実するキレイな女の子がBL好きってことも充分にあります。アナタの隣のその美女も、脳内で推しの(~~禁則事項~~)てる腐女子かもしれませんよ!
腐女子はリアルが終わってる
違います。断じて違います。それは「喪女(もじょ)」。
喪女とは、喪に服したようにリアルの楽しみがないオタク女を指す言葉です。
喪女のいたたまれない「リア充社会への不適合」を描く漫画がこれ
主人公のもこちゃんは腐女子にして喪女。(喪女の腐女子率は高い)
これ、たまに笑っていられなくなってくるほどにキツいです…が、「喪なら喪の生き方」を描く作品でもあるかな。
以前「腐女子だけど婚活する」というドラマが放送されていましたが、「腐女子だけど」とかいう前提なしに、
腐女子も普通に彼氏いますし結婚もしています。
(これが、後述する「腐男子」の発生に関わってきます)
また、前述の通り、BLはハイコンテクストな文化なので、認識を共有できる腐女子どうしは非常に仲が良くなります。「オフ会」や「イベント」など、対面でのコミュニケーションをとる機会があれば、けっこう全国各地(なんなら世界各地)から駆けつけて物理的距離や社会的地位を超えた友人関係を形成することもあり、とても楽しいです。
男同士の恋愛が好きって言っても、片方は自分の代わりなんでしょ?
違います。断じて違います。それは「夢女子(ゆめじょし)」。キャラクターと恋愛をしたい女性のこと。
男性同士の性愛描写ではもちろん「男性役・女性役」が発生します。
でも、必ずしもその時に「女性役」が読み手・書き手の投影先ということにはなりません。その逆もしかり。
ちなみに私は推しが同棲してる部屋の天井になりたいタイプの腐女子で、たぶん多数派。
腐女子は同性愛者やセクシャルマイノリティーの理解者
全く違います。そこは関係ありません。
これは「子どもが好きなら保育士できる」みたいな誤解に近い気がする。(保育士は高度な専門職です!子供を可愛がるだけの仕事じゃない!)
セクシャルマイノリティー(LGBTに限らず)やジェンダー論の存在は、趣味嗜好にかかわらず大人として知っておくべきものです。知った上でBLを楽しむためのエッセンスにすることはあっても、「BL好き」と「セクマイへの理解」はまったく関係ありません。
性的な娯楽なので、場合によっては対象の尊厳を損ねることもあります。そのため、BL趣味は「秘すべきもの」としなければならない、と強く考える人もいます。しかし、それを「少数派への抑圧」と直結して考える人もいます。
だから揉めやすい。そして揉めやすいから(面倒だから)、同好の士以外には自分の趣味を隠す腐女子が多いのだと思っています。
BLって女向けの娯楽なんだろ?
実はそうでもありません。腐男子という「BL好きの男性」が実際にいます。
自らの所属する性とBLで描かれる男性性を切り離し、BLの様式美を娯楽として楽しめる、柔軟な感性をもつ男性が少なからず存在します。
もちろん腐男子が同性愛者やセクマイ理解者という話とは無関係です。(腐男子を装うゲイの男性も、BLを嫌うゲイの男性もいると思います)
まあ、そもそも女向けの娯楽を一段落として見るような男は来なくていいです。
あ、いや、来い。オマエをトロットロのメス受にして作品書いてやる。ちょっとこっち来い。
BL好きは欲求不満
全然関係ありません。男同士の友情ストーリーが好きな人に「オマエ友達いないんだろ、寂しい奴だな」って言うくらい的外れです。
BLは様式美のなかで楽しむ娯楽として、すでに成熟しきっています。
スポーツ観戦と何にも変わりません。
よって、「腐女子ってBL作品を実用的に使うもんなの?」という疑問に対しては、上記までのコンテクストを共有した前提でそんな事を聞いてくる悪い子はトロットロのメス受にして作品描いちゃうよ?と返すことになります。
そもそも、なんでBL趣味なんかに…
そう、BLの楽しみ方は、その他の趣味と何も変わりません。
一定の様式美に従い、同じ嗜好を持つ仲間の間でのみ共有されたローカルルールのなかで対象をいじくり回してあそぶ娯楽です。
じゃあ、数ある趣味のなかで、なんでBLを選んだのか、なぜ、よりによって腐女子なんかになってしまったのか。
正直それは腐女子自身も「なんでかなあ」と思っているポイントなのですが、せっかくなので、次はBL沼の入り口にあった「バディもの」「ブロマンス作品」を重点的に紹介しようかな…
えっもう引いた?ドン引きしてます?
でっすよねーーーーーーーー。
投稿日 2017.06.02
ブックレビューサイトシミルボン(2023年10月に閉鎖)に投稿したレビューの転載です
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