DePINとNym： プライバシーのための分散型物理インフラネットワーク
分散化が可能にする未来のプライベート・インターネット
DePINは、最近Web3で注目されている新しいコンセプトです。このブログ記事では、そのコンセプトと業界全体で共鳴している理由の一部を説明します。見ていくように、DePINモデルはプライバシーの提供に特に効果的です！
DePINは、「Decentralized Physical Infrastructure Networks」の略であり、コミュニティによって運営される実世界のインフラを指します。このモデルは、ブロックチェーン技術を用いて分散化を実現することで、従来のWeb2.0プラットフォームとは異なります。
Nym mixnetは、オンライン活動のトラフィックを安全かつプライベートにルーティングするDePINです。mixnetは、Dapps、ウォレット、ブロックチェーン、またはアプリ（NymVPNを含む）からのオンライントラフィックに対するオーバーレイプライバシーネットワークとして機能します。Nym DePINは、世界中の成長する分散コミュニティによって運営されています。DePINモデルは、アンリンカビリティなどのプライバシー特性を実現するため、特にプライバシーインフラに適しています。
オンラインプライバシーを向上させるDePINモデルの仕組みに入る前に、まずDePINとは何か、そしてWeb2.0からよく知られているプラットフォームとは根本的にどのように異なるかについて説明しましょう。
Decentralized Physical Infrastructure Networks（DePINs）とは何ですか？
DePINは、2つの要素、つまり分散型の独立したオペレータのネットワーク（ピアツーピアまたはP2Pネットワーク）とブロックチェーン技術に基づくサービス提供インフラです。これらを結びつけるものは、トークンエコノミクスプロトコル（暗号通貨のtokenomics）であり、良いサービス提供をインセンティブ化し、報酬を与えます。
DePINコンセプトは最近注目されていますが、実際にはブロックチェーン技術の初期段階から存在しており、2014年のアルトコインの全盛期に多くのプロジェクトが登場しました。初期のDePINプロジェクトには、分散型ストレージのためのSwarmやFilecoin、Wifi接続のためのHelium、分散型エネルギー生産のためのSolarcoinやProsume、そして最近では機械学習コンピューティングのためのBitTensor, Akash, Theta,Gensynなどがあります。これらは一握りの例に過ぎません！
DePINシステムがどのように機能し、なぜ今注目されているかをより簡単に理解するために、よく知られているWeb2.0プラットフォームがどのように運営されているかを考えてみましょう。
Web2.0の（中央集権的な）物理インフラネットワーク
独立した供給業者を一つのプラットフォームに集めてサービスを提供するというアイデアは、完全に新しいものでも、Web3に固有のものでもありません。これはWeb2.0のビジネスモデルの中心にあったものです。AirBnBのような場所を提供し、それを貸し出し可能な空きスペースのネットワークを形成する人々や、Uberを通じてタクシーサービスを提供する人々などを思い浮かべてください。そして、AWS（Amazon Web Services）のようなサービスもこのモードの一部です。これらのプラットフォームは、車庫に置かれた車や空いている部屋、または分散型コンピュータリソースやデータセンター（通称「cloud」）など、分散型の物理リソースとサービスを利用可能にします。
もちろん、これらのプラットフォームの成功は、プライベートホテルや組合タクシー会社など、従来のサービスを圧倒することを意味しました。しかし、その結果、従来の中央集権的なモデルに逆戻りすることになりました。DePINプロジェクトの目標は、価値、ガバナンス、所有権のレベルで完全な分散化を実現することでした。そして、それはブロックチェーンやトークンエコノミクスを活用することで実現できます。
ブロックチェーン技術が次の分散化の時代を解放するという考え方は、2008年のビットコインの発明の直後に広まりました。Web2.0プラットフォームのモデルは、誰もが自分自身のクリエイター、ベンダー（売り手）、プロバイダーになることで皆を力付けると約束していました。しかし、実際には、本当の勝者はプラットフォームそれ自体でした：このオンライン活動のすべての価値は、私たちが今日知っているビッグテックプラットフォーム（Google、Facebook、Amazon、Uber、AirBnB）に集中していました。
中央集権的なインフラの問題
