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「死んでいった人間の数」2024年3月8日の日記(後編)

・前編があります。


・ブラボーの噴水の最下層にはちゃんと手をもがれた巨人もいる。

・出かける前にホステルの市税€9を払う。現金は空港で5000円かけて下ろした€20札1枚しか持っていなかった。ホストも€6しか持っていなかった。偶然ダイニングに居合わせた紳士が€5札を出してくれて、私はめでたく€11のお釣りを受け取れた。


・まずは聖母大聖堂へ行く。フランダースの犬でネロとパトラッシュが息を引き取る協会だ。ホステルから15分も歩けば到着した。

ルーベンス像と大聖堂

・そのとてつもない大きさ、高さに驚く。14世紀とか15世紀とかにこんな高い建物を作れる技術があったのかと途方に暮れる。

・大聖堂の中に入るには€12のチケットが必要だ。公式サイト等での事前購入はできないが、クレジットカードは使える。もちろんNFC決済も対応している。

・建物内はもうよほど現代の人間の手が入って、美術館のように様々の絵や彫刻が展示されていて、大聖堂本来の荘厳さみたいなものはかなり弱かった。シンプルな感動によって写真を撮る気持ちにはとてもなれなくて、なんか面白いと思ったものの写真だけ撮ってきた。

宇野亞喜良の描く少女っぽい4人組
蒲の穂?を持つキリスト像
ガラスの茨冠

・しかし床一面に敷かれた墓標のようなもの、ステンドグラス、数々の聖人の彫刻、あちこちに描かれた大勢の人間の姿。それらを見ると、これまでに生まれて、そして死んでいった人間の数の膨大さを思わずにはいられなかった。

R.I.P.とあるから多分墓標的なものだ
D.O.M.って何だろう?調べても違うものばかり出てくる


・イエスキリストも、マリアも、キリストの弟子も聖人も、伝説の通りに生まれて伝説の通りのことを為して、伝説の通りに死んでいったかどうかはわからない。でも、その伝説の基となった人物らは確かに生きて死んでいったはずなのだ。床の墓標に記された昔の偉い人の名前、その陰で何千、何万もの名前の残らない人間が死んでいったのだ。

・大聖堂の建築にしたって、あんなにでかくて高いものを作って一人の命も失われないということはまずないだろう。きっと何人も落っこちているし、落ちてきた部品が当たっている。事故がなくとも、建造中に病気で亡くなった大工もいるかもしれない。最後まで無事でいても、大聖堂の建築に携わった人間はもう全員死んでいるのだ。今、地球上に人類が何十億人といて、その全員がいつかは必ず死ぬのだと考えると足がすくんでくる。

・大聖堂内の「平和のために祈ってください」とあう看板の置かれたスペースを見て、ふん、よく言うよ、と思ってしまった。

・ブラボーの噴水とアントウェルペン市庁舎は聖母大聖堂からほど近くて、それらを軽く見てからフラームスオペラの近くのショッピングモールに行く。モールの地下にデレーゼという大きなスーパーがあって、そこであらかたのお土産を買おうと画策していた。

・いかにもベルギー土産っぽいチョコレートでも買おうかなと考えていたのだが、ロータスクッキーの「じゃない方」、つまりクッキー(=スペキュロス)以外の焼き菓子が目について、ワッフルやマドレーヌを買った。さらにデレーゼのPBのスペキュロスもあったので、個包装ではないが興味本位で買ってみた。あとはビールの小瓶を4本。デュヴェルのIPAやトンゲルローのトリペル、あとCORNETという名前の謎ビールを含む。そして数日分の食料となるチョコチップ入りのパン。見たことのない黄色のプチトマトのような果物。後で調べると、これは食用ほおずきであった。ナス科なので、まさにトマトの仲間ではある。甘みはあるが、それ以上に酸味が鋭く、ひとりで一気に1パック食べるような代物ではなかった。

・デレーゼには日本のスーパーと同じようなセルフレジがある。英語表示もできるので会話の必要がない。会計が終わったら、出口でレシートに印刷されたバーコードをスキャンするとゲートが開いて出られる。

・しかしこのセルフレジには「マイバッグ設置タイム」…商品登録の前にマイバッグを設置してください、というアナウンスがなく、いきなり商品登録画面に移る。マイバッグを開くタイミングを失ったまま全商品をスキャンし、会計が全部終わってから商品を袋に詰めるという要領悪々しぐさをする羽目になった。

・この時点で夕方の4時とか5時になっていた。機内の朝食以降何も食べていなかったが、空腹より疲労が先行したのと、とにかく機内食の量が多かったのとで、とても何か食べる気にはなれなかった。トラムを使いつつまっすぐホステルへ帰り、ダイニングで一人もそもそと食用ほおずきを食べ、次の日の準備をして寝た。

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