玉ねぎのみじん切り ー本質とは―

(読了目安30分)


この投稿では、世界一美しい「玉ねぎのみじん切り」の動画を紹介します。

マスターの実務経験から、料理教室や調理師専門学校では教えてくれない、大切なことをお伝えします。
「玉ねぎのみじん切り」を中心に、野菜を切るすべての人に読んでいただきたい内容です。

みなさんは、日本人が一番切るであろう野菜って知っていますか?
マスターの店で実施したアンケート結果では、「玉ねぎ」でした。
そして玉ねぎの中でも、「みじん切り」が一番でした。
つまり、「玉ねぎのみじん切り」は、日本人の誰もが通る道ということになります。
今回の投稿は、玉ねぎのみじん切りはもちろん、料理業界のこと、さらには生き方の指針まで見えてきます。

いろいろな動画を紹介して解説するので、実際に動画も見てもらうと1時間ほどかかると思います。
noteの記事としては長いですが、料理教室に何度も通ったのと同じぐらいの内容です。
1時間のテレビ番組を見るつもりでお付き合いください。

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◎玉ねぎのみじん切り ―本質とは―


では、まず前置きです。

今回は、世界一美しい玉ねぎのみじん切りの他に、マスターが見た100以上の動画の中から14の動画を紹介します。
それら動画を通して、「本質」について考えてみましょう。
きっと「世界一美しい生き方」のヒントになるはずです。


独身女性や主婦だけでなく、料理のプロにも見てもらいたい内容です。
プロの人なら、より大きな感動を味わってもらえ、自分がやっていることを見つめ直すいいきっかけになると思います。


マスターが伝えたいのは、単に「玉ねぎを切ろう!」ということではなく、

「これを人生に当てはめて、本質を考えるヒントにしてください」

「愛は誰もが努力次第で到達できるものです」

「本質は商業とは別の場所にあります」

「最後は自分で考えて本質に近づいてください」

ということです。



では以下、本題に入りましょう。


以前、「多くの大学が経営難に陥っている」というニュースを見て、マスターがいつも書いている、「経営学部がある大学が経営難になるのはなぜか」という質問を思い出しました。
経営学部と言う看板を掲げ、お金をもらって経営学を教えている大学が経営難になってしまうなんて矛盾していますが、この矛盾は、「看板を掲げている場所に本質があるとは限らない」、ということを示しています。


簡単に言えば、
「経営学部という看板に経営の本質があるとは限らない」、
ということです。


そしてそのとき、マスターは思い出しました。
そう、料理の世界も同じなんです。


「調理師専門学校」「栄養専門学校」などという看板に、料理の本質があるとは限らないんです。


今回はその一例を、玉ねぎのみじん切りの動画を通してみなさんにお伝えしようと思います。


マスターが考える「世界一美しい玉ねぎのみじん切り」と、日本中のプロたちがYouTubeにアップしている動画を比べてみてください。
そこからいろいろと見えてくるものがあります。


◎「美しい玉ねぎのみじん切り」の定義


では「玉ねぎのみじん切り」の動画を見るための準備です。

みなさんは「美しい玉ねぎのみじん切り」と言われて、どんな切り方をイメージしますか?
できるだけ以下の条件を満たすものがその本質だと考えています。

1:安全なこと

2:作業が早いこと

3:作業の音が静かなこと

4:まな板の上で散らからないこと

5:涙が出にくいこと

6:まな板や包丁が減りにくいこと

7:手にニオイが付きにくいこと

8:一本の包丁でできること

9:一種類の切り方でできること


以下、1~9を簡単に説明します。

1:安全なこと
切り方にはいろいろありますが、できるだけ安全な切り方で切ることが大切です。
具体的には、肩の関節を中心に包丁を前に押して切る「スライド切り」が理想です。


2:作業が早いこと
同じ作業をするなら、早いに越したことはありません。
作業が早ければ時間の節約になり、プロの世界で言えば顧客サービスに充てる時間が増えるということです。
たとえばフードプロセッサーでみじん切りをする人もいますが、準備と片付けの時間を考えたとき、「私は包丁で切った方が早く終わる」と思えれば、「作業が早い」と言えます。


