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【ゆるっと傍聴よもやま話3】スジ違いの気づかい

久々に行ってきました、リアルな人間模様をビシビシ感じに裁判所へ。今回傍聴した裁判は・・・一言でいえば「ちょっとズレてる」ってことで、その時のお話を。

👉事件名がすごく長い

「麻薬及び向精神薬等取締法法律違反」
これだけでも長いんですが、本当はもっと長いんです。簡単に言うと、覚醒剤密売の手助け、実際に密売、覚醒剤を持ってて、それを使ったっていう4つの罪です。
そしてちょっと驚いたのが、この裁判、裁判員裁判だったんです。通常、覚醒剤使用だけではこんなに大事ではないんですが、調べてみるとどうやら、「覚醒剤の輸入密売」がかなりの重罪のようで、無期懲役もあり得る事案のようです。

👉裁判員裁判でした

今回のようなケースは初めてですが、通常は殺人や傷害致死など人が死亡している事件は、裁判員裁判になります。導入当時は「選ばれたらどうしよう」って話題になりましたが、実際の確率は0.01%ぐらいなので、周りで選ばれた人もいないし、私も傍聴に行って初めて目にしました。裁判員は6人で、見た感じ様々な年齢性別の人を選んでいるように見えました。裁判長が一人、左右に裁判官が2人いて、それぞれ3人ずつ裁判員がついており、グループに分かれて審議しているようです。

👉事件の内容

今回の事件、被告による覚せい剤に対するかかわりが量刑への争点のようです。

■被告(30代女性)の元カレが実は覚醒剤の密売人で、当初は素性を明かさず、中身が何かも告げず、被告に覚醒剤の発送梱包金銭の受け渡しなどを手伝わせていた。→争点①被告は元カレの密売をいつから知っていたのか
■後に元カレは逮捕されたが、被告に覚醒剤の顧客連絡用の携帯電話を引き継ぎ、刑務所から遠隔で指示することで密売を継続させようとしていました。→争点②なぜ断れなかったのか
■元カレは、自分の手足となって密売を継続させ状況を手紙で報告、また売上金を差し入れとして刑務所へ持ってくるように指示するも、まったく被告から報告がなされず、自らの意志で密売をしていた可能性がある→争点③やらされていたのか、積極的に密売に関与したのか(報酬の有無)

👉私が気になるのは

もちろん覚醒剤の密売は重罪です。
が、法律的な事はわからないので、いつも通り寛大なココロで読んでいただきたいのですが・・・。
今回の事件、いくつか気になったのは、人間の思いや物事の選択のほう。
どうも、「そこ、気ぃ使う?」って本質からズレてるような…。

👉スジ違いの気づかい

 ①情にほだされ

元カレが逮捕され、密売の仕事を引き継いでほしいと頼まれますが、本当はやりたくなかった。でも元カレがかなりの気分屋で、断ると不機嫌になっ手を上げることもしばしば。何より彼から「ほかに信用できる人がいない、被告だけが頼り」と言われ、かわいそうになったと・・・。
いやいや、かわいそうになって密売引き受ける選択って、give-and-takeの比率バグっない?

 ②結局自分のため

刑務所の中から手紙で密売の指示を出す元カレ。彼の供述の中で出てきたのが「覚醒剤の価格は人によって違うが、被告に販売価格を細かく伝える事で、彼女が困らないようした」と・・・。
被告のためにに気をまわしたっぽく言ってるけど、ちょっと考えたら100%自分のためよね。

 ③サラリーマンの発想

被告ひとりで密売をする中で、仕入れ元から覚醒剤を売れないと言われるトラブル発生。その事を元カレに相談すると、刑務所から遠隔根回しで、別のところから、通常10g程のところを100g、安値で仕入れることに成功、そのやり取りを被告がするように元カレから命じられます。がこれも本当はやりたくなかったと言う被告。検事より「断ればよかったんじゃないですか?そもそも困るのは元彼ですし」と言われ被告は「断ったら、今回特別に大量に仕入れてくれた仲買の人が困ると思って断れなかった」と。いやいや、それって信頼勝ち取るために営業さんが取引業者にするやつ。

 ④1万円の為に?

100gの仕入れのやり取りについて元カレからは、被告と仲買の間に助っ人を入れて、その人に覚醒剤の運搬と支払いを任せるよう指示されていた被告。しかし被告はその指示を無視し、自分で仲買人と接触し覚醒剤の受け渡しをします。検事より、なぜ指示通りしなかったのかと問われ「助っ人の人がたった1万円でやらされるぐらいなら私が動いたほうがいいかと思って」と。もはやだれに対する何のための気遣いかわからない・・・。その1万円を報酬としてもらうつもりだったと疑われて、密売に積極的だったと思われても仕方ないですよね。

👉〆

法廷で被告の女性は、覚醒剤の密売で報酬は一切受け取っていないと。しかし無職ということもあり、生活費はどうしているのか。被告が言うには、10年来家賃を払ってくれて、困ったら追加でお金をくれる知人(元彼)がいると言います。お金に困っているわけでもないけど、覚醒剤の密売をするというところに、なんだかうすら寒い人間の感情を見た気がしました。

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