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悪魔の返し階段

人生には色んな気づきがある
でもその気づきが、いつも正しいとは限らないようだ

ここは、とある占いの館
この一角に人間嫌いの占い師がいる
人に好かれることを拒んでいる割には、熱狂的なファンによって人気者になった
今日も人生に迷い、自分の考えが正しいか聞きに来た客が一人・・・

占い師:『こんにちは。私はあなたから、名前、生年月日、血液型は一切聞きません。けれど、あなたの人生における考え方を注意深く聞いていきます。今日はどんなご相談で?』

客人 :『はい。人生というか、仕事の話なんですが・・・職場仲間にことごとく期待を裏切られるんです。私は課長という立場上、部下に仕事を振ることも多いです。そんなに、多く頼んだつもりはないのですが、途中でできないと投げ出されてしまいます。本当に困ったときは能力の高い人がたまたま私の部下になり、どうにか助かってきました。でも安定した頃に、その人は会社を辞めると言い出すんです。そうすると、他の人までやめてもらっては困ると思い、他の部下に本音も言えません。本当は部下にしてもらいたい仕事があるけれど、それを我慢して、自分がすることもあります。そして、この繰り返しがずっと続いています。最近は、なんだか苦しくなってきました』

占い師:『一つ聞いてもいいですか?能力の高い人が現れたときに、あなたは助かると言っていましたね。もう少し具体的に教えてもらえませんか?』

客人 :『そうですね、私は”あぁ、私は期待する人を間違えたんだ、最初からこういう人がいれば良かった”ですかね』

占い師:『そうですか。非常に言いにくいのですが、実はその道、悪魔の返し階段なんですよ。”あの人に期待する”というのが、そもそものトリックなんです』

客人 :『トリック?』

占い師:『”あの”もそうだし、”人”もそうだし、”期待する”だってトリックです。今からちょっと説明が長くなりますがお時間よろしいですか?』

客人 :『はい』

占い師:『まず、人間はよほど強い意識を持って生きない限りは、人のせいにして生きています。最初から、自分に起こったすべてのことが自分のせいだと思いません。子供だって言うでしょ?”○○ちゃんがやった”とか”僕のせいじゃないもん”とか。人のせいにする道は、子供でも見つけやすい、大きくて行きやすい道です。自分のせいじゃないと言い張っているうちは、この道のど真ん中を歩いています。この道の真ん中にある必要条件がありますが、なんだか分かりますか?』

客人 :『いいえ、見当もつきません』

占い師:『それが、”自分以外のものに期待をする”というものです。人によっては、”運命”であったり、”時代”というような形のないものもあります。今回のあなたは、ここが”人”ということですね。あの人に期待をしている限り、この道から外れることはできません。でも数回だけあなたは、脇道にそれたんですよ。あなたは気づいていますか?』

客人 :『・・・う~ん、違う人に期待したときですか?』

占い師:『いいえ、違います。この人に期待をしたらいけなかったと思ったときに、脇道に一時的にそれたんです。期待をして裏切られたと言っていましたよね、まさにその時ですよ』

客人 :『あぁ、あのときか・・・』

占い師:『この脇道の始まりは、自分のせいにする道の分岐点とも言えます。だから、脇道にそれたばかりのところには、色んな条件がひっついています。①この②人③期待ですね。もう少しこの脇道を進むと、小さい条件からはずれていきます。この場合ですと、①このですね。”この人に期待したらいけないんだ”⇒”人に期待したらいけないんだ”となります。さらに進むと、②人という条件がはずれます。そうすると、”期待をしたらいけないんだ”となります。でもこの道をストレートに歩ませてはくれません』

客人 :『えっ?』

占い師:『脇道にそれて、この人に期待をしたらいけなかったと思えたあなたですが、一時的にそれただけになってしまった。元の道に戻ってしまったんです。いつ戻ったと思いますか?』

客人 :『えーっと、ああ、そうか。期待する人を間違えただけだと思ったときだ』

占い師:『そうです。目の前に能力の高い人が現れ、あなたはその人に期待し始めた。しかも自分が困っていたときだから、とても期待したことでしょう。これが、悪魔の返し階段なのです。簡単に、期待しない道に行かせてはくれません。人に期待している間は、ある意味で人のせいにできます。よく聞きませんか?”やってくれると思ってたのに・・・”とか”何であなたは、○○できないの?あー、がっかり”とか。自分の行動でいけないところはなかったかの確認もせず、周りに期待ばかりしている・・・ねぇ』

客人 :『・・・(笑)』

占い師:『この”人のせいにする道”は進めば進むほど癖がついて、苦しくなっていきます。一時的には逃げられますが、ずーっと何かに期待しなくてはなりません。現にあなたは苦しがっている。もう終わりにするときが来ています』

客人 :『期待する人を間違えただけって、あれ嘘っぱちなんだ・・・』

占い師:『補足ですが、悪魔の返し階段は、”自分のせいにする道”を進めば進むほど、数が少なくなってきます。簡単に戻れなくなり、その分心は楽になります。一度経験するといいですよ、私の言っていることが分かるはずですから』




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