3:静かなこと
できれば作業は静かな方がいいと思います。
音がうるさいということは、それだけ周囲に迷惑ですし、作業が雑だと思わせてしまいますし、道具に負担がかかる(擦り減る)ということだからです。


4:まな板の上で散らからないこと

切ったものがまな板の上で飛び散ると、それを拾ったりまとめたりするのに時間がかかります。
床に落ちた玉ねぎを踏んだまま歩いたりすると、ニオイや掃除の面で面倒です。
まな板の上でまとまる切り方ができればそれが何よりです。


5:涙が出にくいこと

玉ねぎと言えば「涙」を思い浮かべる人もいると思いますが、涙が出なければ作業が楽ですよね。
玉ねぎの細胞をつぶさない切り方をすることと、作業時間をできるだけ短くし、素早く切ることができれば涙は出にくくなります。


6:包丁やまな板が減らないこと

包丁とまな板が強く接するとどちらかが減ってしまいますから、強く接することがないようにするのが大切です。
また、切った玉ねぎを集めるために刃を横に移動させたり「二度打ち(切ったものをさらに包丁を揺らすようにザクザクと切る作業)」をすると、包丁とまな板の減りが早くなります。
刃の横移動や二度打ちはできるだけしない方が美しいと言えます。


7:手にニオイがつかないこと
食器へのニオイ移りを防ぐため、同じ作業をするなら、できるだけニオイがつかない方がスマートです。
手のひらを使って集めると、ニオイが移ります。
できれば玉ねぎをおさえている手だけ、しかも指先だけしかニオイがつかない切り方がベストです。


8:一本の包丁で切ること
洋食の料理学校を出た人には「二本の包丁で切る」という作業が馴染み深いかもしれません。
しかし同じ作業をするのであれば、一本の包丁でできる方が、「持ち替える時間・必要な道具の数(保管場所とコスト)・ケガのリスク・道具の管理」などの面で優れています。


9:一種類の切り方で切ること
同じ作業をするのであれば、何種類かの切り方を使い分けるのではなく、一種類の切り方で切ることができれば簡単ですし、安全ですよね。
また、一種類の切り方を習得することで玉ねぎのみじん切りができるなら、多くの人が「玉ねぎのみじん切り」を早く習得することができます。



以上です。
いかがでしょうか。
上記9項目を満たすほど、「美しい切り方」「本質」と言えると思います。


◎動画紹介


では、「玉ねぎのみじん切り」の動画を14種類紹介します。
有名な会社から料理研究家までいろいろな切り方を揃えてみました。
どの切り方が美しいか、みなさんも研究してみてください。

はじめにマスターが紹介する動画は、上記の9項目の条件を全て満たしている切り方です。
おそらく世界で一番美しい切り方です。


世界一美しい切り方

下記ページの「玉ねぎのみじん切り」の動画と、その右側にある「紫玉ねぎのみじん切り(スライドさせて見てみてください)」です。
https://www.katabayui.com/kirekata

※スマホの場合は上の動画を左へ2つスワイプしてみてください


では次です。
料理業界の一般的な「みじん切り」です。
最初は業界最大手「ABCクッキングスタジオ」、最後は「ハウス食品」、他にもクックパッドやヤマサ醤油も出てきます。
マスターが簡単に解説するのでじっくり見てみてください。



確認ですが、マスターの目的は、動画の管理者を批判することではありません。
みなさんに本質をお伝えすることが目的です。
それぞれの動画がその会社やその人を表現していると思いながら見ると、一層興味深いはずです。
また、「切り方」の名称には、業界で統一されたものがなく、名前がない切り方さえあります。
そのため以下の動画の解説では、マスターが包丁の使い方を教えるときの呼称になっています。



