世界最大の野生動物写真コンテストを分析してみた②

世界最大の野生動物写真コンテストはどんな写真が入賞しているのか。そしてどうしたら入賞できるのか。


Wildlife Photographer of the Year (WPY)はイギリス自然史博物館が主催する、毎年開催される国際的な野生生物写真コンテストです。
とにかく写真の質が高く、National Geographicで仕事をしている写真家をはじめ、世界中の野生動物写真家が応募する写真コンテストです。

動物写真は普段目に触れることがあまりないかもしれないですが、写真の知識がなくても、動物の知識がなくても、その美しさだけで楽しめるものなので、ぜひ見てみてください。

まずは2020年の受賞/入賞作品をご覧ください。
https://www.nhm.ac.uk/wpy/gallery
(なお写真は直接貼れないため、リンクとなっています)

年間大賞はSergey Gorshkovによるアムールトラの写真です。
https://www.nhm.ac.uk/wpy/gallery/2020-the-embrace?tags=ed.current
カメラトラップを使い、10か月もかけて撮影されたこの写真は、トラの特徴的な行動をとても印象的に写しています。

1964年から行われているこの写真賞には、どんな写真が入賞しているのか。どんな動物が入賞しているのか。そしてどうしたら入賞できるのか。
過去10年分(2011~2020)のデータを分析してみたので、備忘も兼ねてその一部をnoteに書いていこうと思います。


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2回目の今回は、どんな動物の写真が入賞しているのかを見ていこうと思います。
早速、動物別の入賞数ランキングを見てみましょう。
(Photojournalism部門及び動物の写っていない写真は除く)

【過去10年間の動物別入賞数ランキング】

画像1

1位はクマでした。10年間で20枚に登場しています。
特にホッキョクグマの登場回数は非常に多く、12枚とクマの半数以上を占めます。

2020年大賞のSergey Gorshkovによる、2018年の写真もホッキョクグマのものでした。
”A Bear on the Edge” -Sergey Gorshkov, 2018, Animals in their Environment
https://www.nhm.ac.uk/wpy/gallery/2018-a-bear-on-the-edge?tags=ed.7

また環境問題と絡めて語られることも多いのがホッキョクグマの特徴です。
”A Polar Bear’s Struggle” -Justin Hofman, 2018, People’s Choice Award
https://www.nhm.ac.uk/wpy/gallery/2018-a-polar-bears-struggle?tags=ed.7

ホッキョクグマ以外では、Brown bear(ヒグマ)が4回入賞しています。
捕食シーンなど、その生態を環境と合わせて撮影したものが多くなっています。
”Anticipation” -Marco Urso, 2017, Behaviour: Mammals
https://www.nhm.ac.uk/wpy/gallery/2017-anticipation?tags=ed.6


2位はキツネです。17回登場しています。12回がアカギツネ、3回がホッキョクギツネです。
中でもアカギツネがホッキョクギツネを狩っているこの写真はこの年の年間大賞を受賞しています。
”A tale of two foxes” -Don Gutoski, 2015, Behaviour: Mammals, Adult Grand Title Winner
https://www.nhm.ac.uk/wpy/gallery/2015-a-tale-of-two-foxes?tags=ed.4
地球温暖化により、アカギツネの生息域が北に広がり、ホッキョクギツネの生息域と重なってきたことが原因で起きた事象が克明に記録されています。

またチベットスナギツネとヒマラヤマーモットが写るこの写真も、年間大賞を受賞しています。
”The Moment” -Yongqing Bao, 2019, Behaviour: Mammals, Adult Grand Title Winner
https://www.nhm.ac.uk/wpy/gallery/2019-the-moment?tags=ed.8

2013年を除き、すべての年で入賞し、2回の年間大賞を出しているキツネ。
日本人にとってなじみの深いアカギツネですが、まだまだ新しく美しい写真の撮影余地があるのではないかと感じさせます。


3位はライオンです。16回入賞しています。
2012‐14年頃は非常に人気で、10回はこの3年間での入賞です。
とはいえ最近も入賞しており、被写体としての根強い人気を感じます。

こちらは、写真賞受賞作品集の表紙にもなった写真です。
”Cool Cat” -Isak Pretorius, 2018, Animal Portraits
https://www.nhm.ac.uk/wpy/gallery/2018-cool-cat?tags=ed.7

またこちらはPeaple's choice部門で受賞した写真です。
”Bond of Brothers” -David Lloyd, 2018, People’s Choice Award
https://www.nhm.ac.uk/wpy/gallery/2018-bond-of-brothers?tags=ed.7

私もライオンを撮影していますが、受賞作品を見るたびに、こんな撮影方法があったかと思わされるものばかりです。

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今回は上位3位までを紹介しました。
すべて哺乳類で、比較的身近な(撮影自体が困難ではない)動物が多かったように感じます。
だからこそ、いかに特別な瞬間を、独自の視点で捉えるかということが重要になるのだと思います。

次回は4位以降を見ていきます。 



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