Web2.0プラットフォームは確かに、以前は活性化されていなかった人々のより広いネットワークに力を与えました。しかし、その経済的な中央集権化は、その真の革命的ポテンシャルを損なってしまいました。この現象は、「シェアリングエコノミーの失敗（the failure of the sharing economy.）」と呼ばれています。
Uberのようなプラットフォームでは、物理リソース（車）を持つ人がサービス（乗車）を提供することができますが、プラットフォームがサービスを中央集権的に収益化する方法はまったく新しいものではありません。個々のプロバイダーはサービスに対する支払いを受け取りますが、これらは最終的には中央のプラットフォームが収益と手数料を差し引いた後に割り当てるものです。結局のところ、プラットフォームモデルは、利益を中央集権化する方法でありながら、リスクをサービスプロバイダーに分散する手段であることが証明されました。モノポリーは避けられない結果です。
分散テクノロジーは、この中央集権的な経済モデルを改善できるでしょうか？また、サービスシステムを可能にする仕事をする人々により多くを提供できるようになるのでしょうか？
DePINのフライホイール
これらのよく知られている2.0プラットフォームと新しい3.0 DePINの主な違いは、トークンエコノミクスモデルがどのようにして価値の公平な分配を実現するか、もっと言えば、ソリューションの中心に真の分散化の所有権をエンコードするかどうかです。
DePINのフライホイール効果は、これを達成しようとします。分散的な資産とパワーを集める力は既にAirBnBやAWSなどのプラットフォームで明らかになっています。これらは一般の人々に未使用のリソースから利益を得させ、ビジネスには規模の経済とカバレッジの利益をもたらします。しかし、良いトークンエコノミクス設計によれば、分散コミュニティの貢献者は共同企業の平等なパートナーに成長することができます。彼らが貢献すればするほど、彼らは利益を得ることができるのです。Uberのようなものでは、Uberの総利益ではなく、運転した時間からしか利益を得ることができません。 コミュニティへの貢献はDePINのフライホイールの原動力となり、完全な所有権がエコシステムに分配される「Exit to community」の可能性につながります。
DePINのフライホイールを駆動するのは、単なる技術的な特徴やアーキテクチャだけではありません。まず第一に、ビジョンとプロトコルの共同採用です。DePINは、コミュニティがこのビジョンの価値を認識し、それを自分たちのものとして受け入れ、それに投資し、さらなる熱意を生み出すことができる場合にのみ成功します。この共同の努力なしに、さらなる投資や資本は流れてくることはありません。
その後、プロトコルとトークンエコノミクスが立ち上がり、インフラオペレータとサービスプロバイダが強力なオペレータコミュニティを形成するために集まります。そして、DePINが完全に運用された後、エンドユーザーが提供される効用とサービスを最大限に活用できるように、アプリ、Dapps、およびその他のサービスのエコシステムが構築されます。これにより、価値がネットワークに還元されます。要するに、DePINのフライホイールは、コミュニティによって駆動され、プロトコルを通じて調整され、良いトークンエコノミクス設計によって報酬が与えられます。
これは、すべてが分散化され、DePINとして実行されるべきだということなのでしょうか？この問題については意見が分かれていますが、一つ確かなことが言えます：分散化は真のオンラインプライバシーを可能にするために重要な機能を果たします。そしてこれが、Nym mixnetがステージを成熟させ、Dappsやアプリに対して、NymVPNがプライバシーDePINで最初の商用アプリとして実行される段階に到達した理由です。
DePINをプライバシーに最適化する
デジタルプライバシーとセキュリティは、誰にとっても現実的な問題です。私たちの生活がますますデジタル化するにつれ、人々や企業、機関は監視やサイバー攻撃、セキュリティ侵害の危険にさらされることになるのです。
実際、分散化、したがってDePINモデルは、これらのリスクのいくつかに対する優れた解決策です。その理由は次のとおりです：今日の最大のプライバシー問題の一つは、インターネットトラフィックの追跡可能性（traceability）です。トラフィックがデバイスを離れると、それはインターネット上で追跡され、訪れているウェブサイト、チャットしている相手、または使用しているサービスに関連付けられる可能性があります。これにより、望ましくない監視者があなたのアイデンティティをオンライン活動（ブラウジング、チャット、ショッピングなど）にリンクすることができます。これにより、自分自身について、収入、人間関係、さらには心理状態に関する非常に機密性の高い情報が明らかにされる可能性があります。デバイスの内外を行き来するトラフィックの内容が暗号化されていても、トラフィックの頻度や送信者と受信者の間のリンクの可能性は、内容自体と同じくらいの情報を明らかにする可能性があります。
