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世界を助けるために、神が出来る唯一の方法(劇画 教祖物語を読んで その2)

 神のやしろとして、神に貰い受けられ、神が入り込んだ「中山みき」さんは、家事や育児を放り出し、蔵に閉じこもり、なにやら神と対話するようになる。
 家族や親族は、訝しく思うのだが、神に差し上げたのだから・・・と、一応は見守ることになる。
 あの加持祈祷の最中に、神が憑依した場面を目撃し、神と問答した結果、みきを神に差し上げると、答えた人々は、一応は、納得していたのは、うなずける。
 けれど、「中山みき」さん御本人は、どのように納得していたのだろうか?

 正気に戻ったときに、「お前は、神にもらわれたのだ」と聞かされた筈である。その時、中山みきさんは、何を思ったのだろうか?

 その一つの答えとして、神が入り込む前の、過去の話が、描かれている。
 当時、中山家の近所で、子供が生まれても、みな亡くなってしまった家があり、その家に新たに生まれた子を、中山家で預かって世話をすることになった。
 ところが、その子が、病にかかり、死にそうになってしまう。

 そこで、中山みきさんは、近所の神社にお百度参りをして、願うのだが、その内容が凄まじいのだ。
 我が娘の命、2人と、それでも足らねば、自分の命と引換えに、助けてほしい、と。

 すると、奇跡的に、その子は、一命をとりとめたのだ。
 だが、中山みきさんの娘が1人亡くなり、また新たに生まれた娘も亡くなってしまう。つまり、娘2人が神に召されたのだ。約束通りに。
 当然、中山みきさんは、次は、自分の番だと覚悟していた筈なのだ。

 そこへ、加持祈祷の後、正気に戻ったときに、「お前は、神にもらわれることになった」と告げられたのである。
 中山みきさんは、自分から、神様に願い出たことでもあり、命を取られる覚悟をしていたのであるから、素直に聞き入れたのではないだろうか?

 そして、神の思し召すままに、蔵に閉じこもって、神と対話をするようになった。それまでは、良き妻、良き母であった女性が、家事も育児も、放り出して、神の言うことを第一に聞くように、変わってしまったのだ。

 では、中山みきさんは、蔵にこもり、神と、どんな対話をしたのだろうか?
神の目的、人間の目的、これまでの神のしてきたこと、これからどのように世界を助けていくか、神の計画、人間の役割、などなど、詳しい話がされたはずである。中山みきさんが、理解して納得しない限り、神様の仕事は進まないのだから。

 だが、残念ながら、それは、物語中に描かれていない。おそらく正確に伝承されていないのだろう。中山みきさんから、話を聞かされたとしても、当時の人には、理解しきれなかったのだと思う。理解出来ないことは、記憶にも残り難いし、伝承もされ難い。

 他の伝承によると、神にもらわれたのは、中山みきさん個人ではなく、中山家の住人だという説もある。
 だったとしても、この時点で、神との対話で、神の話を理解し、覚悟を決めたのは、中山みきさん独りだったのだろう。

 こうして、中山みきさんは、お一人で、神の道を歩み始めることになるのである。
中山みきさんの歩みを見て、この神の道こそ、人の道なのだと、気づいてもらう以外に、世界を助ける方法がなかったのである。

 中山みきさんに、それ以外の方法がなかったのではない。全知全能の神に、それ以外の方法がなかったのである。ただの農家の主婦1人に、頼るしかなかったのである、最高最強の神が。
 
 人間が納得しなければ、強引には何も出来ない、という神の弱点故に。

 子供たちの感想。
 「娘の命や自分の命をあげるなんて、そんな約束しちゃだめ」
 まっとうな意見です、娘たち。人を助けるためとは言え、そういう酷い考え方、酷い方法しか、人間は知らなかったのです。
 何も知らないで、酷い考え方や、酷い方法の中で、苦しむ人間を、助けるために、神は現れたのでしょう。
 世界を助けるために、天下った、と言っているのですから。
いったい、どのように、世界を助けるのか? 続きを読み進んでいきましょう。

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