オーガニック教 5

(読了目安9分)

◎オーガニックライフで健康になれるか



ある意味「生活が全部オーガニック」と言ってもいい江戸時代、平均寿命は現在の半分程度でした。


江戸時代の生活を想像してみると、朝起きてまずエアコンがありません。
水道もシャワーもなく、手や顔を充分な水で洗えません。
トイレも水洗ではありませんし、アルコール除菌もないんです。
そして冷蔵庫がないですから、腐りかけたものでも食べ、感染症にかかります。
感染症が劇症になっても、電話も、救急車も、抗生物質もありません。
清潔な外科手術ができる設備や点滴の処置もなく、現在なら簡単に治療できる病気でも、不治の病として扱われたりするわけです。
消毒設備や下水道設備が乏しいため、下痢や嘔吐からの感染がさらに拡大し、「原因不明の疫病・不治の病」として、たくさんの人が亡くなっていきます。


「全部オーガニック」の江戸時代は、今よりも早く人が死んでしまうんです。
この事実は、「人の健康や長寿にとって大切なことは、オーガニック思考ではない」ということを示しています。


「オーガニック」も、自己暗示と同じで、たとえば健康的なイメージが浸透すれば、「オーガニックで健康になった」と思う人がたくさん出てくるでしょうから、「オーガニック=健康!」というイメージが、本当に健康を生み出すことはありえます。
逆に、商業オーガニックが横行して裏取引や偽装の温床になってしまえば、「オーガニック=悪」というイメージが、実践者たちを不健康にするかもしれません。
オーガニック思考はまさに「信じる力」によるところが大きいですから、度が過ぎれば宗教と同じです。



オーガニックで健康になれるかどうか・・・
マスターは、オーガニックを信じる力によって健康になることはありえると思いますが、「オーガニックだけで健康になる」というのは不可能だと思います。




◎皇室はオーガニックフードだけど


「皇室(皇族)」の食にまつわる健康についてです。


皇室では、一般国民よりも、かなりオーガニック寄りの食品が使われています。
専用の畑や牧場を持ち、できる限りオーガニックにこだわった食事を用意しています。
国を代表する人たちですから、周囲は、「身体によいと思われるもの」を食べてもらう努力を惜しみません。
ですから皇族の普段の食事は、「ほぼオーガニックフード」と言えます。
一般人のように、普段からコーラを飲んだりアイスクリームを買い食いしたり、カップラーメンもハンバーガーも食べたりしてないんです(たぶん)。


もしオーガニックフードで健康になれるなら、皇族はみんな健康であるはずですし、さらに「現代医療」との組み合わせにより、かなりの長寿になるはずなんです・・・


ところが・・・


皇族の寿命も、国民と大きく差はありません。
100歳以上生きる皇室関係者なんてきっと珍しいはずです。
逆に、一般人でも、100歳まで生きる人もいます。
医療が発展した現代、歴史のある皇室の食事だろうが、ジャンクフードなどもある一般人の食事だろうが、その健康効果はあまり変わらないということです。


皇族はその立場や仕事柄、ストレスが溜まるのは事実だと思います。
食事よりもむしろ、ストレスがないことの方が、長寿で健康になれるのかもしれません。


最後にまとめると、なにもかもオーガニックな「フルオーガニック」では明らかに短命、そしてほぼ理想的かと思われる「オーガニックフード」と「現代医療・現代的な生活」、これらを実践する皇族も、一般国民と比べて特別に長生きではない、ということです。


オーガニックについて考えるとき、「皇族は、自分の畑や牧場を持つような食生活をしている。だけど長生きではない」ということを覚えておいてください。



◎オーガニックで病気は治るか


オーガニックで病気は治るか・・・これも大切なテーマです。


おそらく一定の割合で病気は治ります。
現代医療で治らなかった人がオーガニックライフを実践すれば、必ず治る人が現れるからです。


病気の治療というのは、どんなときでも正解はなかなか見つかりません。
「オーガニック療法」のようなもので病気の治療に挑んだ時、以下の太文字のようなことが起こります。


信じたから治った。

信じたけど治らなかった。

信じなかったら治らなかった。

信じなかったけど治った。

信じても治らなかったけど、信じてなかったら悪化していただろう。

治らなかったのは本心から信じなかったから。


そして

「信じる人は救われる」

「救われた人は信じる」

これらはマスターの経験上、どっちも「アリ」なんです。


人は、オーガニック療法を実践「した場合」と「しない場合」の、2つの人生を同時に送ることはできません。
どんな効果があったか考えるのは、結局は本人の問題です。


ひとつ、病気が治らなかった場合に、周囲にオーガニック療法を勧めたオーガニック教の信者の言葉としてよくあるのは、


「ちゃんと実践しなかったからじゃないの?」

「やらなかったらもっとひどくなってたよ」

というのがあります。
・・・このセリフ、ご利益系宗教と同じセリフのような気がしませんか?


