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Snow Manのエモさを言葉にしてみる

 2020年1月22日にSnow Manというジャニーズのグループがメジャーデビューを果たす.このグループ,またそのメンバーの歴史というのは現段階で非常に長いものであり,現在も彼らの所属する「ジャニーズJr.」というメジャーデビューを明日に夢見る研修生組織での下積み,そしてデビューするまでの期間は歴代最長のなんと15年.

 「Johnny's net」に掲載されているSnow Manのbiographyは2005年からはじまっている.去年デビューしたKing&Princeのbiographyは2011年(岸・廉)からのスタートだと考えると,その期間の長さがより際立つことだろう.

「Snow Man」という名前が与えられるまでの歴(2009-2012)

 Snow Manの前身グループにMis Snow Manがある.Mis Snow Manとしての歴史は2009年1月の結成に始まり,2011年に自身ら主演の『HOT SNOW』が制作・公開されたこともあるが,結成からの数年間におけるメインの仕事は滝沢歌舞伎や滝沢革命など,タッキーが主演を務める舞台でのバックとしての活動であった.

 当時のMis Snow Manというグループには,Snow Manの初期メンバー6人に加えて,真田佑馬と野澤祐樹が在籍していた.8人グループとして活動していた結成からのおよそ2年間,特筆すべき大きな問題が生じることなく順調に活動を続けていくことができた.

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 しかしながら,2011年10月に真田佑馬と野澤祐樹がnoon boyzとして活動するためにMis Snow Manを離れることが決まる.グループとして最初で最大の問題が生じてしまった.この2011年下旬というのは一メンバーの阿部亮平が学業のため芸能活動を一時休止中であったために,メンバーの当時の不安定な心境を測り知るこができない.さぞかし不安だったことだろう.ちなみに,2人の脱退・1人の活動休止を迎えた/ている期間,残された5人は通常通り舞台に立っていた.「帝劇 Johnnys Imperial Theatre Special」と「新春滝沢歌舞伎」だ.

 5人での活動時に出演した帝劇の舞台ではKis-My-Ft2がデビューするにあたって,彼らがメインを張る舞台のバックとして5人が務めていた.「新春滝沢歌舞伎」はもちろんタッキー主演の舞台であり,これは恒例行事であった.

 2012年2月に阿部亮平が上智大学の一般試験に合格するにあたり,彼は芸能界復帰を果たしグループに再び合流した.彼らは引き続き今度は「ABC座 星(スター)劇場」や「滝沢歌舞伎 2012」に出演することとなる.

 2人の脱退以降,「これはちゃんとしたグループなんだよね?あれ?違う?」とMis Snow Manは解散したのかグループとして活動継続しているのか曖昧な中,その「滝沢歌舞伎 2012」でタッキーから「Snow Man」という看板を貰うことになり,正式にグループ活動を行なっていくことが発表される.感動の瞬間だ.

 「Snow Man」としての歴史は最初で最大の問題が発生した2011年からの起死回生で2012年に復活を遂げたというところからのスタートであった.6人での活動はこの2012年から2019年という長きに渡る活動のなか,「ジャニーズ銀座」といった自身らがメインを張るライブパフォーマンスも披露してきたが,やはりこの期間でもバックとしての活動がメインであった.「誰かの華を咲かせる」彼らの健気で一途な活動はそれを目撃する人の心を掴み,先輩たちからも信頼度の高い彼らはテレビ出演を行う傍で1年間に約200ステージに参加していた.彼らが初めて自身のオリジナル曲を持ったのは2015年だった.

Snow Manのオリジナル曲からみるエモさ(ZIG ZAG LOVE/VI Guys Snow Man/Snow Dream)

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 ここからはSnow Manが放つエモさを感じ取る上で欠かせない,彼らのオリジナル曲を今一度冷静に分析してみたいと思う.ちなみに,前回の「SixTONESのエモさを言葉にしてみる」という記事の中で紹介した通り,エモさの定義は以下のものとする.

ちなみに「エモい」という言葉は定義が曖昧で人によって使い方が違う気がするので,ボクの中での「エモい」を説明しておくと,類義語として「感慨深い」「しみじみする」が挙げられる.めっちゃ砕けて表現すると「はぁ〜〜〜〜〜すげー...さいこう..!!」みたいな感じだ. 