分散化は、アンリンカビリティ（unlinkability）を確保するための鍵です。Nym mixnet DePINを使用すると、インターネットトラフィックがあなたのデバイスから中央サーバーとサービスプロバイダーに送信される代わりに、世界中のノードをバウンドしてトラフィックが行き来します。これらのノードはあなたのトラフィックを他の人々のトラフィックと混ぜ合わせ(mixする)、トレースできなくします。インターネット上でトラフィックが取るパスを分散化し、データをミックスすることにより、オンライン習慣のリンクを解除することができます。これは、真のプライバシーとセキュリティを実現するために分散化が特に効果的であることを意味します。この方程式にトークンエコノミクスを加えることで、ネットワーク全体の経済的持続可能性を確保しつつ、品質と規模にインセンティブを与えることができるDePINを手に入れることができるのです。
真のオンラインプライバシーには集合的な解決策が必要です。効果的に身を隠すためにルーティングとミキシング・サービスを提供する独立したサービス・プロバイダーの大規模なネットワークが必要です。トラフィックのルーティングにNymのプライバシーDePINを利用するアプリ、Dapps、ウォレット、サービスが増え始めると、より多くの価値がオペレーターに流れ、ネットワークがスケールし、すべての人のセキュリティとプライバシーが向上します。Nym DePINのトークンエコノミクスデザインは、それによって好循環のフライホイールとなるのです。
NymのプライバシーDePINの仕組み
NymのプライバシーDePINは、インターネットトラフィックの監視という普遍的な問題に対する集合的な解決策です。これは、2つのネットワークのユニークな組み合わせです：NyxというL1ブロックチェーンがNym mixnetスマートコントラクトを実行し、アプリやDappsからのユーザートラフィックを保護するルーティングとミキシングサービスを提供するNym mixnetそれ自体です。
Nym mixnet上で実行されるアプリ（近日公開予定のNymVPNを含む）は、エンドユーザーに強力なプライバシー保護を提供できます。ユーザーのデバイスからトラフィックが送信されると、それはSphinx暗号化でラップされます。その後、世界中の異なる場所にある5つのノードを通ってパケットごとにミックスされます。各パケットは異なる経路を取り、各ノードは次に送信する場所のみを知っています。データパケットが最終的に到着すると、それは最初の送信者にリンクされません。これにより、mixnetは、ユーザーのIPアドレス、メタデータ、およびその他の識別可能なパターンに強力な保護を提供します。
Nym mixnetによって、ユーザートラフィックがリンクできなくなり、セキュリティが確保されます。関連のないノードまたはサーバーの分散ネットワークを介してユーザーデータを分散することにより、外部の監視、メタデータの漏洩、およびハッキングの可能性が大幅に低減されます。これは、中央サーバーへの攻撃や単一障害点を排除することによって達成されます。
Nymのフライホイール
Nym mixnetフライホイールのトークンエコノミクス設計は、善行に対して報酬を与える徳行のサイクルとして設計されています：オペレーターはNYMトークンを「bond」してネットワークに参加します。これは初期の評価スコア（reputation score）として機能します。NYMトークンを保持している任意の人は、良好なパフォーマンスを発揮しているノードに追加のトークンをステークし、そのノードのオペレーター報酬の一部を受け取ることができます。
良好なパフォーマンスを示すノードは、報酬をより多く獲得する傾向があるのです。つまり、優れたパフォーマンスをするノードにステークする人々には経済的インセンティブがあります。アプリがプライバシーDePIN上で実行されるようになると、ユーザー料金の一部がオペレーターとdelegatorに支払われます。ユーザーがネットワークを利用するために支払う金額が増えれば、その価値がサービスプロバイダーやエコシステムに還元されます。このようなステークホルダーの立場は、より良いミキシングとルーティングのパフォーマンスを奨励すると同時に、例えばネットワーク速度の高速化によってユーザーの関心を高めることになります。
Nymトークンエコノミクスについてはこちらをご覧ください。
NymのプライバシーDePINのユースケースと主要な技術的特徴