1:玉ねぎのみじん切り ABCクッキングスタジオ

https://www.youtube.com/watch?v=UaZ8RY57zW0

使っている切り方は以下の4種類です。

・肩の引き切りのような切り方
・横打ち(へぎ切り・まな板と並行に切る作業)
・高圧スライドスイング切り
・スイング切り

ABCクッキングスタジオは、マスターの店のスタッフが「体験」で受講したことがあり、どのぐらいのものかだいたい予想はしていました。

玉ねぎに対して「水平の切り込み(横打ち)」が奥まで入っていません。
上からつぶすような「高圧スライドスイング切り」を使っているので、玉ねぎが広がってしまうのと、涙が出てくると思います。
高圧がかかっていることがわかるのが0:25あたりの映像です。
映像をノーカットで流せないのは、たぶん手際が悪くて見せられないからです。
この動画の演者がABCのスタッフだとしたら、ABCに人材を育てる力がないことや、この動画をチェックできる技術を持った人がいないこともわかります。
それから、この玉ねぎの大きさは「粗みじん」の大きさですから、みじん切りと言ってしまうとウソになります。
料理教室は、生徒さんに信用される表現を使う必要があると思います。

この動画は、「みじん切り」なのに出来上がりは「粗みじん」、そして時間もかかり、基本ができていないスタッフが講師として出ています。
公式動画ですから、ABCクッキングスタジオの実力がわかる内容でした。
マスターの子供たちが将来「ABCで勉強したい」と言ったら、マスターはやめるように説得すると思います。




2:辻料理学園 上級調理師科


https://www.youtube.com/watch?v=dPGAsaLBJSw

使っている切り方は以下の3種類です。
・垂直切り
・横打ち
・スライドスイング切り

使っている包丁は2種類です。
・ぺティーナイフ
・シェフナイフ


この動画は、画像下の説明を見ると、「辻学園調理製菓専門学校上級調理師科」の生徒のものです。
二本の包丁を持ち替えながら、まさに「洋食」という切り方で切っています。
もちろんこの切り方にこだわった試験ならこれでOKです。
しかし実戦でこの切り方だと、遅くて涙が出るので、本質的な切り方ではありません。

玉ねぎ半分を切るのに包丁の持ち替えが3回ありますが、忙しい現場だとしたら、包丁を落とす確率が上がり危険です。
また、二本の包丁を使うということは、一本と比べ、保管場所や研ぎの手間が増えるということです。
シェフナイフでスライドスイング切りをしていますが、これは動きが遅くなるだけでなく、スライド切りと比べて玉ねぎの細胞がつぶれ、涙が出やすくなります。

たとえば車の運転では、教習所内と現実の交通社会では、必要な技術がまるで違うと感じたことがあるはずです。
「公道に出ると、教習所で習ったことが役に立たないことがある」ということです。

料理の世界も同じです。
勉強と実戦では、まるで違うこともたくさんあります。
しかし上記の生徒さんは、玉ねぎのみじん切りをするとき、生涯この方法(学校で教えてもらった方法)を使うかもしれません。
「先生が言っていたから」とか、「お金を払って習った方法だから大切にしたい」という気持ちもあるかもしれません。
ただ、みなさんも見てわかるように、この方法では時間もかかり、安全性も低くバタバタしています。

日本料理の世界でも同じことが言えます。
玉ねぎのみじん切りの方法は、道具と技術の進歩によって変化してきましたが、昔からの技術を教えることで給料をもらっている人や、新しいことを学ぶ気がない先生は、昔ながらの方法を教え続けています。
そしてお金を払って学ぶ生徒たちが「先生が言うんだから」と、その方法に価値を見出してしまうと、昔ながらの方法を後世に伝え続けてしまいます。
特に日本料理の世界はその傾向が強いと思いますが、ひとつ「本音」というか「現実」の話として、おもしろい例があります。
以前、和包丁一式を持っている元職人に、和包丁セットを持参してもらいました。
包丁セットの袋には、4本の和包丁の他に1本のシェフナイフが入っていました。
そして4本の和包丁は、全く手入れされていないものでした。
刃こぼれと錆があり、彼女は「これ全然使ってないんですよ」と言いました。
そして「家では全部これでやってます」と、刃渡り210ミリの片刃のシェフナイフを見せてくれたんです。
実は一番初めに紹介した動画でマスターの弟子が使っている包丁は、片刃のシェフナイフで、彼女の言葉にはマスターも納得しました。
昔、料理人として和包丁を使っていても、仕事以外では片刃のシェフナイフを使うわけです。
「日常生活では和包丁にメリットはない」ということなんですが、まさにそれが本質です。