 彼らのオリジナル曲は以下の通りだ.

2015年
ZIG ZAG LOVE
2016年
Acrobatic
2017年
Boogie Woogie Baby
VI Guys Snow Man
Vanishing Over
2018年
SNOW DREAM
Party! Party! Party!
Don't Hold Back
2019年
Make It Hot
Lock on!
終わらない MEMORIES
Cry out

  ここで特に挙げておきたいのは『ZIG ZAG LOVE』『VI Guys Snow Man』『SNOW DREAM』だ.彼らのアイデンティティーを垣間見るにあたって最高の楽曲たちであり,ボクはこの曲にSnow Manのエモさが潜在していると考えている.

☆ ZIG ZAG LOVE

 最初,ボクがこのタイトルを見た瞬間とイントロを聴いたときの感想は「ださwwww」であった.「じぐざぐ!?」だし衣装とサウンドがなんか古くさいしていうので,そこまでいい印象を持たなかった.

 しかしながら,実際にパフォーマンスを観てみると,さすがSnow Manにしかない卓越したポテンシャル,がんがんアクロバットを決め込み,複雑なステップを踏み,見事なまでに収斂された統一されたダンスを踊る.

 しかも,彼らのこの初めてのオリジナル曲を聴いて,思ったことなのだが,彼らのユニゾンは非常に大人っぽい.さわやかというより,落ち着いている.年齢はまだ皆んな20代でありながら,声色に関してはV6やSMAPと同じくらいの成熟さ,それでありながら,パフォーマンスは年齢を全く感じさせない異次元レベルのクォリティーを持ったものであった.

 この曲のサビの歌詞は彼らと合致するようでなかなか感慨深い.

彷徨う ZIG ZAG,ZIG ZAG LOVE
キミとほら ZIG ZAG,ZIG ZAG LOVE
遠回りしても見つけよう宝物

 Snow Manの活動歴というのは先代と被るそれではなく,主に舞台を中心に活躍してきた.それも,「誰かの華を咲かせる」という毛色のものである.それでありながら,『ザ少年倶楽部』にもほぼほぼレギュラーとして活躍しており,完全なる舞台班でもなければ,完全なるテレビ班という訳でもない.前身を含めたグループ活動は6年で,それでようやく得たこの『ZIG ZAG LOVE』は,彼らのジグザグとした,紆余曲折を得てきた歴史があるからこそ,ボクらファンは彼らをその音楽に投影させてエモさを享受しているのではないかと思う.

☆ VI Guys Snow Man

 かつて,ジャニーズJr.時代のKAT-TUNは様々な先輩のバックに就くも,メンバー全員の個性があまりにも強いということもあって「振りが揃わない」という事態が頻繁に起きてしまい,すこぶる先輩からの評判が悪かったという(素行も含めてだとは思うけど).

 しかし,これに対してSnow Manはパワフルでありながら細部にもこだわって振りを揃え,そしてポイントポイントでアクロバットを繰り出すこともできるため,非常に評判が高い.2016年の総ステージ回数が200回を超すほど呼ばれる気持ちも十分に分かる.

 そんな,普段は自分の個性というよりも,集団芸のクォリティーに重きを置く6人が自身のアイデンティティーを爆発させまくるのが『VI Guys Snow Man』だ.ここで見られる彼らのパフォーマンスは普段「誰かの華を咲かせる」ことに集中することで抑えてきた自己というものを四つ打ちのEDM調のサウンドのなかで解放する.

鳴らせ Heart beat さらけ出し
騒げ Make some noise もっと Feel so free
飛ばせ Don't stop 響け Music
テンションは最高潮 届けるエモーション

 というAメロから始まるこの曲は,歌詞からしても爆発感満載だ.パフォーマンスはいつものアクロバティックさもさることながら,衣装をたぐりあげ自身の肌をさらけ出す行為によって,ファンの興奮を心の底からえぐり出す.

