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上海出身の留学生と国際学生結婚して10周年を迎えた話

大学の国際交流センターで一目惚れ

20歳のとき、大学の国際交流センターで中国語を話す美女を発見!僕は「中国語勉強しているので中国語教えてくれませんか?」と思わず声をかけた。もちろん当時中国語の勉強などしていなかったが、3ヶ月を経てようやくメアドを交換してデートの約束を果たした。しかし僕が想像していた普通のデートとはかけ離れていた。まずレストランに到着し、自分が先に席につくと、彼女は店員とともに立ち竦み、こちらをじっと見ていた。何事かと思い「どうしたの?」と聞くと、「男は先に座っちゃダメでしょ。」と片言の日本語で注意を受ける。さらにテーブルマナーに関しても諸々注意を受けた。食事代に関する議論では上海の女性はお金を出さないと事前に忠告を受けていたが、その理由が理解できず激しい議論にまで発展してしまった。本来であればバラを用意して車で送り迎えをするべきところを電車移動であることも理想的ではないと告げられその日のデートは終わった。

結婚10周年を迎えても日々異文化衝突

そんな出来事から数カ月後に交際が始まり、1年半後に結婚を決意し、今年で10周年を迎えたので中国上海について詳しく纏めていきたいと思う。あの日の出来事から今までの人生は「波乱万丈」がよく似合う。今の自分と今の家族があるのは彼女のお陰であると想いながらも、日々異文化衝突を繰り返し肉体的・精神的にダメージを受ける自分がいるというこの紆余曲折の10年を振り返りたい。

学力ランキング世界一位の上海の教育

初めて中国に行った時のこと。彼女とタクシーに乗り、日本語で他愛も無い会話をしていた。目的地に到着し、降りようとすると、本来、50元程度の運賃のはずが、そのタクシーの運転手は300元請求してきた。彼女は急に日本語から中国語に言語を切り替え、タクシーの運転手に対し大声で何やら叫び論破し始めた。タクシーの運転手は一言も語ることなく、困った様子で彼女に只々お詫びをしていた。タクシーの運転手は日本人観光客だと思い、ぼったくろうとしていたらしい。

今度は映画館でチケットを買うため列に並んでいた時、2人組の若い中国人が割り込み横入りをしてきた。彼女はその2人を列から引っ張り出し、列の最後尾に行くよう論破し始めた。不貞腐れた態度を取る相手に彼女は正論であることを訴えた。

圧倒された僕は彼女に聞いてみた。中国上海の教育では「論破する力」を育てているらしい。彼女の主張は折れることがない。日本国内では「和を重んじる」「遠慮する」「空気を読む」といった世界に誇る貴重な文化があるが、時に論破する力も必要なのかもしれないと思うようになった。日本は閉塞的で内向き、下向きな人間を生み出し続けている。世界で通用する力を育てる中国の教育力とはどのようなものなのかを紐解きたい。

これは経済協力開発機構(OECD)による国際的な生徒の学習到達度調査PISAの2009年度の結果である。数学的リタラシー、科学的リタラシー、読解力の3項目に於いて全て1位を独占している。日本は2000年度の調査で数学的リタラシーの分野で世界1位を獲得しているが、2009年度の結果はこのようになっている。

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中学校の修学旅行がハーバード・オックスフォード

世界一位の学力を誇る中国上海に教育視察のためこれまでに3度足を運んだ。現地に到着してまず着目したのは街中にTOEFL, IELTS, SATの文字が溢れていること。教育産業が盛んな上海では、個別指導や進学塾の広告、まるで芸能人のような先生が宣伝頭になって繁華街の広告塔となっている。海外進学のためのイベントには大量の学生が押し寄せ、海外大学の入試担当者に対し、自分のレジュメを持ち、英語で必死に自己アピールしているのを目の当たりにした。中国政府は世界のグローバル化に対応する自国の国際化にあたって、国際コミュニケーション戦略を重視している。彼女の上海の高校ではクラスの半分以上が海外に進学している。

