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今週の相場振り返りと来週の方針(行き過ぎた不安と懐疑) 2023/03/25

今週の振り返りと来週の展望を書いていきたい。今週も先週から引き続き、金融機関やクレジット周りでの混乱が主要なトピックであったと思う。また、今週はFOMCもあったため、FEDがそういった混乱を受けてどのような決定を行うか、注目が集まった週であった。結論から言えば、自分は現在の市場を支配している金融機関、クレジット周りへの不安や懐疑はやや行き過ぎの領域にあると思っている。

今週の流れ

先週末、土日にかけてUBSがCSに買収された(この件についての詳細な感想は先週のまとめに追記した)。AT1債市場への影響等も含め、さまざまな報道がなされたが、月曜日は概ね事態が終息に近づいていることを安堵した反応であったと思う。火曜日は直近の金融機関/クレジットの混乱を受け、FOMCで何らかの対応がなされるのではないかという期待感もあったか、月曜日の流れを引き継ぎ、株高債券安となった。水曜日はFOMCであった。自分の感想について、詳細は後述するが、25BPSの利上げが決定され、Dotsでは23年末の政策金利水準が5.125%で据え置かれた。会見では「金融システムに問題はないこと」「一方で、貸出タイト化等を通じ今後景気/インフレ引き締め的に作用するであろうこと」が述べられた。株価は会見中は一進一退といったとこであったが、政策サポートへの期待は非常に強かったようで、会見後イエレン財務長官が「全面的な預金保険の提供検討せず」と発言したことを契機に投げ売りとなった。債券は買われて引けた。木曜日は久しぶりに0DTEオプション売買が帰ってきたのか、寄りから大きく上げた株価が午後になって元ザヤに戻るという動きを見せた。また、この日の終盤からドイツ銀行の株価が大きく下落し始めた。金曜日は欧州時間から銀行株が再び大きく下落し、金利が低下し、NY時間も当初はその流れを受け継いだ。しかし、ここまでずっとそうであったように株はロンドン時間の下落にも関わらず底堅く、徐々に切り返し、結局プラスで引けた。

金融機関を巡る混乱について

今週火曜日、自分は今回の金融機関を巡る混乱は一過性のものであり、今後は徐々に巻き戻しが進むだろうという判断を下した。先週のまとめにも記載したが、まず米地銀の件については、1)SVBの特殊性(杜撰なALM、偏った顧客層)、2)素早く破綻処理が完了したこと、3)BTFPの設定、4)大手銀行団による預金還付、により既にそういった判断を下していた。CSの件については、1)AT1債が全損処理されたことによる影響、及び2)なぜ流動性を供給するだけでなく、買収・合併処理まで急いだのか、の二点が不明であったが、これらについても問題はないとの判断を行った。AT1債の全損処理については、1)そもそも全損処理が可能という条項が設定されていたのがスイス二行(CS及びUBS)のみという特殊な事例であること、2)目論見書通りに処理されており、処理に法律上の問題はなかったと思えること、3)ECBが即座に声明を出し、今後は劣後債が株式に優位するということを明確にしたこと、が主な理由である。なぜ合併・買収処理を急いだかについては、その後の報道を見る限り、1)そもそも流動性供給の時点で合併・買収処理を行う方針は決定されていたこと、2)米仏当局から相当のプレッシャーがあったこと、3)CSが急速な預金流出に見舞われていたこと等の事情があったと見られ、完全に腑に落ちたとは言わないが、大きく問題視するほどではないと感じた。今週木曜日-金曜日はドイツ銀行が注目されたが、直近決算も良好であり、CSとは比較できる対象ではないと認識している。そもそもCSほど収益性等問題の多い銀行ですら、リーマンショック当時に問題となった銀行たちのようにブラックボックス的商品を大量にかかえていない限り、結局買い手は見つかるのだ。後述する金利市場の織り込みも含め、ここにきて市場の懸念はやや行き過ぎているように見える。

FOMCについて

FOMCにおいては25BPSの利上げが決定された。ECBが利上げ+配慮した会見で上手く切り抜けた前提があったし、市場も25BPS織り込みがメインであったし、あまり他に選択肢がなかったというのが正直なところであったと思う。その後の会見も、金融機関の混乱は一部の問題がある銀行に限られており、必要な政策は既に処置されていること、一方で貸出タイト化等を通じ景気/インフレ引締め的に働くことが説明された。どれも先週まとめに自分が書いた認識と概ね一致しており、特段サプライズはなかったように思う。一方で、貸出タイト化等を通じ景気/インフレ引締め的に働くことを理由に金利の最終地点は低下するとも述べ、声明文の文言もongoingからsome additional policy firming may be appropriateており、この点、総じて言えばハト寄りなFOMCであったと自分は判断している。