「新素材・新技術の登場」という時代の流れと共に本質を考えていくと、伝統的な和包丁と最新のシェフナイフでは、日常レベルで考えた時のトータル性能に大きな差があり、和食の職人でもシェフナイフに行き着くわけです。
「和包丁とシェフナイフの違いは、和服と洋服の違いと似ている」と言えばわかりやすいかもしれません。
和服にも優れた面はあると思いますが、今の時代、なぜ和服を着る人が少なくなったか考えれば本質が見えてきます。
価格、手入れの手間、手軽さ、性能・・・これらと似たような理由で、和食の職人もシェフナイフを使うわけです。

話は戻りますが「辻料理学園 上級調理師科」の生徒さんには、最後は自分で考え、より本質的なみじん切りを研究してもらいたいと思います。


3:国際調理製菓専門学校 シェフの実演

https://www.youtube.com/watch?v=WH1q8tqWD3E

専門学校カフェコースの料理の先生の動画です。
多くの人とカメラの前でトークと実演ができる度胸は素晴らしいですが、それ以外、特に目立ったものはありません。

使っている切り方は以下の2種類です。
・垂直切り
・スライドスイング切り

使っている包丁も2種類です。
・ぺティーナイフ
・シェフナイフ


洋食系のシェフなので、上の辻料理学園の動画と同様、包丁を持ち替え、洋食系の切り方をやっています。
包丁の持ち替えと、垂直切りとスライドスイング切りを使うので、時間がかかり、涙も出ます。
また、この動画では、玉ねぎが手に付いてしまったり、広がってしまったりしているのと、ABCクッキングスタジオ同様、みじん切りの作業を最後まで見せてくれないことが問題だと思います。
やはり細かい部分の仕上げで手間取っているため、編集でカットしていると思われます。


4:意外と知らない!?野菜の切り方 基本10選


https://www.youtube.com/watch?v=O_oI2kEZLIo

開始後、0:20あたりが「玉ねぎのみじん切りのようなもの」です。
これは明らかに素人の人が切っていて、見ていておもしろかったです。
ダイソーで買える「GALAXY」という100円の包丁を使っているので、普段から包丁を使わない人だということや、撮影のために買ってきただけだということがわかります。
明るい音楽と映像があれば、なんとなくそれっぽくできますが、やっていることは「玉ねぎのみじん切り」と言えるものではありません。
他の野菜を切る映像もトマトが潰れていたりして、ある意味ドキドキする映像でした。




5:oignon hacher オニオンアッシェ動画

https://www.youtube.com/watch?v=dW4BdSO0Ius

包丁を二本使っています。

切り方は以下の4種類です。
・垂直切り
・横打ち
・肩の引き切り
・二度打ち

手際が良くて思い切りが良く、プロっぽい切り方ですが、美しいとは言えません。
涙の原因になりやすい「肩の引き切り」を使っています。
また、さらに涙の一番の原因になる「二度打ち」で切っています。
「二度打ち」とは、一度みじん切りにした玉ねぎを、もう一度上から叩くように切っていく方法です。
具体的には、動画の0:57からが二度打ちです。
また、二度打ちのとき、玉ねぎを集めるために左手の手のひらを使っていますから、これでは広範囲にニオイが移ります。
さらに包丁の刃をほぼ直角にまな板に当てたまま玉ねぎを寄せている(刃の横移動をしている)ので、包丁の刃とまな板の消耗が多くなります。
作業の量と比較して音が大きいです。
あと、これでは時間がかかります。
トータルで評価すると、使う包丁2本、切り方4種類、涙が出る、包丁とまな板が減る、手にニオイが移る、作業が遅いなど、いろいろな意味で本質的ではない切り方です。




6:◆◆美しく分かりやすい映像で学ぶ料理の基本◆◆
たまねぎのみじん切り 

https://www.youtube.com/watch?v=SoPwiIS93E8&t=3s

映像は美しいですが、細かいところでもったいない動画です。
包丁は一本ですから合理的ですし、切った玉ねぎの「刃離れ」が良いタイプの包丁(ディンプル系)だというのも好感が持てます。
しかし「垂直切り」を使って切っているので玉ねぎの細胞が壊れやすく、さらに「二度打ち」をしているため、涙が出やすい切り方です。
最後まで見せてくれるのはありがたいですが、やはり最後の処理がうまくできず、作業が遅くなっています。
また、手にニオイもつき、まな板上で刃の横移動もしていて、刃とまな板が減ります。
最後に名前が出るフードスタイリストの「北館明美」さんが切っているとしたら、この人は「本質」の探求にはあまり興味がないような気がします。
細かい技術が伴うといいですね。




