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祈り~INORI~2018

イノリ…

イノリ…

美しい新緑の5月に産まれた子…。

神に祈ってお腹に宿った子…。





その子の名は

祈 INORI






そんな神様に与えられた男の子は

ある日突然
エナメル上皮腫という病になって

全身麻酔の手術を受けた…。




小さなベッドで私と二人

痛みに耐えながら
何日も夜を過ごしたのです。




そんな入院中のある日のこと

小児科病棟に
マジックをする
不思議なピエロ達が

マジックを子ども達に披露するために

病室を回っているとの事でした。


どうも

病院スタッフの方の
ボランティアだということを

小児科
病棟の
看護士の方からは

耳に
していました。



その頃
祈は

痛みにとても苦しんでいました。


我慢強くて
歯科医からも
驚かれるほどで

取り乱すこともない子どもでした。

そんな祈でも
あまりの激痛に

『痛いよ~痛いよ~』と声を出して
苦しみ始めたのです。

すると
病室を回っていた

ビエロが
祈の寝ている病室まで
やって来ました。

するとそれに気がついた祈は
別人のように

顔つきが変わって
急に
凛としたのです。





マジックと聞いて
目が変わったのです。

笑顔を見せて
ピエロのマジックに真剣でした。




『見ててね!』

そう言って
ピエロは

得意気にいくつかの
マジックを披露してくれました。

祈も
そんなピエロを見つめて

楽しそうです。



ピエロが
マジックを終えて…

実は

祈も
マジックが大好きだと言うことに話の流れでピエロに伝えた後のこと

祈は
たまたま持って来ていた
トランプで
マジックを披露し始めたのです。



ピエロは
何が始まるのか

真剣に祈を見つめていました。

小学校の
低学年ではありますが

手際の良い
トランプマジックに

ピエロは

『エェ―っ!』と

何度も何度も叫んでました。



『ちょっとこの子凄いんだけど!
見てて!凄いんだけど!』



もうピエロは

ピエロでは
なくなって

ピエロの格好をしたお姉さん達が
普通に会話している状態になって

いましたね…。




そんなピエロ達が
感心しながら

病室を出ていった後には

まるでマジックの夢の国から
覚めたように

痛みが現実となってしまいました。



『痛いよ~いたい~』

もがいて苦しむ姿をずっと
傍で

何も出来なくて
悲しくて

今でも
思い出すと悲しくなります。


苦しく悲しかった
思い出のワンシーンは

祈の成長と共に
薄れ行くけれど

大切に心の中に
しまって置いています。



このブログで
初めて
言葉にしました。







2010年5月18日

祈の父親は
重度な
くも膜下出血で
倒れました。


5月19日

次の日は

祈のお誕生日でした。


生死をさ迷う中
必ず生きると信じて

集中治療室から
急いで家に戻り

祈には
内緒にして
みんなでお誕生日をお祝いしました。




お誕生日に

悲しい報せを
することはないと思ったから

中学三年生のお姉ちゃんは
たくさん泣いていたけれど

その日のその時には

頑張って笑顔でキッチンの
お手伝いをしてくれました。



時々
18日には

様々な出来事が起きていた為に
いつも祈っていました。



18日が呪いの様な日になるならば

19日は回復の日とする

いつも心に思っていたのです。



普通ではないと言われるかも
知れませんが

祈ってきて
そう思った事でしたから

命は
神に任せて

その19日だけは
祝福の日としたのです。



今でも
その事は後悔もしていません。

どんな状況であっても

本当は痛くて
悲しくて
苦しいけれど

誰かのしあわせの為に

笑顔になれることを
優先したのなら

決して
神様は

その笑顔を無駄に

見捨ててはおかれないと

信じています…。










イノリ…

イノリ…

新緑の美しい5月に産まれた子

神に祈ってお腹に宿った子…。






あなたのマジックは

そんな
思い出が詰まってる…。






嘆きを
感謝に…

悲しみを
喜びに…

憂いを
優しさへ…。

感謝します…。









~ブルーグレィの教会で~



この記事は
2018年にブログにて掲載した記事です。


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