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【 六月の子守唄】2013 5 22



『母は こうして いつまでもいつまでも

おまえのそばにいてあげるから
大きくおなり、優しくおなり

母はこうして いつまでも

おまえのそばにいてあげよう。
私の愛を忘れずに…

星が ひとつ 空から落ちてきた。
六月の子守唄を、うたう母のもとへ…

六月の子守唄を、うたう母のもとへ…。』

−六月の子守唄−








私は 母の胎から生まれる前から

私を愛して下さる神様に
かたち造られ

私を愛して下さる神様の
ご計画のために生まれた…。

私は幼き頃から
走り回り 神様を探し続けた…。

山に行っては、ヒンヤリとした
樹林達に耳を澄ませ

れんげ畑を駆け回っては
土の匂いに 静まり

流れる雲の影を
何度も飛び越えてみるなら
青く美しい空に祈ったり…

夕暮れの、時報の鐘を聴けば
自分の伸びた影と
夕食の味のする風に

明日も探すよ、と約束したり…

あちこちの神様と
言われる神社にいけば

一人鐘を鳴らして
(あなたが私を愛して
私を造った神様ですか…)

と訊いていたり…

けれど なんの答えもなく
いつも海を眺めていた…。

不思議と海風と遠い水平線を
見ていると…

まだ見えぬ先に
神様は私に必ず
語りかけて下さると

まだ二けたの年齢にもならない
小さな私は信じれた…。

私は
見えない神様が

いつも
そばにいることだけは

自然に触れながら感じていた…。

毎日が楽しかった…。

毎日が神の創造された
自然に囲まれて

本当に幸せだった…。

ところがある日から
毎日おかしな言葉が
私に語りかける…。

ザワザワとして
毎日、毎日、眠れなくて

(でていけ!邪魔をするな!)と

家族一人一人の名前をあげて
神様に守ってくださいと
祈り続けた…。

けれど、願いは虚しく
邪魔されてしまった…。

そうして
何年もの月日が経ち…
私は大人になった…。

まるで無機質の心だった。
神などいないと呟いていた。

何も感じなくなっていて
現実的な眼しかその頃は
持っていなかった…。

私はある日、忘れていたはずの
幼き頃の、そばにいてくれていた神様を思い出した。

私を愛している神様…
私を覚えてくださいと
そう祈り続けた。

するとありとあらゆる
出来事や、出逢いや

そして私の心には
志が起こされて

次々と幼き頃のように探検するよう…
あちこちと道をすすんでいった…

まるで川のように
岩にぶつかったり
雨に打たれたり…
美しい雲を映しだしたり…

だけど、流れは今思えば
導きのようだった…。

すると
どうだろう…

私を愛して下さる 神様が
私に語りかけて
私に存在を教えてくださった…。

その瞬間

私の人生の写真が
バラバラと巻き戻しされて
映しだされた…

私は悲鳴をあげて

何が起きたのか、
しばらく身動きできずにいた
ほどだった。

それはそれは
今までにないくらい
驚かされた…。

私は
とてもとても畏れた…。

そうか…

そうだったのか…

私は
代価を払って買い戻された…

神は私を取り戻すために
十字架で

切なく愛おしいほどの血を
流された…。

そうだったのか…。




その後

三日間泣きつづけた…。

知らなかった…。
知らなかった…。

こんなに近くにいたのに…

私はあの幼き頃の私に
戻っていた…。





『帰りたい…』

いつからか
口癖になっていた言葉が
その日から
呟かなくなった…。

私はすべての神々の
いつのまにか掴む手を離して
別れを告げ

私を愛してやまない神様と
手を繋いだ…。

あの幼き頃から
私を見守って下さった神様に
やっと出逢えた…。

長い長い年月のようだが
それはとても早かった…。

まるで
曲がりくねる川の流れから

知らなかった
広い海に 辿りついたよう…

あの幼き頃に
いつも見ていた海のように

喜びでいっぱいになった…。



あなたに
愛されるために生まれた…

見えない聴こえない
幼き頃の子守唄…

やっと 見つけた。



やっと…。

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