僕がオックスフォード大学に留学している時、衝撃的なものを目撃した。それは中国人の修学旅行団体。赤い段幕を広げオックスフォードの図書館の前で写真撮影を行っていた。日本人が京都に行っている間、中国では世界の名門大学を訪問しているのだ。

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そしてハーバード大学、マサチューセッツ工科大学(MIT)にも中国最大の英語塾「新東方」の団体ツアーで溢れかえっていた。メインキャンパスの半分以上が中国人観光客であった。誤解して欲しくないのは中国人の全員がこうゆう経験をしているわけではなく、ごく一部の恵まれた中国人の一例である。

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中英関係の『黄金期』

中英関係の『黄金期』の始まりと題して中国メディアが報じる習近平国家主席英国訪問。バッキンガム宮殿までお迎えに行った中国人の友達多数がネットで写真をあげていて物凄い盛り上がりです。習近平氏の英国と中国の教育に関するコメントがこちら。


The British have learned the virtues of strict discipline, while the Chinese were learning the advantages of recreation. Chinese children do not play enough. They should play more.「イギリスは中国から厳しい規律の道徳的美徳を学び、中国は気晴らしの利点を学んだ。中国人は全然遊ばない。もっと遊んだほうがいい。」

そして孔子の言葉を引用し、To learn knowledge is better than to acquire knowledge but to love knowledge is better than both.「知識を身につけることよりも知識を学ぶほうがよい。でも知識を愛することはその両方よりもよい。」
ロンドン大学と北京大学が提携して奨学金制度を充実させるらしいです。投資や貿易で£300億(約6兆円)が流れ込むという噂も。今後日本は相手にしてもらえるのでしょうか?
*ロンドン大学教育研究所が主催した孔子学院のConferenceの写真

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大学院時代のある日の出来事
応用言語学のクラスメイトの李さんとランチをしました。李さんは中国の天津出身で高校の時に独学で日本語能力検定1級に合格しストレートで日本の有名私立大学に入学、同大学大学院で応用言語学の修士号を取り、ニューヨーク大学の博士課程を蹴って現在はロンドン大学教育研究所で応用言語学の2つ目の修士課程に在籍しています。年齢は僕と同じ26歳ということもあり仲良くさせてもらってます。そんな彼女に天津の英語教育について色々と教えてもらいました。驚いたのは海外進学者数!8年前の李さんのクラスメイト47人中26人が海外進学をしたそうです。優秀な生徒はアメリカ・イギリス、それに続いてフランスやドイツなどのヨーロッパ圏、一番楽な選択肢が日本!ちなみに一番大変なのは中国の大学入試だということです。この受験戦争を避けるために海外進学する人もいるそうです。最近日本では「東大蹴ってハーバード」という記事が話題になりましたが、天津では何年も前から「北京蹴ってハーバード」現象が起きているらしいです。もはや北京大学からは世界に通用する人材は生まれないということ。何をやるにも先頭に立つのは英米大学卒業者。学歴がモノを言う中国では学歴をモチベーションに勉強を頑張るのが当たり前のようです。日本にいる中国人留学生が大講義教室の最前列に座り必死に授業を受ける理由がわかりました。

中国の早期英語教育

中国では全国の小学校に英語教育を導入していて、一般には小学校3年から始まり、週4時間が基本であるが、主要都市では幼稚園から英語を教えるところもあり、週5、6時間英語を教える学校もある。上海の多くの小学生は塾に通い、小学校1年生から英語を学んでいる。僕がインタビューした高校生の中には幼稚園から英語学んでいるという生徒も数多くいた。

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上海の小学2年生の時間割を見ると英語はもちろん、探究学習やチェスなど朝から晩まで1限から7限までびっしりスケジュールが詰め込まれている。平日の夜はプログラミングやピアノ、週末も課題に追われている。