NymプライバシーDePINの主要な特徴は以下の通りです：
分散化（Decentralization）：分散ノードネットワークを活用することで、Nym mixnetは中央権威の不在を確保します。この設計選択は、脆弱な中央ポイントを排除し、ネットワークの耐久性を高めることにより、セキュリティを向上させます。
アンリンカビリティ（Unlinkability）：Nym mixnetはIPアドレスとメタデータを保護し、デフォルトのマルチホップルーティングとブロックチェーンにより、送信者と受信者の間のアンリンカビリティを実現します。
トラフィック分析への抵抗：Nym mixnetは、積極的に通信パターンを観察して情報を推測するトラフィック分析に対抗するよう設計されています。Nym mixnetは、高度な技術を用いて、ネットワークトラフィックを分析しにくくし、ユーザーを特定のトランザクションにリンクする試みを阻止します。
新しいオニオン暗号化：Nym mixnetは、Sphinxパケット形式と匿名クレデンシャルを組み合わせた多層セキュリティアプローチを採用しています。この戦略は、プライバシーインフラの総合的なセキュリティと耐久性を強化し、潜在的な脅威に対する堅牢な保護を提供します。
検閲への抵抗：Nym DePINは、ユーザーに情報にアクセスし、自由に通信する手段を提供することで、検閲への抵抗を支援できます。その分散アーキテクチャは、検閲の試みに対する耐性を確保し、制限のある環境にいる人々のための生命線を提供します。検閲は継続的な駆け引きのゲームですが、それはNymでの継続的なR＆Dのトピックでもあります。
Nym DePINは、一般的な目的のプライバシープラットフォームであるため、その使用事例は非常に広範囲です。ただし、mixnetは、メッセージベースのトラフィックとあらゆる種類のコミュニケーション（メッセージング、電子メールなど）を保護するのに特に効果的です。また、トランジット中の暗号トランザクションやブロックチェーンやロールアップのピアツーピアブロードキャストを保護するのにも非常に効果的です。これにより、MEV攻撃の防止や中央集権的なシーケンサーの検閲リスクを回避するのに役立ちます。
DePIN：Exit to community？
「Exit to Community」という概念は、過去数年間でビッグテックの独占に対抗するために登場しました。その目標は、テックスタートアップの代替的な未来を提示することです：買収を通じた脱退を求める代わりに、所有権と価値の分散化により、「Exit to community」が実現します。DePINのように分散化が強力である場合、創設者や創設企業がもはや存在しなくても、サービスが維持され、価値が分配されます。サービスの社会的需要がある限り、それを満たすネットワークのサービスプロバイダーが存在し、彼らの仕事に対して報酬を受け取ることができます。
完全な分散型でスタートするプロジェクトはほとんどありません。Bitcoinは典型的なその例外であり、ほぼ最初から分散化されたプロジェクトであり、これはそのプロトコル設計と発明者「Satoshi Nakamoto」の消失によって可能にされました。しかし、ほとんどのWeb3プロジェクトにとって、創設者が分散化の戦略を持っています。したがって、分散化は、技術的、トークンエコノミクス、法的、および社会的な努力を含む段階的な旅路であります。この旅の途中で、いくつかのWeb3プロジェクトは、核となるプロトコルを統治する非営利財団と、収益を追求するためある利益が生まれるアプリやサービスを提供するための営利組織との分離モデルを採用しています（Ethereum FoundationとConsensysが主要な業界の例です）。ただし、Web3ネイティブの組織形態はDAO（分散型自律組織）であり、MakerDAO, Aragon, Uniswap, AaveおよびGitcoinが主な例です。
現時点では、NymプライバシーDePINは技術的レベルで分散化されており、強力なプライバシーを提供しています。トークンエコノミクスとガバナンスは部分的に分散化されており、Nyxブロックチェーンの報酬が最近稼働しました。次のステップは、チェーンをパーミッションレスにすること、およびネットワークとコミュニティ全体がシステムの知識と理解を持つようにすることです。Nym DePINが強力な分散化に向かうにつれて、これはプライバシー機能とプライバシープラットフォーム上で運用されるアプリの価値提案を支援します。それはまず、NymVPN自体から始まります。
すべての人類のためのプライバシーを実現する使命に参加しましょう。
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