金利市場の織り込みについて

さて、金融機関の混乱が起こってから、CME Fed Watchにおける金利の織り込みは極端なものとなっていき、金曜日時点では次回5月FOMCでの金利据え置きが98%であり、その後6月会合から毎回25BPSの利下げが行われ、24年9月には275-300BPS織り込みとなっている。現在の金利の動きは将来の金融政策を見て動いているというよりも、「質への逃避」による債券買いに基づくものであるため、下記の織り込みを用いて金融政策を語ることは適当でないという指摘もある。それは極めて真っ当な指摘であろう。一方で、同時にそれは現在の「質への逃避」が如何に極端なものとなっているかの証左にはなる。債券市場が鳴らす危機の程度は極めて深刻なものとなっている。ただ、株と債券では債券の方が正しいというのは良く言われるが、年末の中銀ポリシーエラーの時や、あるいは先日のパウエル議長会見後の50BPS利上げ織り込みの時といい、ここ最近においては金利の方が大袈裟に反応し、株が冷静という事態の方が目につく。自分個人としては今回も債券市場がややオーバーリアクションになっていると考えている。

経済指標について

今週発表される経済指標は多くなかったが、Lightcast求人数、Indeed求人数、クレジットカード消費額、台湾輸出受注等、多くの重要な先行指標でリバウンド、あるいは下落の停滞が見られた。また、先週までは各連銀が発表する景況感指数に相当な弱さが見られたが、今週金曜日発表されたPMIは総合で予想49.5/前回50.1に対して今回53.3、製造業が予想47.0/前回47.3に対して今回49.3、サービス業が予想50.3/前回50.6に対して今回53.8と大きく予想を上回った。SVBの一件を発端とした混乱はごく最近のことであり、まだ指標に反映されていないと考えられるため、このリバウンドがトレンドになるのか、一時的なリバウンドになるかは注意深く見る必要があるが、少なくとも足元では経済は一旦リバウンドを見せていた可能性が高いと思われる。なお、Citiによれば、SVBの混乱の直後にクレジットカード消費が減少したとされる。

0DTEについて

今週木曜日は久々に0DTEが相場にインパクトを与えていた。これが来週も続くかはわからないが、1月後半-2月前半においては、1)ナスダックの特定銘柄を中心にNY時間午前に当日満期のコール買いが盛んに行われ、結果として株が上昇し、一方で午後になるとその反対にやや尻すぼみになる、2)相場が上がっている/下がっている時、NY時間の正午前後を境に反対方向のオプション売買が行われ、従ってそれまでの値動きの正反対の方向へ向かう動きとなる、3)やや長いスパンでは一日の値幅の低下要因となり、ボラが低下するためリスクアセットに支援的である、といった傾向は見られたと思う。来週からの様子には注意したい。

自分の動き

さて、上手く立ち回れた先週までとは打って変わって、今週は我慢の時間帯が多かった。まず、債券は押し目があれば購入したいと先週の振り返りでは書いていたが、火曜に少し上昇した程度で、他は押し目らしい押し目もなく金利は再度低下してしまった。一方で、火曜日に前述の通り金融機関を巡る混乱は一時的なもので終わるだろうと考えたため、金融株のETFを買った。しかしこれは政策サポートへの期待がどの程度強いものかを完全に見誤っており、翌日水曜日のFOMC後に投げることとなった。その後、木曜日にナスダックをロングした。現在の不安・懸念はやや行き過ぎという目線は継続しており、目先は全体的に株↑の可能性が高いという考えは持っており、一方で一々不安・懸念・政策期待に振り回されるのを避けたいからであった。これは金曜前場は耐える時間になったが、後場には切り返して終わることが出来た。来週がどうなるか?わからないが、懸念が行きすぎているという自分の認識を変える出来事は現在起こっておらず、やはりいまからこの金利水準で債券買いに動くことが得策とは思えない。一つ言えるのは金利がドタバタするのを横目に株はずっと底堅いということだ。金利が何か自分の知らないことを知っている可能性も無いわけではない。しかし、現時点では、金利を見て狼狽したり、一度株を損切りしたからといって、羹に懲りて膾を吹かない方が良いように思っている。従って、来週に関してはひとまず今のポジションをホールドし続けるつもりである。

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