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僕が訪問した上海の高校の英語の先生は全員修士課程を修了し海外留学経験があった。理論と実践を組み合わせた迫力ある授業であった。授業では巨大液晶スクリーンとプロジェクター、音声を活用してインタラクティブな授業を展開していた。中国語は一切使わず、オールイングリッシュの授業を展開していた。最も驚いたのは授業後の職員室での出来事。僕が英語の先生に授業に関してインタビューをしていると、高校1年生の生徒が集団で英語の質問をしに職員室の前で列をなしていたこと。さらに彼らは先生に英語で話しかけ、英語でメモをとり、英語でお礼を言ってその場を去っていった。僕は開いた口が塞がらなかった。

教員養成機関である師範大学の英語科では、「英語教授法」を必修科目として学び、英語教育の原理、リスニング、スピーキング、リーディング、ライティング力を育成する方法、音声・語彙・文法・の教え方、授業の仕方、教具の使用法、課外活動の形式、テストの理論と方法などを学ぶ。英語の授業は英語で教えるという考えが広く、教師側からすると、授業で英語を使わなければ自分の英語力は低下すると感じるという。授業形態は「教科書を学ぶ」のではなく、「教科書で学ぶ」ということを基本としている。

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僕が訪問した上海の高校では毎週、他の教師の授業を観察し、評価する機会がある。僕が参加させてもらった英語の授業にも8人の先生が授業に参加し、クラスの後ろに椅子を並べ評価表を記入していた。他の教科の教師からのフィードバックを受け、教師は自分の授業を撮影するなどして日々授業の質の改善を試みている。研究目的で日本の公立学校に授業参観をお願いした時に、僕は何度も断られていたが、中国では研究内容をお話しすると、どの先生も快く受け入れてくれた。先生の授業に対する自信ややる気が漲っているのを感じた。

中国の先生と生徒の関係

上海の小学校である小学生のクラスを廊下越しで見学していた時、廊下から小学生が大きな声で「1、2」と叫んでいる場面に遭遇した。すぐにビデオを向け撮影すると、それはクラス移動をする小学校低学年の生徒だった。日本の「前〜習え」に近いものはあるが、迫力と緊張感、先生の厳しい視線が違う。下記のリンクから動画をご覧ください。中国の教育において「先生」は尊敬されるべき存在です。この動画では子供たちが「老师好(=先生こんにちは)」と挨拶をしています。British Councilの記事でこのようなものを見つけました。

1: Hierarchy is important

‘Lǎo shī hǎo’, (老师好)or ‘hello teacher’ along with a little bow of the head is the greeting that all Chinese students give their teachers. This isn’t exclusive to the classroom but extends everywhere on campus, making the journey between lessons a little longer than usual. In England, no one but the biggest ‘suck-ups’ would say hello to teachers in the hallway. From what I remember of being a pupil at school, the usual approach was to avoid eye contact and any kind of interaction until forced to in the classroom. The very polite behaviour of these students is a perfect example of the overall importance and respect for hierarchies in Chinese society. Teachers are to be respected because they are above students in the hierarchy – simple as that.

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軍隊のようなクラス移動

中国の小学校の授業を廊下から見学させていただいているときにたまたま、隣のクラスの小学生がクラス移動を始まった。日本の学校にある集団行動よりも激しい。

1日2回のラジオ体操

朝礼が始まるから校庭でここで待っててください。と訪問先の教頭先生に案内された。数分後、掛け声とともに校舎から生徒が駆け足で列を作った。体育着のような制服のような、とりあえず統一された服を着て、生徒が胸を張って立っている。すると中国の国家が流れ始め、生徒は国旗に向かって敬礼をしている。そして、音楽が流れ始めた。中国語で「1〜、2〜、3〜、4〜、5〜、6〜、7〜、8〜」と全員の生徒が大声で叫び、体を動かし始めた。ラジオ体操にしてはスパルタ過ぎると感じた。この踊りはなんですか?と僕は教頭先生に尋ねた。体操することにより、体内に酸素を入れ、集中力を高めることができます。
どの生徒も必死に踊っている理由は各学級の列に高学年の先輩が立ち、しっかりと踊っているかを評価し、担任の先生に報告します。きちんと踊らないと担任の先生に厳しく指導されるそうです。中国ではこれを1日2回、朝と昼行います。生徒だけでなく、先生も。日本の集団行動も世界的には珍しいものだと思っていましたが、ここにはもっと厳しいものがありました。

