アンチエイジングと若作り

 理容室なんて所に久々行って来ましてね。
 驚きましたのがオプションサービスの充実振りで、元々毛染めってのはありましたけど白髪染めですとか白髪ぼかしなんてのが追加されてましたり、ヘッドスパやらヘアケア……モイスチャーって、そんなにモイスチャーしたけりゃ日頃からラックスだのパンテーンだののシャンプーとコンディショナー使っとけッちゅ~話でね。あッ!おカミさんのをコッソリ…は駄目ですよ×結構お高目ですから声、ひっくり返るぐらいガチ切れされますし、人によっては離婚問題に発展するかもしれませんから。

 しかし総じて感じますのがエエ歳のオヤジ向けな“若作り”サービスが盛んになっとるな、と。
 ま、自発的にやりたいって方は否定しませんが、世の中全部がそっちへ向かわないと『意識が低い』からの『だらしない』と見做される風潮は如何なもんかな?とは思うんですよ。
 歳を取れば誰でも白髪が増えたり、もしくは“げ~は~”になるんですから。それはある意味今まで生きてきた履歴書であり【生き様】と言って良い訳ですのでね。
 白髪染めだのぼかすだのってのは、じゃあこれまでの自分の生き様を否定しとるのか?と。
 でも頭髪の白髪を隠したとて、白髪なんて体毛全てに生えますのでね。白髪染めてちょっとでもモテたとて、いざとなったらチ○毛は真っ白け!……オネエちゃんもどっ白けですわな。
 とは言えチ○毛は染めるったって…じゃあいっそ女性のようにツルツルに脱毛するか?となりますと、まだまだ“戦力”になる時のツルツルチ○コはなかなかシュールですよ(汗)
 ま、お相手の女性がどう思うかはともかく、自分で自分の“戦力ビンビン物語”を見下ろした時はね。

 どうも『カッコいい大人』ってものの判断基準が実年齢よりも若く見える事に歪曲されてやしませんか?
 例えばの話、昭和の大スター石原裕次郎さんや菅原文太さん、高倉健さんや藤竜也さんというのは年齢を重ねる毎にそれを誤魔化すのではなく、年齢を重ねた分だけ哀愁や悲哀、強さや渋さを身にまとって魅力を加えていった、正に『加齢』だった訳です。
 『昭和残侠伝』が年齢を重ねて『幸福の黄色いハンカチ』となり、さらに深みを加えて『鉄道(ポッポ)屋』の駅長さんになる訳です。
 五十、六十になってまで若い振りして切った張ったちゃ~今日の“高倉健伝説”には到達せんのですよ。
 年齢を重ねるというのは年齢なりに色んなものを抱え込み、背負い込みして重みを増していくことであって、その伝で言うなら若いというのは『軽い』という事になります。
 軽い大人はカッコいいですかね?

 定着したからなのか飽きられて消え去ったのかは知りませんが、かつて“美魔女”がブームになりましたけど今はめっきり耳にしなくなりましたわね?

 まずは実年齢よりかなり若く見える事が大前提で「美容法?エクササイズ?…私、何にもしてないんです~」が定型文と言いますかキーワード。
 つまり、そういった努力や摂生など何もしてないのにその若見えの容姿は奇跡的であり、まるで魔法にかかっているかのようだ…………で『美魔女』と称された訳です。
 まぁ、息巻いてグラビアやらテレビ出演などされてましたが、総じて全身フルショットかせいぜいバストショット(胸から頭までの画角)止まりで顔面のみの所謂ドアップというのは無かった気がしますし、スタジオだと専用ライトで、屋外だとレフ板で光をガンガンに当ててシワをとばしていたのは目玉のテカり具合で丸分かりでしたからね。
 美魔女とは中高年女性を指しておりましたから、試しに10年20年後の彼女達で同じようなグラビアを撮ってみると分かります。
 それでも同じ容姿を保っているなら、それはOPEッてた……石油輸出国機構の略じゃありませんよ!……という事です。確かに御本人は「何にもしてないんです~」だったでしょ。麻酔打たれてされるがままだった訳ですからね。ま、手術代(←あッ!)の工面には奔走したでしょうけれど。

 白鳥は優雅に水面を漂っているように見えて、水面下ではジャン(打鐘)後の競輪選手ぐらいの勢いで水を掻いている、と言います。
 タネの無い手品や超魔術なんてものが無いように、努力も対価も発生させずに若さや美を保つ秘訣なんてものも無いんです。

 加齢に抗うのでは無く、それに応じた立ち居振る舞いを工夫し楽しむ方が魅力的だし、むしろ若々しく見える気がします。


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