 サビでは連続的な歌唱で繋げるのではなく,ドロップで彼らの持ち味であるダンスとアクロバットで自身の身体アイデンティティーを解放させる.これを観るボクは,あのパフォーマンスというのはファンのためにやっているというよりも「“自分”を解き放つ」ためのように思う.とはいえこれはファンにとっては嬉しいものだし,エキサイトさせられるものだ.

 1番の盛り上がりの箇所もなかなか最高だ.歌詞のテーマも「枷を外し,自分を解き放つ」であるため,まさにSnow Manが持つべき曲であるといえる.

Let's go crazy
Dancin' Dancin' with your love Hey
Let's sing Na Na Na Na Na Na Na
Ⅵ Guys Snow Man

 ☆ SNOW DREAM

 上記までに紹介してきた曲たちとは異なり,この『SNOW DREAM』の曲調はしんみりとしたバラードである.彼らのことを応援しているファンたちにとって,ここでの注目ポイントはなんといってもメンバーとファンを投影することのできる歌詞だ.

魅せつけたいよ 熱い想い
“岩も溶”かすほど
“伊達”じゃないんだ 決意の“深さは”
底なしだよ
“渡る”世間は 無情なほどに
“あべ”こべな華
“咲くま”で何度 眠ればいいのか
分からない

 1番の歌詞にはメンバーの名前が不自然なく散りばめられており,伝えるメッセージも今までのSnow Manの,文字情報では決して感じ取れない,歴史の深部を表現するものである.

 「魅せつけたいよ 熱い想い “岩も溶”かすほど」には普段は自己を押し殺して誰かの後ろで踊る彼らの感情を「Snow Man」というグループ名と対比させる形で表現し,「“伊達”じゃないんだ 決意の“深さは”  底なしだよ」とパラフレーズする.「“渡る”世間は 無情なほどに “あべ”こべな華」や「“咲くま”で何度 眠ればいいのか 分からない」にはこれまで決して彼らが表立って言うことのなかった素直な心情を歌詞に載せて素直な吐露を呈する.ファンにとってこれらの歌詞全てが一字一句聞き逃せないポイントである.

涙で滲む約束がまだ 果たせない僕だから
もう少し傍に居て もう何度も告げたセリフだね

 短いサビの中には,決して多くない文字量のなかにSnow Manがファンたちに伝えたいメッセージの全てが集約されている.「涙で滲む約束」というのはもちろん「メジャーデビュー」のこと.彼らは長い活動の中で多くのグループがデビューしていく姿を見届けてきた.Kis-My-Ft2やA.B.C-Zという先輩グループがデビューし,ほぼほぼ同期のHey!Say!JUMPのデビュー,後輩のSexy ZoneやKing&Prince.1組見届けるだけでも非常に大きな出来事なのにも関わらず,彼らは多くの仲間が日の目を浴びる瞬間を横から見ていたのだ.

 「もう少し傍に居て」にはファンを想う気持ちと共に,経験を積み重ねてそろそろJr.のなかではベテランともいっていいような年長グループがファンに自身らの懇願を示す.しかし「もう何度も告げたセリフだね」である種の諦めと歴史があるからこそ見出すことのできる彼らの悔しさを滲ませる.

君と描きたい風景(けしき)がまだ 未完成な間は
もう少し傍に居て Wow あと少し                     涙で滲む約束がまだ 果たせない僕だから
もう少し傍に居て もう本当は聞き飽きてるよね
Wow Wow Wow 君の声が
Wow Wow Wow 夜空に舞う

 曲の最後にも彼らの底に秘めていた自身の心情と気持ちを素直に表現する.そしてSnow Man自身が抱えている主体的な気持ちと共に,今まで応援しているファンたちを想う悔しさをもストレートに彼らは歌に乗せる.

Snow Manを想う気持ち。そして、Snow Manの9人へ...

 何かの本で読んだ話なのだが,かの有名な画家ピカソは「芸術は真実を伝えるための嘘だ」と言っていたらしい.芸術作品には何かしらのメッセージが内包されており,ストレートにそれを言葉で伝えて他者からそれを享受する人に伝えるのではなく,その享受する人自身が自発的にそのメッセージを認識するようさせるために,そのメッセージを芸術という嘘というラッピングで包む.そうボクは解釈している.