オーガニックで病気は治るか・・・
これも、治ったと信じている人もいれば、治らなかったと信じている人もいる、というのが現状だと思いますが、マスターは、オーガニックの力だけでは治らないと思います。



◎オーガニックの最後の最後に 


(マクロビの巨匠「久司道夫」)

「食事だけでガン予防・ガンが治る!」と、現代医療を拒否し、オーガニックライフ(オーガニックな食生活)を実践してきた人が、晩年、ガンになったとします。
その人が、最後の最後で現代医療に頼ったりしたら、結局は現代医療を認めたことになってしまいます。


そして、実際にそんな人も世の中にはいます。


マクロビオティック(マクロビ)の巨匠と言われる、故「久司 道夫(クシ ミチオ)」という人です。
以下、「道夫さん」と書きます。

マクロビとは、ざっくり書くと「玄米菜食主義」で、動物性蛋白を摂らない、または控え、健康体を目指す食事法です。


道夫さんは、まさに「オーガニック思考」と言える「マクロビ」の指導者でした。
ハリウッドスターたちにマクロビを広め、日本でも有名になりました。


そのマクロビの特徴のひとつに、「ガンにならない・ガンは治る」というものがあります。
世の中、ガンで亡くなる人が多いですから、健康法を広めようとしたとき、「ガンが治る」と宣伝すれば、その健康法が売れるからかもしれません。
また、西洋医学に否定的で、「マクロビは医者いらず」と宣伝しています。


現代医療でガンが治らなかった人がマクロビを実践すれば、一定の割合で治る人は出てきますから、「現代医療で治らなかったガンがマクロビで治った!」と言うことは可能なんです。
ただ、「医者いらず」と言っていたマクロビの指導者が以下のようなことをしていたら、説得力はありますか?


本人が大腸ガンになり、現代医療で摘出手術を受けている

実践していた妻がガンで亡くなった

道夫さんの息子が西洋医学の医師になった

道夫さん本人がすい臓ガンで亡くなる


・・・これは実話です。


「マクロビならガンにならない・ガンが治る」とうたっていた本人が、ガンになり、否定的だった現代医療で大腸ガンの切除手術を受けたそうです。
しかも奥さんはガンで亡くなり、息子の一人が現代医療の医師なんです。
息子が現代医療の医師ということは、親に反抗しているのか、実は親も現代医療に頼っていたのかもしれません。
そして本人は、最後はすい臓ガンで亡くなりました。


西洋医学を拒否し続けるオーガニックライフの「最後の最後」に体調を崩し、西洋医学に頼った治療をしてしまったら・・・道夫さん本人は体調が回復して安心だったかもしれませんが、道夫さんに影響されてオーガニックライフを実践した周囲の人たちの落胆はとても大きいものになります。


愛に近づくための努力とは、「オーガニックライフの追求」ではありません。
熱心になりすぎると、自分だけではなく、周囲の人たちにもいろいろな弊害が出てきます。


道夫さんは、大腸ガンの摘出の後、すい臓ガンになり、2014年に亡くなりました。
享年89歳でしたから、比較的長寿だったのは確かです。


「マクロビ 久司道夫 ガン」などで検索すると、興味深い記事が出てきますので、オーガニック思考の世界でどんなことが起こったか、みなさんも興味があったら調べてみてください。



余談:2つの解釈

「ガンにならない・ガンが治る」というマクロビオティックの指導者、久司道夫さんがガンで亡くなったことは、2つの解釈ができます。

「マクロビが優れているからガンになる」

「マクロビが優れていないからガンになる」

というものです。

現代の人間は、あらゆる病気を避け続けると、結局はガンで亡くなります。
ということは、マクロビオティックを熱心に続けると、長生きした結果、最後はガンになるしかなくなるということになり、「マクロビを極めるとガンで死ぬ」と言うことができるわけです。
つまり、優れた食事方法だからこそ、あらゆる病気を退けた結果、ガンにしかならないということです。
これが1つめの解釈です。


そして2つめの解釈は、「ガンにならない・ガンが治る」といううたい文句だったのに、指導者がガンで亡くなったということは、「マクロビはウソだった」ということです。
つまり、「マクロビが優れていないからガンになる」という解釈です。

いずれにしても、信じたい人が信じるしかないことですが、マスターは、もし今後マクロビの実践者たちが、ことごとく平均年齢を超え、やがてガンで亡くなるなら、それは、「マクロビが優れているから」だと思います。
だとしたら、本質は、「マクロビをやるとガンになる・ガンで死ぬ」であって、「マクロビをやるとガンにならない・ガンが治る」というのはウソになります。

マクロビが台頭したのは、ガンが恐れられていた時代ですから、「ガンにならない・ガンが治る」といううたい文句は、多くの人が求めていたはずです。
だとすると、「ガンにならない・ガンが治る」といううたい文句は、マクロビを広めるための方便だったのかもしれません。


マクロビが優れているからガンになるのか、マクロビが優れていないからガンになるのか、みなさんも考えてみてください。



今回は以上です。
今後以下のような内容で「オーガニック教」の話を進めます(順不同)。

◎農家でさえわかっていない?
◎中学生と同じ思考
◎微量のお酒なら
◎愛するためのオーガニック
◎「商業オーガニック」と「本当のオーガニック」の見分け方
◎親のオーガニックのせいで仲間はずれに
◎オーガニックライフに戻るのではなくその先へ
◎オーガニックで長く愛されるか
◎オーガニックの酒とタバコ
◎愛するためのオーガニック
◎まとめ

・・・

投稿タイトル一覧は以下です。


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