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0 残酷なまでに晴れていて、馬鹿みたいに暑い夏の日だった。空の中に君がいた。 六階建てビルの屋上、扉を開けた先、一歩踏み出せば、天に手が届く場所だった。 はじめ、僕は分からなかった。君が風を連れていたから、どこかに行こうとしているんだと思った。だって、下ではなくて、上を見ていたから。わざわざ一番高い塀の上で、見上げていたから。 だから僕が声を出したのは……案外、君と仲良くなりたかっただけなのかもしれない。 君は僕に背を向けているから、顔も、名前も、靡く黒髪が長い理由