7:料理の基本レッスン 玉ねぎのみじん切り

https://www.youtube.com/watch?v=GRA_wsmK8TY

実はこのシリーズはことごとく「ズッコケ系」の動画なので、マスターは「お笑い」としてお気に入りです。

包丁は1本だけなのでOKです。

切り方は以下の3種類を使っています。
・垂直切り
・横打ち
・二度打ち

皮を剥くところから「手際が悪い・ピントが合っていない・フレームから出てしまう」など、お笑い要素満載です。
ほとんど意味のない部分に横打ちを入れたり、あまりに時間がかかるため編集で早送りを使ったりしています。
最後は、芯も一緒に切ってしまって、それをつまんで取り除いています。
刃の横移動も使っていますし、ひとつひとつに手際が悪く、お笑いとして見るとおもしろいです。
この動画をアップする理由がなんなのか、少し気になります。




8:玉ねぎみじん切り早技

https://www.youtube.com/watch?v=lXTXFjyGqYc

暗い映像ですが、興味深い内容です。

このみじん切りは、全体としては美しくないです。
しかしマスターが初めに紹介した弟子の動画に共通する「切り方(芯を手前にして切る方法)」があり、共感できる部分もあります。
これは薄刃包丁のアゴ(かかと)の部分の高さがあるからできる切り方ですが、涙が出る「垂直切り」を使っていることと、ムダが多いこと、まな板の上が散らかるなど、印象はあまり美しい部類ではありません。
横打ちをする場所がほとんど意味がない場所だったり、二度打ちをしたり、音が大きいこと、そして刃の横移動を使うことなどの短所などがありますが、本人が「邪道切り」と自ら書いているところが好印象でした。
邪道切りとわかっているならOKです。
0:28の横打ちの場面では「斜め下に切ることで、親指を切る確率を下げます」と言っていますが、これは親指を切ることが前提となった言い方ですよね。
つまり、横打ちは危険なんです。
マスターの弟子は横打ちを使わず、スライド切りだけで切るので安全です。
ちなみにマスターは1万個以上切ってきましたが、親指をケガしたことはありません。
横打ちをしないからです。



9:たまねぎ微塵切りを100倍早く切る方法


https://www.youtube.com/watch?v=JPIVd3g0-ig

包丁は一本なのでいいと思います。
使っている切り方は以下です。

・手首の引き切りのようなもの
・横打ち
・垂直切り
・スイング切り
・スライド切り

横打ち(動画0:32~)をする範囲が少なく、これではほとんど意味がありません。
玉ねぎの奥の方まで刃が入れば意味があると言えますが、おそらく10ミリ程度しか刃が入っていないので、むしろやらない方がいいと言えるかもしれません。
彼はなぜ玉ねぎに対して横打ちをするのか知らないような気もします。
まな板の上で刃の横移動もやっていますから、包丁とまな板を大切にしているとは言えません。
出来上がりが「粗みじん切り」ですから、このぐらいはプロとして当然のスピードです。
そして・・・結局「粗みじん」を実演しただけで、「100倍早く切る方法」は教えてくれませんでしたね・・・
動画は70秒でした。
もしこれが100倍早い切り方なら、通常は7000秒、つまり2時間かけてみじん切りをするということになります。
「3倍早く切る方法」の方が良かったかもしれません。




10:【シェフの裏ワザ】超速!楽々~玉ねぎのみじん切り


https://www.youtube.com/watch?v=0z0id4QAwU4&t=39s

この動画は一番本質に近いと思います。
一本の包丁で切っていることも好印象です。

この方法は、「包丁のアゴの部分を上げて切る(玉ねぎを全部切らない)」
という部分で、「世界一美しい切り方」と考え方が同じです。
一本の包丁で一種類の切り方はOKですが、洗練されている切り方とは言えません。
玉ねぎの根の部分を残していないので、最後にバラバラになってしまい、バラバラになった玉ねぎの処理に時間がかかっています。
2:08からの作業は「スピード感」はありますが、よく見ると、20ミリ以上の大きさのみじん切りもあり、粗みじんと呼ぶこともできません。
結局みじん切りにするために「二度打ち」という作業をすることになるので手間がかかってしまい、時間が必要になります。
作業全体としてはいいリズムですが、玉ねぎの飛び散りなどのバタつき感が否めず、「洗練されていない」という雰囲気が残ります。




