21歳冬、東京-13


彼が東京を離れて9ヶ月。

毎日のようにLINEをして、時にはテレビ電話を繋ぐ。

サークルにバイトに講義。東京での毎日が忙しく過ぎていくさなか、ふと、1200kmの距離を想ってたまらなくなることがあった。

そんな時は巣鴨の歩道橋に行って、日が暮れるまで彼が暮らす九州の方向を眺めていた。もしくは彼と二人で、色付く楓をみた芝公園のベンチに座って道ゆく人を眺めていた。また1ヶ月したら会える。あっという間よ、きっとすぐ過ぎる。そう言い聞かせて月日が過ぎるのを指折り数えてまっていた。



彼が赴任地で迎える、初めての冬だった。

海の上の空港。

冬の風吹き荒ぶ曇天のもと、早朝の空港に降り立った私を、その日は珍しく彼が車で迎えにきてくれた。

車に乗り込むと、後ろの席に置かれた包みに目が止まった。そういえば明後日は私の誕生日だった。


「開けていい?」

彼に聞くと、ちょっと苦笑しながら「いいよ。」と答えてくれた。


プレゼントは素敵な紫のラップトップだった。

「就活で使うでしょ?ゼミの時パソコン動かないって言ってたからさ、欲しがってたし」

サラリと彼は言ったが、決して安いものではない。

「毎月の飛行機代だって、割り勘とはいえだいぶん負担かけちゃってるし。バイト週5もいれてさ、、いつもありがとうって思ってるよ。」


嬉しくて、ちょっぴり泣きそうだった。


巣鴨の駅を出て彼と何度も買い物に行ったスーパーで一人買い物をするたび、三田駅の改札を出て地上に上がりキャンパスまでの道のりを歩くたび、彼のいなくなった中庭で一人ぼんやり空を見上げるたび。

寂しさで擦り切れそうになるのを誤魔化しながら、たまらない気持ちに蓋をしてバイトに行き、ゼミに行き、サークルに行って忙しさでみないふりをしながら、毎日を過ごしていた。


就職で私が九州に戻るまで、あと15ヶ月。

その先の暮らしに思いを馳せて、過ごしていた日々だった。



夜は彼が腕によりをかけてごはんを振る舞ってくれた。


そういえば、一年前の付き合い始めた日も彼のお手製のごはんをご馳走になったのだった。そんなに料理をしない彼の数少ないレパートリーのひとつ、おくらとツナのチャーハン。不思議な取り合わせだが、あっさりとしてクセになる、思い出の味だった。


夜は布団にくるまりながら、久しぶりにたくさんの話をした。12月に解禁になった就活のこと。九州に帰ろうと思っていること。遠距離が始まると同時に始めた彼の働く業界でのアルバイトのこと。面白く感じて、就活でも同じ業界を受けようと思ったこと・・・


彼がうんうんと聞いてくれるのが嬉しくて、たくさんたくさん喋った。この日の彼は、言葉少なだった。


思えばこの時から徐々に亀裂は広がっていっていたのかもしれない。














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