『子持ち様』論
少子化というのは先進国を中心に世界的トレンドになっている訳ですけれど、この“悪い流れ”を何とか止めなくてはならない、というんで『少子化対策』が喫緊の課題と言われてますがね。
これに類似した流れというのは明治時代にありまして、歴史の授業で習いましたでしょ?
【富国強兵】~産めよ増やせよ~
この時は江戸時代を経てこれからは世界と渡り合わないといけない、それには産業にしろ軍事にしろ人手がいる、というんで多産が推奨された訳です。
しかし、今の時代にこれをそのまま踏襲して良いのか?となりますとね。
冒頭でも述べましたように少子化は世界的トレンドです。
まして今の時代は何でもIT化され、効率化が求められている。
それは人口減少を見据えたればこそのトレンドかもしれませんが、でもそれを踏まえるならば言い方はアレですけど、
量より質
を考えないといかん気がするんです。
明治時代と違って人数さえ増やせば良い訳でも……
勿論、地方の人口減少であるとか、農業・漁業・林業の担い手不足が深刻だ、という事で人口増の必要性はありますけれど。
例えば地方の人口減少は東京一極集中の弊害が主な原因とされておりますから、これを政界・経済界が本気で取り組んで是正すればある程度“平らに均す”事が出来るかも知れませんし、地方の政治改革ももはや革命レベルで行わないといけない瀬戸際に立たされていますわね。
で、今、知識人たちがこぞって唱えてますのは、
「これからは“子持ち様”が肩で風切って歩く時代が来る」
……すなわち、何としても少子化の流れを食い止めなくてはならない事から子供を産み、育てている層が優遇され、珍重され、そして何事にも優先される事で目に見えない“権力”を握る時代になる、と。
しかしね、病院の夜間診療の現場に居りますと、ただ子供を産んで育てる事が正義、ではいかん!と思えて仕方ないんでありますよね。
具体的に例を出しますと、夜中日付も変わろうとする時間帯に、1歳だ2歳だの幼児が家の中を走り回って家具だの建具だのの角に頭をぶつけて「ケガしました、手当てして下さい」と駆け込んで来るケースが滅茶苦茶多い!
お父さん、お母さんの事をまとめて【保護者】と言いますわね?
これは、子供というのは自己管理が出来ないし、自分で自分の体調を推し量る経験値が乏しいから、親がキチンとフォローし、本人に代わって調節管理をしてあげなくてはならない、という意味で【保護者】なんです。
放っておけば、身体は眠気で一杯なのに、本人は嬉しいとか楽しいとかのテンションに騙されて家の中を走り回る。けれども意識や運動機能は眠気に負けているから障害物を避けるとか立ち止まるなどの基本的自己防衛動作が出来なくなっている。結果としてケガをする。
同様な事例としては、今の時代、小学校低学年でも授業中に居眠りをする子が多い、といいます。一時期はマスコミにも取り上げられるほど問題視されていましたが、もはやそれが定番化してしまって騒がれなくなってますがね。
これらは本来、親が無理矢理にでも毎日決まった時間に寝かせる事で生活リズムと言いますか、睡眠習慣を根付かせてあげなくちゃいけない話なんです。
また、整形外科の先生が当直を担当する夜には【肘内障】の患者さんがやたらに多いんですが、主に10歳未満のお子さんによる肘の脱臼症状の事ですけれど。
多い原因は、お父さんがお子さんと遊んであげる際に「高い高い」を……普通はウエストの辺りか脇の下辺りを持ってやってあげるんですが、それを腕を持ってぶら下げる形でやりました、と。
或いは、お母さんが愚図ってるお子さんに苛立って「はやく来なさい!」と言って、感情にまかせて力加減無しでお子さんの手を引っ張った、と。
お子さんというのは大人に比べて骨が弱く、肩や肘の関節だって【ルーズ・ジョイント】なんですから、考えているより簡単にズレたり外れたりしますんでね。
私が思いますに、お子さんの勉強も勿論大事ですが、今時の『親』の教育も大事だと。
ところが、最近はこの親世代が自分達の親御さんから子育てに関して意見されたり、子供の親としての振る舞いを注意されたりしますと、
「もう孫の顔を見させないから!」
と逆ギレや脅しをかけられたりする、なんて話をよく聞きます。
名前の付け方からも感じますが、お子さんを『自分の所有物』と見做している親が多いんじゃないですかね?
子供の育て方、ある程度成長するまでに気をつけておくべきポイント、親としての有り様なんてのはネットや活字ではなかなか学べない……何故ならそれらはあくまで“他人事”なので結果責任がとれないものですからね……もので、親から子への伝承を代々受け継いでそれを次代へ繋ぎつつ、時代時代でアップグレードしていくものだと思うんですよ。
子供を大切に、正しく次の時代へ送り出してやる為には親の質を向上させる事こそ喫緊の課題なんじゃありませんかね?
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