11:簡単、確実。散らない、広がらない。玉ねぎのみじん切りのやり方

https://www.youtube.com/watch?v=pcCVurXZ_NM

上の10の動画と同じで、この動画の考え方も、マスターが紹介した方法を取り入れています。
しかし、最初からまな板の上が散らかっています・・・
根を残しておけば、この動画のような切り方をしなくても、より合理的な切り方ができます。
最後の処理に手間がかかりすぎるため、全体としては参考にできない内容だと思います。
(長い動画ですが、興味がある人は見てください)
考え方は間違えていないんです、しかし、いろいろな意味で残念な切り方です。




12:逆転の発想★簡単玉ねぎのみじん切り★ クックパッド

https://cookpad.com/recipe/1791019

メジャーな会社「クックパッド」ならきっと・・・と期待したくなりますが、美しい切り方ではありません。

包丁を持ち替えず「一本だけ使う」というのは、現実的な家庭レベルで考えてくれているので好印象です。

使っている切り方は以下の2種類です。
・垂直切り
・スライド切り

この切り方でもみじん切りはきれいにできますが、最後の処理に手間がかかり、結果的に遅くなることは明らかです。
この動画はクックパッドのロゴが入った公認の動画です。
「クックパッドどうした?!」というのがマスターの感想です。
ただ、動画に出演している人は比較的上手です。
スライド切りがうまくできているので安心して見ていられました。


13:みじん切り ヤマサ醤油

https://www.youtube.com/watch?v=Yz0lMdmMLvA&t=181s

3:26から玉ネギのみじん切りです。
使っている包丁は一本です。
切り方は以下の2種類です。
・垂直切り
・高圧スライド切り

「ヤマサ醤油」という有名な会社の動画です。
「高圧スライド切り」で切ると玉ねぎがつぶれて広がってしまうんですが、彼の切り方だと後半でその状態になります。
そして、後半どうなるか見ていたところ、やっぱりカットされていましたね。
しかもみじん切りを集める時に「刃の横移動」をやっていたので、刃とまな板が傷みます。
切った食材を、包丁の刃を使って集める時は、包丁を寝かして集めるか、包丁の背を使って集めれば刃を傷めずに集めることができます。
全体的に仕事に慣れていると言えますが、「講師」ではなく、「主婦歴が長い人」の仕事を見ている感覚でした。





14:みじん切り 【まずはここから!|料理の基本】


https://www.youtube.com/watch?v=d9S4z8fLVyg

ハウス食品の動画です。
包丁の持ち替えがなく、一見美しく見える動画です。
ただ、よくあるように「最後まで見せてくれない編集」になっています。
包丁はどちらかと言えば良く切れる部類で、好印象です。

まず冒頭で、玉ねぎの根がついたまま、根を下にして切っていますが、
切った直後のまな板の上を見てみてください。
乾いた根で散らかってしまい、これを取り除くのに時間がかかります。
この時点でアウトです(0:30の映像)。

次に、みじん切りに入る前に根の部分を取り除いているので、最後になって玉ねぎがバラバラになり、処理に手間取ります。
「玉ねぎのみじん切り」の動画で、最後まで見せてくれずに途中で終わるのは、この「最後の処理」に手間取るのが理由です。


この動画は、世の中の仕組みがわかるおもしろい動画です。
動画では、冒頭に、「みじん切りは1~2ミリ」と紹介しています。
そして少し大きめのは3~4ミリで「粗みじん」と紹介しています。
動画はみじん切りの紹介ですから、1~2ミリのものができるのかと思ったら、でき上がったものは、3~4ミリ平均に見えます。
中には10ミリ前後のものも混ざっています。
本来紹介するなら、「粗みじん」と紹介するべきところですが、「みじん切り」と紹介しています。


