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感情とは体の反応でもある〜感情ケアプログラム的、武術講座メモ

手の組み方で「感情」が変わった

先日、武術研究家の甲野善紀先生の講座で、こんな場面がありました。

私の目の前に先生が立たれました。そして、
「耐えてね」
というと、いきなり木刀を振りおろしたのです。
ぎゃ、っと声を上げる間もなく、目をつぶり、両手を掲げて、顔を背けた私。
もちろん、木刀は寸止め。

次に、先生は
「では今度は、こうして手を組んでみてね」
と、私の両手の指を、ある型に組ませました。

再現すると、こんな感じ(※注意!…12/14画像差し替えました。指の向きが間違っていました)

そして、手を組む私に向かって、先生は再び、木刀を振り下ろしました。
今度は、私は手を組んだまま微動だにせず、ただ静かに立っていました。
「えー」「なんで?」
見守っていた周囲の参加者たちからも驚きの声。

「今、全然、平気でした。何が起こったんですか?」
きっと愚問なのだろうと思いつつも、たまらず私は尋ねました。
先生はひょうひょうとした様子で、
感情っていうのは、思っている以上に”体の反応”なんだよね。この手の組み方をすると、横隔膜が広がって、恐怖心が薄れるんだよ」

手の組み方は、先生が考案された技の一つで、「蓮の蕾」という、なんとも雅な名前が付けられているそうです(詳しくは甲野善紀先生の公式Xなどを検索されてみてくださいね)。

感情とは体の反応!
「おお。それって、感情ケアプログラムやないかーい」
個人的な好奇心から、たまたま講座に参加していた私は、膝を打つような思いでした。

心と体を一瞬でセットにするのが「感情」

感情が、体の反応でもあることは、どなたでも、わりとすぐイメージできると思います。

例えば、私たちは悲しい時、涙を流して泣いてしまいますよね。
また、激しく怒った時は、カーッと頭に血がのぼり、大声を出したり、ドンドンと机を叩きたくなったり、モノを投げたくなったりします。

なぜ、感情が発生すると、このような体の反応が出るのでしょうか?

そのわけを、「下園理論」ではおなじみですが、今、私たちは全員「原始人」だと思って考えてみてください。

まず、悲しい時に泣いてしまうのは、涙が「救援信号」だから。
その人が今弱っていることを、周囲にお知らせして助けてもらうためです。涙を見た人は、本能的に、助けの手を差し伸べてくれるでしょう。その人にとっても、今仲間が一人でも減ることは、種族として弱くなり、自分も生き残る可能性が低くなるからです。

また怒った時に大きな声が出たり、破壊行為に及んだりしてしまうのは、相手(敵)を威嚇するため。
威嚇は自分を大きく見せることができて、相手を撃退してくれます。
ロクな武器もなく、体一つで戦わなくてはいけない時代に、怒りの感情が、私たちを勇敢な「戦闘モード」にしてくれたのです。

このように、「感情」とは、弱い自分、弱い人類を守って、生き延びていくためのサバイバル本能でした。

言い方を変えると、感情とは、心と体を「非常体勢」に一瞬でセットしてくれる本能のシステムだった、ともいえるのです。

理性で感情を制するのは、かなり無茶な戦い

心と体を一瞬でセットにしてくれるのが感情。
ならば、体からアプローチして、そのセットをゆるめる(=感情をゆるめる)というやり方も有効なわけです。

例えば、シンプルなところでは「深呼吸」。

「もう目覚まし時計をいつまで鳴らしているの?! 自分で起きなさいっ」
とは、今朝の私ですが、朝から怒鳴り散らしても、決していいことはありません。
そこで、カッーとくる前に一呼吸。
たちまちイライラがおさまるわけでは「絶対に」ありませんが、少しだけピークをそらすことがやりやすくなります。
世に呼吸法はいろいろありますが、感情ケアプログラムでは、わざと複雑な手順にした独自の呼吸法なども学びます。

さらに、トラウマや不安、恐怖心などに使えるのが「ツボ療法(ETF)」。決められた手順で指の腹をもう一方の手の指でトントンと叩いていくだけ、という、とても手軽で、不思議なメソッドです。
私も試したことがありますが、触れると痛い心の傷に、薄い「膜」が作られるような感じでした。
この「ツボ療法(ETF)」も、体からアプローチして、感情をゆるめる方法の一つでしょう。

もちろん、感情とはその人のものであり、「これが効く」「これが効かない」は極めて個人差が大きいものです。それでも、自分の感情をどうにかしたいときに、心ではなく「体」からアプローチする方法があるのだ、と知っておくことは、決してソンはないはず。感情の本質を理解するのにも役立ちます。

ちなみに。

世の中には怒りのコントロールとか、アンガーマネジメントなどがあり、感情を理性でコントロールした方がいいような風潮があります。
かくいう私自身も、編集部勤務時代は、
「営業と揉めたとき、怒りと興奮でプルプルしないで、クールに主張できる人になりたい…」
と深いため息、理性的な人にめちゃくちゃ憧れました。

でも、感情のことを知れば知るほど、理性のアンダーコントロール、支配下に置こうとするのは、絶対に無理とは言わないけれど、かなり無茶な戦いを自分に強いているのだとわかります。
ということは、アンガーマネジメントなどを試して、あまりうまくいかないからといって、落ち込むこともないんですね。

今後も、体から感情をゆるめた体験談を含め、少しずつ感情ケアプログラムで学んだことについて、紹介していきます。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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