2025年に備える:アジャイルに動き出そう!
AIの時代が到来し、学習と人材開発を担う担当者や責任者は新たな使命を担っている、と言われています。AIが私たちの学び方、働き方、キャリアの描き方を変える中、L&Dは組織の迅速な対応(アジリティ)の必要性に対して中心的な存在であらねばならず、ビジネス・イノベーションと重要なスキルを提供する部門なハズだからです。
皆さんもすでに日常生活の中や、仕事の一部でAIを使っていらっしゃるでしょう。人材開発の場面ではどうでしょうか?皆さん人材開発や研修部門(L&D)が今提供している学習やその環境はどうでしょうか?AIリテラシー教育コースを提供した?DX人材育成コースを提供した?LMSの導入を考えている?スキル定義の推進を始めようと思っている?・・・・・
「ラーニング」の失われた30年?!
先日(2024年11月11日付)リクルートワークスのレポート:リクルートワークス研究所多国間調査「人を大事にする日本型雇用は過去のものだった」|機関誌Works 特集|リクルートワークス研究所 に“OJT”の割合すら、圧倒的に日本が低いこと、そしてそれが従来“OJT”という現場丸投げを「学びの場を提供している」としてきた風習をあぶりだしています。一方、日本においては、「オン・デマンド 動画コース」が盛況。「学習環境の一つ」としては、学習の選択肢を広げるという意味でよいかもしれませんが、その導入目的によっては、組織の人々の学びにはつながりません。「学び」が成立したかは「試聴履歴」だけでは「学習結果」を保証することができないからです。
そのコンテンツの内容を何にどう活かすのか、何が課題でそれから学んだことはどう業務やキャリアパスに活かされているのか、組織として投資をし、提供している側は、その成果や効果をどのようなデータで追っているのでしょうか? 先の“OJT”の例のように、各人に丸投げ状態になっていませんか?
2022年9月に日本語版(筆者翻訳)の「ラーニングデザイン・ハンドブック」(JMAM出版)ラーニングデザイン・ハンドブック - JMAM 日本能率協会マネジメントセンター 「人・組織・経営の変化」を支援するJMAMの書籍 の企業組織におけるラーニングの変遷を次のようにまとめています。
ラーニングの変遷
1800年~1945年 スキルが必要とされる従業員への職場における訓練
1950年~1980年 近代的「ラーニング」の始まり
1998年~2002年 eラーニング、ブレンデッドラーニング
2005年 タレントマネジメント
2010年 継続学習
2017年 デジタルラーニング
The Future インテリジェンス・ラーニング、
AI主導型パーソナライズド・ラーニング
2020年時点で“The Future”と言っていたものが、すでに現実のものになっています。
ブレンデッドラーニング(eラーニングやVideo ・集合研修との組み合わせ)が提唱されてから、すでに四半世紀、タレントマネジメントの考え方で人材育成が始まってから20年が経っています。「デジタルラーニング」は、一部取り入れられているかもしれませんが、今でも「集合研修」または「リアルタイム・オンライン研修」が主役、「自律型学習」のツールとして動画コースやeラーニング・ライブラリーを導入しているということはないでしょうか?業務の在り方も含め多様化が進んでいる今、「パーソナライズド・ラーニング」は、学習効果を高めるためにも重要な条件になりつつあります。誰がどのタイミングで、どのような学習(研修だけではなく、OJTやプロジェクト経験、専門家からの指導なども含め)が必要なのかのニーズを把握、LMSにインプットしていくことが、人材開発部門の重要な役割になってきています。それらのニーズを把握するためのデータの特定する準備はできているでしょうか?
2025年のAIとラーニング
AIとの協働:80対20ルールで戦略や企画を磨く
2024年、生成AIの急速な進化によって、私たち自身の仕事の仕方も変わりました。すでに毎日のようにAIとブレストしている方も多いのではないでしょうか?
しかし、気を付けなければならないこともあります。AIが提供してきた情報が正しいかどうかを判断する力。ルーチンワークや退屈な作業の80パーセントはAIに任せ、事実確認、編集、コンテンツ管理など残りの20パーセントは人間が管理監督する、80対20のルールでAIとの協働をすることが重要と言われています。では、今まで費やしていた80%の作業時間を私たちは、どこに振り向けるのでしょうか? 人々の学習ニーズを把握し、どのような学習環境を整える必要があるのか、どのようなデータを取って組織の人材のケイパビリティーやキャパシティーを確保していくのか、など、今までじっくりと取り組むことができなかった課題に取り組むことができるでしょう。
24年は、プロンプトエンジニアリングを学ぶ必要があると言われていましたが、AIの自然言語による理解が急速に進展している今、25年には、プロンプトを気にする必要すらなくなるだろうと言われています。つまり、AIが大きく仕事に組み込まれる現状は、職場のあちこちで起きている、ということです。
パーソナライズド・ラーニングが標準になる
”5Bold Predictions for AI in 2025 “ というATDのコラムの中で、CHYPER Learningは、次のように言っています:
“パーソナライズされた職場での能力開発が新たな標準となり、画一的な従来の研修は駆逐される” “時代遅れで直線的なトレーニングのアプローチ(しばしば混乱を招き、的外れな)は、関連性のある従来のコースワークと、豊富なインタラクティブな体験を組み合わせたハイブリッドモデルに置き換えられるでしょう。”
2025年の変化に備えるために
上記のような状況をすぐ実現できるかどうかは別としても、また、人材開発部門自体のアジャイル性を大きく高める必要がります。各従業員に対してパーソナライズされた学習をタイムリーに提供する必要性は増しており、AIドリブンなLMSの導入は急務でしょう。
従来の「研修」のブラッシュアップもさることながら、まずは、全従業員の学習ニーズ(年次や役職名で区切った一律研修のニーズやウォンツではなく)を把握し、自分たちの組織にある学習資産の整理と自分たちの業務プロセスや業務マネジメントをしっかりと見える化し、各プロセスにおけるスタンダードの確立をしましょう。属人的になっていた社内研修があるとすれば、そのコンテンツの再デザインやデジタル化も必須です。
人材開発を担う部門において、それを研修コンテンツの作成やプレゼン資料や報告書といった今までの業務の延長上の利便のためにAIを使うのではなく、今こそ、組織の将来に向けてAIとの協働による人材開発の未来とその戦略やワークフローラーニングの改善を考えてみるべき時ではないでしょうか。