ワクチンは悪ですか?

(読了目安6分)

※下記は2016年に書いたものです


主に子どものワクチンについて書きますので、子育ての参考にしてください。


マスターの知人A子さんは、「子どもにワクチンの接種をさせない」という考えの母親でした。
「製薬会社と行政の闇のつながりへの憤り」や、「ワクチンの効果に対する疑問」などが主な理由だと聞きました。



「闇のつながり」については、医療や薬をとりまく状況に「闇」の部分はあると思います。
あまりにも複雑で、一個人には計り知れないものであることもほぼ間違いなく、A子さんの憤りももちろんわかります。
ワクチンの効果にしても、確実性があると言えないワクチンが存在したり、意図的に効き目のデータが改ざんされたりすることもあると思います。



しかし・・・


マスターはA子さんの話を聞き、なんとも複雑な思いでした。

というのも、マスターは発展途上国の病気の実情を少し知っているからです。

行政の手も届かないような山奥の村では、感染症による悲惨な状況が多々あり、簡単に書くと、「ワクチンがあれば多数の命が救われる」という現実があります。


ワクチンの接種をさせないということは、子どもたちの命の危険が増えるということでもあります。
また、ワクチンの接種をしない人が増えてくると、その病気の感染率が上がり、ワクチンの接種をした人の罹患率も上がってしまいます。


感染症は、文字通り感染します。

「自分が病気になればすむ・自分が死ねばすむ」という「個人の問題」ではありませんから、社会の中で生きるなら、社会人としてワクチンの接種は必要と言えるかもしれません。



◎ワクチンが効くとどうなるか


日本ではワクチンの接種が積極的に行われた結果、大きな効果が出ていますから、「病気が減ってとても良かったですね」とすんなり話が終わればいいんですが、そこで問題が出てきます。


ワクチンの接種が盛んになり、病気が少なくなってくるとどうなるか・・・


・・・


みなさんは、どうなると思いますか?

ワクチンの接種によって病気が少なくなってくると・・・

・・・

一部の人は、忘れてしまうんです、ワクチンによって病気が抑えられているということを。


ちょっと考えてみてください。


たとえば「ポリオ(小児麻痺)」のワクチンが効き、日本では患者をほとんどゼロにすることに成功しました。


しかし、患者が「ゼロ」になると、今度はワクチン接種による医療事故が目立つようになってくるんです。
そんな人たちが、ワクチン接種の弊害に目を向けるようになり、ワクチンに対する疑問を持つようになります。

どんな感染症でも、蔓延して人がバタバタ倒れている状況では、人は「ワクチンをくれ!」と行列を作ります。
しかし、いざワクチンが効いて病気が影をひそめると、次は「ワクチン接種による医療事故を減らせ!」と言い出すわけです。


ワクチン不足で困った経験がない若い親は、「だれも病気になってないじゃん、ワクチンなんて意味ないじゃん。ワクチン接種で死ぬ人もいるんだし。ワクチンなんて危険!」という考え方になることもありえます。

しかしです。

もし国民がワクチンの接種をやめてしまうと、やがて感染症が優位になります。

そしてまた蔓延し始めて死者が続出すると、その時あらためてワクチンが効いていたことを実感することになるわけです。


以前マスターは、「人類の歴史は清潔化の歴史です」と書いたことがありますが、これはまさに、「感染症との戦いの歴史」と言い換えることもできます。


感染症になった大切な人や子どもを看取る・・・平気でいられる人はいないですよね。

そんな悲劇を少しでも減らすために、人類は知恵を絞ってきました。
みなさんはワクチンの接種を受けてきたと思いますが、今、無事に大人になれたのも、ワクチンをはじめ、人類が病気と戦ってきた結果です。
(マスターが関わっている「ネパール」という国では、無事に大人になれない子どもが日本よりはるかに多くいます)



◎ワクチン接種が原因の死亡事故


冒頭の、子どもにワクチンの接種をしないことを選んだA子さんは、「製薬会社と行政の癒着」だけでなく、「ワクチンの接種が原因で死亡する子どもがいる」ということも理由のひとつに挙げていましたが、以下、どう思いますか?


まず、ワクチンの接種が原因で死亡する人も確かにいるみたいです。
しかしワクチンを接種しないことが原因で死亡する人の方が多いことは、これまでに充分証明されています。


仮に、ワクチンを接種したために死亡する子供が「100万人に1人」いたとします。
次に、ワクチンを接種しなかったために死亡する子供が「100万人に100人」いたとします。
みなさんは自分の子供に対して、「死亡率100倍」のリスクを負いますか?


繰り返しますが、行政や医療に「闇の部分」があることは事実です。
人間の判断力の未熟さ、医療の未熟さももちろんありますから、稀に予想外の大きな医療事故になることもありえます。
それでも、ワクチンのメリットとデメリットを考えた場合、「接種した方がいい」という結論になると思います。



ということで、

「ワクチンの接種は悪いことですか?」

に対してのマスターの回答は、

「悪いことではありません」

です 。


出産すると、子どもは無料で何種類かの予防接種を受けることができますから、出産予定のある人は、今からワクチンについていろいろ考えてみてください。


余談:今日、2022年4月2日のこと

上の記事は6年ほど前に書いたものですが、たまたま昨日、医療従事者の常連さん(マスターの職業はレストラン経営です)が来店し、30分ほど話をしました。

「患者さんを見ていると、ワクチンを打った人は確実に軽症ですんでいます」という言葉が印象的でした。


また、「次から次に変異株が出てくる」という話の中で印象的だったのは、「ゲノム解析」の話でした。

ひと昔前の感染症は、次から次に変異株が見つかることはありませんでしたが、みなさんはそれはなぜだと思いますか?

答えは簡単です。

マスターが「変異株が次から次に見つかるのは医学が進歩したからでしょ?」と尋ねたら、「そうなんですよ。次々に対応しなくちゃいけないんでこの件については医学の進歩も一長一短かもしれません」と返事があったんです。

医学の進歩によって、ゲノム解析が数日でできてしまうんです。

ゲノム解析は、ひと昔前は数か月かかりました。
30年前なら10年以上、そして50年前だったら、人類には不可能な仕事でした。

ですから、昔の感染症は、変異株を特定する前になんとなく終息してしまったんです。

ということで、変異株が短期間でたくさん出てくる理由は、医学が進歩したからです。

参考までに、この20年ほどでガンが死因の一位になったのも、医学が進歩したからです。

・・・

投稿タイトル一覧は以下です。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?