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タネを継ぐこと、種苗法のこと


野菜のタネについては農家は考えなくてはならない
それは単に種代が高いとか、どこの種苗会社がいいとか、あの品種は作りやすいとか、そういった類の話ではない

もちろん、お金の話はしないわけにもいかないのでちょっとだけしましょう

種代のはなし

こんにちは。新規就農で今年の春から農業を始めました、こやまです
現在、長野県松本市で多品目野菜を無農薬で作っています
いま畑には40種類以上の野菜が育っています
夏から秋にかけてあと15種くらい播種予定です。そうなると50種以上のタネをまくことになります。
今年の2月に「サカタのタネ」と「タキイ種苗」のオンラインショップで買った種代は合計で28076円でした
ほかにもちょこちょこ種は買っているので3万円以上は間違いないでしょう

来年は畑を今の倍の面積をやるという野望があるので、単純計算で倍の種代がかかると予想されます
種代がある程度かかるのは仕方ないとして、やはり自営業者として、かかる経費というのは抑えたいものです

そして、幸いなことに野菜というのは実をつけて種がとれますから、自分で種を採れば種代がかからない!ということになります

自家採種はいいことだらけ

自分で種を採ることを自家採種といいます
トマトやピーマンなんかはわかりやすいように、野菜は種をつけますのでそれを次の年に蒔けばいいわけです
自家採種は難しくありません
実が熟した頃に野菜をとって種を採ればいいのです
ピーマンやキュウリは人間が食べるものは未熟果てすので、食べ頃よりも畑においといて熟させてから取ります
葉物野菜も収穫をせずに畑に置いとくと花が咲いて種が採れます

自家採種のメリットは種が土地や風土を記憶することだといわれます
寒い所なら「寒さ」を、暑い地域なら「暑さ」を。粘土質や礫質などの土壌の記録を、野菜が記憶してその土地に合った野菜になっていくということです

すこし言い換えると、その土地に適応した個体の形質が選抜されていくのでその土地に合った野菜が代々とできていくということです

その土地に適応した野菜というのは病気になりにくいとか、味が濃いとか、肥料が要らないとかいろいろ言われますが、市販とタネと比べたときにナチュラルであるといことは言えると思います

あと、確実なメリットとしては種代が節約出来るということです

自家採種のデメリット、F1種との比較

畑に合った野菜がそだって、種代が節約出来るなんて農家にとってはいいことばかりじゃないか!
いますぐ自家採種をして、来期から全て自家採種に切り替えよう!!!

と、言いたくなりますが自家採種も良いことばかりではありません

まず、現在市場で見かけるタネの多くは種苗会社の販売するF1と呼ばれるタネです

自家採種したタネとF1種のタネを比べると
F1のほうが
・育生が揃う
・生長が早い
・育てやすい
・病気になりにくい
・美味しい(一般的に)

となります
こうなるとF1種の完全勝利ともいえるでしょう


いや、ちょっと待てと
さっき自家採種した野菜は病気になりにくいとか美味しいとか言ってただろう!矛盾してるじゃないか!!

となる気持ちもわかります
が、F1種というのはそういうものなんです
実際、市場に出回っている野菜のほとんどはF1の野菜です

多くの農家が選んでF1を育てている

F1が優れている

そういうことなんです

F 1種がどうして優れていたり、使いやすいかについては今後記事にしていきたいと思っています


種苗法の改正と農家

2020年に種苗法の改正がありました
少し話題にもなったので、知っている人も多いかもしれませんが
その内容はざっくり言うと、農家に対しても種や苗の業としての繁殖を制限するというものです

この説明はかなりざっくりしていますが
最近こんなニュースがありました


このさつまいもの件。でもそうですが、インターネット上には前々からこういった問題がありました
ここで言われているのは、サツマイモの登録品種の無断に販売についてです 
さっきもう少し説明しましたが、種苗法では農家であっても種や苗の増殖を禁止しています
禁止言ってもそれはあくまでも登録品種に関してのことで、全ての野菜についてではありません

登録品種というものは種苗会社が開発した品種のことで登録を受けているものになります

カネコ種苗HP

このように®がついた品種名やPVPというマークがついています
こうした野菜はたとえ農家であっても種を取ったり、苗で増やしたりすることはできません
それが種苗法の改正でした

お米やさつまいもやイチゴや園芸の花などによくあります

ただ、全ての野菜が登録品種というわけではありません
一般にミニトマトやきゅうりなすなどは登録品種ではない品種も多くあります
それは昔から園芸店で種を見るような品種などは登録品種ではないことが多いです

つまり種苗法の改正
種取りができない
農家が潰れる

といった安直なことではないということです
むしろ、種苗法をの改正は種苗会社の種の権利を守るということになります
そうすることで種苗会社がタネを作れることになります
農家としても種苗会社が種を作ってくれないと大変困るわけですから種苗法改正は必要だったと思います

海外への種の流出も懸念されることなので、その辺も種苗法の改正でいい感じになっているんだと思います
この辺はちょっと詳しくはわかりません


あと、種苗法では家庭菜園での種取りや増殖に関しては禁止していないので、趣味で野菜を使っている方などは今後も種を取っても大丈夫っぽいです


結論。僕はタネを採る

ということで、種苗法があろうがなかろうが種を取れる野菜もあるわけです
そういった野菜を選んで使えばいいわけですので
僕は種を取って来年になったらその種をまく
ようなスタイルで農家をやっていきたいと思います

もちろん購入するタネを使うと思います
種取りできる範囲で自分で種を取り
その他の部分は種苗会社さんからタネを買う

そんな農家になりたいと思いました
これは薹立ちしたレタスです

この後、花が咲き種がつきます
来年はさらに美味しいレタスになってくれることを祈りながら種を取ろうと思っています


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