さらにおもしろいのは、みじん切りの紹介をした後、1:13あたりから
「もっと細かくしたい場合は(二度打ちをしましょう)」と文字が出てきますが、1~2ミリの大きさの玉ねぎを二度打ちを使ってさらに細かくすると、おそらくクリーム状になってしまいます。
0.5~1ミリのみじん切りなんてね。
ですから動画にふさわしいタイトルは、玉ねぎの「粗みじん切り」ということになります。
ハウス食品というメジャーな企業でもこんなミスが出てしまうのは、「動画を作る人と文字を入れる人が同一人物ではない」「現場で担当者同士の連携がとれていない」「最終チェックを本物のプロがやっていない」ということです。


実は世に出ている多くの動画で、実際の大きさや太さと、数字には差があります。
ほとんどが、「1ミリで切ります」と言っても実際に映っているものは「太いもの・厚いもの」になっています。



以上、14種類の動画を見ていただいたところで、もう一度初めに紹介した動画(玉ねぎのみじん切り)を見てみてください。

https://www.katabayui.com/kirekata


繰り返しますが、今回マスターが紹介した動画のみじん切りには、
以下の特徴があります。

1:安全なこと(1種類の切り方しか使わない)

2:作業が早いこと

3:作業の音が静かなこと(スライド切り)

4:まな板の上で散らからない(集めやすい)

5:涙が出にくいこと(スライド切りだけで切るから)

6:まな板や包丁が減りにくいこと(衝撃が少ないから)

7:手にニオイが付きにくいこと(左指の先だけ)

8:一本の包丁でできること

9:一種類の切り方でできること

一本の包丁と一種類の切り方で、本質的な玉ねぎのみじん切りができるんです。


改めて見てみると、この動画の切り方なら、多くの条件で高得点になることがわかると思います。
ところで、マスターが紹介した「美しいみじん切り」は、誰が切っていると思いますか?
ABCクッキングスタジオの講師より上手なのは言うまでもなく、料理専門学校の先生や、玉ねぎのみじん切りの動画をYouTubeにアップしているどの料理人より上手です。


実は、マスターの弟子(30代女性)なんです。
マスターは料理教室の看板を出していませんから、彼女は、料理教室に通う生徒でもなく、卒業生でもありません。
マスターの店に修行に来る前は、事務職員でした。
料理専門学校の卒業生でもなく、料理の先生でもなく、調理師でもなく、なんの肩書きもないただの素人です。
しかし、マスターの指導で包丁の使い方を練習した結果、ここまでの技術を身につけました。
今では、調理師や包丁メーカーの社員にも、包丁の使い方を教えられるまでになりました。



◎本質は商業とは別の場所にある


マスターは冒頭で、以下のように書きましたよね。


「本質は商業とは別の場所にあります」
「最後は自分で考えて本質に近づいてください」



初めに紹介した玉ねぎのみじん切りが、「本質に近い切り方」だということは、おそらく他の動画を見ながら検証すれば明らかです。
しかし、まだ世の中のほぼ全ての人が、昔の方法で切っています。
その理由は、「お金を払って学ぶ」という「商業の世界」では、先生は新しいことができず、伝統的な切り方しか教えないため、生徒たちは新しい切り方を知ることはできないからです。
つまり、「料理教室に行くと、新しいことが学べない」ということです。


マスターの店で勉強中の弟子が手に入れた技術は、言ってみれば、プロの世界では手に入らない「新技術」です。


「プロの世界でも手に入らない新技術を手に入れたということは、彼女はどれだけ大金を払ったんだろう」


なんて思いますか?


なるべく安全に、ムリをせず段階を踏みながら、マスターがつきっきりで教えるマンツーマンの個人指導です。


そのお値段は・・・


なんと・・・


タダ、です。



以前書きましたが、人類を家族だと考えたとき、娘に知恵を伝えてお金をもらう親はいませんよね。
若い人が知恵を受け継ぎ、それをさらに後世に伝え、みんなが一歩でも幸せに近づけるなら、それがなによりです。


しかし、マスターが教えたことが完全なはずはありませんから、彼女は自分の力で今の技術をさらに成熟させ、より本質に近づく努力をする必要があります。
その努力が、「愛する努力」です。


