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トラウマ治療の壁 その1 (沖縄 臨床心理士 EMDR)

最近、Twitterでいろんな方と交流させていただく中で、

「ちゃんとしたトラウマ治療につながることが、いかに大変なことか」
ということをしみじみ感じてます。

トラウマケアをちゃんと受けたい、と思う人に立ちはだかる壁について、
専門家サイドの視点から、いくつか書いてみたいと思いました。

Twitter的な文体でポストしてみます。


1、情報がない


トラウマケアに関する情報は、思ったより知られていません。
今知っている人は、一体どこで知ったんだろう?とたまに思います。
そもそもトラウマという切り口から物事を見る「視点」自体を
もっている人が世間には少数派だと思います。


トラウマインフォームドな視点で見れるよ、ということを知らない場合、多くの人はどうやってそれを見てるか?と考えれば、既存の疾患概念で見ているわけです。
ADHD、双極性障害(Ⅱ型)、うつ状態、境界性パーソナリティ障がい、統合失調感情障害などがよく該当します。


実際にそれの人もいるかもしれませんが、
得てしてトラウマの人はこれらの中に埋もれます。(症状が被っているから。)


すでに診断名として確定していると、
それ以上のことは本人も支援者も想定しなくなるので、
スタンダードな診療の中で治療にあたることになり、
トラウマケアの道は基本的に見失われます。

これがよくある第一の壁です。


2、心理士の中でもトラウマケアはメインストリームではない


これも困った問題。
心理士という生き物は、基本的に自分の心理療法学派にのっとって仕事をしています。精神分析、認知行動療法、クライエント中心療法、家族療法、解決志向アプローチ…等々。

いろんな生態系と棲み分け(?)があります。

「こころの問題がなぜ生まれてくるのか?」についての見解は学派によってぶっちゃけ異なり、「トラウマ」の扱われ方もまったく違います。
トラウマはない、って言い切るところもあります。(アドラーとか)
心は目に見えないため、すべては99.9%仮説なのです。。

(だから研究が大事です。)


臨床心理学系大学院でも、よほどトラウマケアについて詳しいゼミ(研究室)に入らない限り、大半は知らないまま修士修了です。
多くは自分の関心ある学派について学んだ状態で院を出ます。

そして臨床現場に入って、
必要性を感じた人がトラウマケアについて学び始めていく
(そしてそれすらも一つの学派に過ぎない)感じです。


トラウマや愛着・解離はある意味一番難しいテーマである一方で、実際この国の相談現場で出会う人はそういう方のほうが大半です。
こころの育ちの基礎が阻害された人たちの支援についてまずは
学んで行かないといけないのが、本当は筋だと思います

この国は色んな意味で、地面の底が抜けているのです。。

教育は特定の学派によらずバランスよく教えるところでないといけない…
でも、今の教育の中での限界として、

この第2の壁があるように見えます。


3、トラウマを診れるDr.は少ない


医療機関でトラウマを診てほしい、と思った場合も、似たような現象に出会います。つまり、トラウマに対する見方はその医師の治療方針によってもさまざまであるということ。

精神科医の方々のトレーニングで覚えることは膨大だと思います。日本のスタンダードな精神科診療は、診察、薬物処方、社会的支援(環境調整)が主です。
そこにトラウマ治療(あるいは家族療法)をプラスαする方としない方は方針によって差があります。

(特に精神科において「家族力動」の視点は、ぽっかり抜け落ちています)

カウンセリングは診療報酬外で行われるため、各病院の裁量によります。(独自の有料設定してる所も。)よほど心理支援に力を入れているところであればそれがありますが、ぶっちゃけ業界の雰囲気的には少ないです。


それは臨床心理士が経営に貢献しにくい職種であるのも関与していて、ぶっちゃけ貢献できるのは心理検査くらい。なので心理士を雇うことは、病院にとって必ずしもプラスにはならない。(検査に忙殺されている心理士もいる)


そんなわけで医療機関の枠組みでの治療は薬物治療が主軸であり、カウンセリングは積極的に用いられてきたわけではありません。「現状、医療機関はカウンセリングを受けるための機関として機能しているところはすごく少ないと思います。」

と私がいうのはそういうわけです。

これが壁その3。

まだまだ壁はあるのですが、残りは次回に回します。

ここまでのまとめ


書いてみて思ったのですが、

2、心理士でもトラウマの対応について知らない人もいる
3、トラウマを診れるDr.は少ない

の2つから導かれる結論は、

トラウマケアが必要な人が、既存の治療の中に埋もれてしまうと、

「なんとなくQOLは上がったけど、
 体調的には完全にスッキリしない日々がつづく」

点にあり、それは

・傾聴中心のカウンセリング
・薬物治療

ではトラウマに起因する精神症状は完全にはよくはならない、ためです。

そして完全にはよくならない、ということを知るためには、

1、情報がない

をクリアする必要があります。

これが構造的な観点からみた、この国の
「トラウマケアの壁」だと思われます。


壁は厚い…。

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