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中国では海外進学が当たり前

文部科学省が2013年に行った日本の高校生の留学に対する意識調査では58%の高校生が留学したいと思わないと回答した。当時の彼女のクラスメイトも半分は海外進学したという。このグラフはアメリカへの留学生数の推移(上位6カ国)を表したものである。中国人の伸びに反比例して日本人の留学生数は減少傾向にある。大学全入時代に突入し、日本人は安定志向、そして平和ボケしている。少子高齢化の影響でこれから人口が減り続ける日本で、日本人は世界で戦うチャンスを掴みとらなければならない。

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※出典元:IIE「Open Doors」Institute of International Education

財団法人日本青少年研究所が2011年に日本、アメリカ、中国、韓国で行った自己評価に関する評価で以下のような結果が出ている。日本の高校生の自分に対する評価は他参加国に比べ極めて低く、内向きな日本人の象徴とも言える。やりたいことが見つからない、夢がないといった多くの高校生に指導してきたが、海外に出ることで新しい自分を見つけるきっかけとなる。

米国と中国の高校生は自己肯定感(自尊感情)が強く、日本高校生の自己評価が最も低い(以下の数値は「全くそうだ」の比率)。

「私は価値のある人間だと思う」:日本7.5%、米国57.2%、中国42.2%、韓国20.2%
「自分を肯定的に評価するほう」:日本6.2%、米国41.2%、中国38.0%、韓国18.9%
「私は自分に満足している」:日本3.9%、米国41.6%、中国21.9%、韓国14.9%
「自分が優秀だと思う」:日本4.3%、米国58.3%、中国25.7%、韓国10.3%
※財団法人日本青少年研究所(2011)「高校生の心と体の健康に関する調査—日本・アメリカ・中国・韓国の比較—」調査概要

中国上海の結婚式

そんな教育を受けた彼女と結婚することになり、上海で結婚式を挙げた。がこれも僕が想定していた結婚式とはかけ離れていた。上海の結婚式は男女のためのものではなく男性が女性を頂きに行くという儀式であった。大量の赤い封筒にお金を入れて持ってくるように言われ、僕の親戚と付き人を連れて高級車で彼女の家まで行くところから始まった。

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彼女の家に着くと近所の人々が爆竹を鳴らして歓迎してくれた。しかし彼女の姿は見当たらない。聞くと彼女を迎えに行くんだよと伝えられ、マンションの階段を上がると玄関には鍵がかけられ、彼女の友人たちがお金を求めてくる。「本当に彼女を幸せにできるのか?」「中国語で愛を叫べ!」「愛の歌を熱唱しろ!」といった要求をされその場面を全て録画されていた。また3つのキスマークがついたティッシュを渡されどれが彼女のキスマークかと尋ねられ、間違えるとまたお金を要求される。なんとか第一関門をくぐり抜け、中に入ると今度は親戚の人々がお金を求めてくる。親戚はさらに真剣に彼女のことを聞いてくる。「本当に幸せにできるのか?」「ちゃんと金を稼げるのか?」第2関門をくぐり抜けると最後に両親が待っていて、彼女が待つ場所まで案内される。

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彼女にやっと会えたと安心していると訳のわからない儀式が始まった。彼女が吐き出した豆のようなものを僕の手のひらの上に置き、それを封筒にしまい胸ポケットにしまう。未だに目的がわからないが全てを録画されていたので後戻りはできない。このような儀式を朝から晩まで行い結婚式会場では彼女の男友達にコールで紹興酒を大量に飲まされ気がつくとホテルで次の日の朝を迎えていた。

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結婚式では「家と車と金」この3つが結婚の条件だと伝えられ、上海では一人っ子政策で大切に育てられた女性をもらうことは容易ではないことを知った。

To be continued...

References


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