商業の世界だと、教える側は、お金を得ることが目的になってしまい、受け継がれてきたことをそのまま伝えるだけの役割を演じてしまうんです。
ですから、あなたがあなた自身で考え、新しい物を生み出し、本質に近づこうとするなら、商業の世界から離れた場所で、愛をベースに考える必要があります。
「愛のようなもの」を売り買いする「商業の世界」で右往左往しても、愛は決して手に入りません。


人間が欲しいものは「愛」、そして、愛は商業とは別の世界にあります。
お金を出して買うのではなく、自分で考え抜き、知恵を使って得るものです。
今回紹介した「玉ねぎのみじん切り」は、そのことをわかりやすく見せてくれたと思います。


◎提案


ここで、主に包丁を使うプロのみなさんに提案です。
みなさんも「世界一美しい玉ねぎのみじん切り」を取り入れてみませんか?
玉ねぎのみじん切りは、日本で一番ニーズがある切り方です。
できるようになると、みんなが料理を楽しめます。
興味がある人は、マスターにメッセージください。


マスターが提案する玉ねぎのみじん切りの方法は、「最新」です。
つまり、初めに紹介した9項目を全て満たしている切り方で、これ以上合理的な方法は、今のところありません。
ちまたの方法は、昔の人が開発した昔の方法です。
通信手段が黒電話からスマホに移行したのに、包丁の使い方が黒電話の時代のままなんてヘンですよね。
玉ねぎのみじん切りも、進化させてください。



◎まとめ


マスターの弟子の動画には手だけしか映っていませんが、その手から、楽しく切っていることが伝わってくるでしょうか。
料理は、苦しみながらやるものではありません。
それは、自分が食材の立場、そして食べる側の立場になってみれば、よくわかるはずです。

マスターは、「料理に愛をこめるにはどうすればいいか・・・」、常にこう考えながら厨房に立っています。
玉ねぎのみじん切りに限らず、食材を切る作業は、いつも楽しんでいます。
切る練習をすると、切るのがどんどん楽しくなっていくんです。


さて、みなさんは、「練習をすればどんどん楽しくなっていく」という感覚を、勉強やスポーツで体験したことがあると思います。


それと同じように、「生きる練習」をすれば・・・

そうなんです、生きるのがどんどん楽しくなっていくんです。


「生きる練習」というのは、日々の小さな愛の積み重ねです。

元気に挨拶をする

お礼を言う

否定的なことを言わない

体臭や口臭に気をつける

など、身近なところからでいいんです。
そして「自分に愛をそそぐ」ということを実践していけば、生きる練習は順調に進みます。


「生きる練習」をせず、ただ「つまらない」と嘆いているだけでは、人生はそのまま過ぎてしまいます。
包丁の練習では、もちろん手を切ることもあります。
でもそれはひと回り大きく成長するチャンスでもあります。
手を切ってしまったからといって、そこで練習をやめてしまったら、その先にある楽しみは味わえませんよね。



◎おまけ:包丁の使い方(?)


これは文部科学省の、包丁の使い方の教育ビデオです。
https://www.youtube.com/watch?v=O8Kf-puzCTU


ツッコミどころは10箇所以上ありますが、中でもおもしろいのは、「指の形に関する文字の表記と映像が違うこと(3:20)」と「輪切りの紹介で、半月切りを実演していること(3:42)」です。

これはちょっと異常事態です。

プロのみなさんにとって、この動画は、「子供が安全に料理を楽しめる」と言えないと思いますが、包丁の使い方に関する文部科学省の認識はこの程度なんです。
原因は、おそらく包丁を使える人材がいないのと、映像の下請け製作会社が利益を優先し、プロを雇わなかったことなど、関係者それぞれにプロ意識がなかったことだと思います。

・・・これも社会の仕組みのひとつですけどね。
国は「本質の追求」よりも、行政と番組製作会社との癒着だったり、ビデオの審査官のレベルを審査する機関がなかったりと、その場しのぎで仕事をしていることがよくわかると思います。
みんなストレスが溜まって、目先の収入が欲しいんでしょうか。


大人たちが自分の幸せに責任を持ち、子供たちの安全や未来のことを真剣に考えるようになれば、こんなビデオはなくなるはずです。


以上です。
長い投稿を最後までありがとうございました。

・・・

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