20歳秋、東京-12
彼の心が悲鳴をあげたのは、秋のことだった。
家の様子、彼の肌の調子。
仕事がうまく行っていないのは、そしてその状況が改善することなく追い詰められているのは、彼の家に行くたびに感じていた。
私にできることはただ、彼の話を聞くことだけだった。
彼の家に行ったある日、車に乗って福岡まで足を伸ばしたことがあった。高速を駆けぬける途中で、紅葉が始まっている山が目に入り、その鮮やかな紅が目に焼き付いた。
彼と喧嘩になったのは、その帰り道だった。
仕事がうまく行っていないこと。辞めたいこと。東京に戻りたいこと。普段穏やかな彼が突然激昂したのに驚いたことを覚えている。
彼はその頃から、私が訪ねて行っても布団から出てこないことが多くなった。
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