 オリジナル曲を与えられた彼らの楽曲を見聴きしていると,従来的な,メッセージをちゃんと歌詞と曲でくるみ,間接的にそれを伝えるという特徴と反し,「誰かの華を咲かせる」行為を長らく行なってきたこととは逆説的に,超ストレートな形でファンに届けてくれる.歴史に裏打ちされたそのメッセージにはSnow Manを応援するファンたち全員の心を突き動かさせるメンバーの心理が存在するとボクはつくづく感じる.

 夢にまで見て,ついには諦めの気持ちも芽生えた「メジャーデビュー」という勲章を得ることができた彼らには存分に自己を解放させて,日本のみならず世界中の人々を熱狂させるグループになってほしい.「誰かの華を咲かせる」のではなく「自分の華を咲かせる」活動に従事してほしい.

 「“咲くま”で何度 眠ればいいのか」と現在進行形の気持ちを「SNOW DREAM」で吐露していた事実を過去のものとしてほしいと,どうしても想ってしまう.


 そして,今年の1月にSnow Manは6人から9人に増員された.今後のSnow Manを能力的にさらに飛躍させるために他のJr.グループから選抜されたメンバーが追加されたのだ.これにはファンから激しい反対意見が噴出したが,8月にとうとうこの9人でのデビューが決定した.

 誰よりもこの増員に混乱したのは,当事者であるSnow Manの初期6人のメンバーだろう.それまではほぼほぼタメのメンバーで構成され,前身グループからの長い付き合いで,酸いも甘いも共に経験してきた世界観のなかに年も違えば異なるフィールドで活躍してきた人たちが入る.

 その後のパフォーマンスを観て,たしかに見映えや迫力でいうと今の方がその質は高い.しかし,それはあくまで外見の彼らの姿であって,チーム力の高さという客観的には捉えにくい概念がそれによってどう作用されているのかというのはなかなか窺い知ることができない.

 Snow Manを特集した『Ride On Time』で深澤は「このグループ(Snow Man)だけはどうしても守りたかった」とっていた.

 ボクは思う.「誰がSnow Manを攻撃しているの?」と.

 彼の認識の中ではSnow Manというグループを守って何が犠牲になったのか,もしその選択に首をタテにふらなかったらグループはどうなっていたのか.敵というのはまさかの事務所なのか...と様々なことを考えさせられる.

 そして,「この増員によって一体誰が幸せになったのだろう」とも最近は思う.

 増員メンバーである蓮やジーコやラウールは当然「嬉しい!!」とはいうが,以前まで彼らは彼らなりの畑を持っていた.その畑を離れ,このグループに参入することになった彼らも当然当惑したに違いない.

 依然として現在でも6人のSnow Manを回顧するファンは多い.「もう過去には戻れない」と言えば現実主義っぽくてまあこれだけでも論は成り立つ気がしなくもないのだが,ボク的には,そろそろ「9人のほうがイイネ!」というポイントを見出すほうにシフトしたほうがいい気がする.

 というのも,ボクはファンとしての自分の心理というよりも,ラウールが心配なのだ.彼のルックスとパフォーマンスは,例え多くのパフォーマーに隠れていてもすぐに見つけ出すことのできるほどの存在感がある.

 しかしラウールはまだ10代半ばの16歳.あまり関わりのなかった大人たちの集団に入り,いきなり日の目を浴びる.高いパフォーマンス性を売りにして歴史も長い中で,彼はそのグループのセンターに抜擢される.容姿も以前まではあどけない15歳だった彼は白に近い金の色に髪の毛を染めた.自身のアイデンティティーの行方を喪失してしまっているのではないかと思ってしまう.


 決して彼のため"だけ"とは言わないが,今後のSnow Manが自身の今まで積み重ねてきた歴史を踏み台に「自分の華を咲かせられる」ように,既存のファンは一旦心を整理させなければならないのではないかと思う.ボクもその当事者だ.

 Snow Manを快くメジャーの世界へ送り出せるよう,新しい彼らの魅力や可能性を引き出し,それを愛でる文化をまず自分の中で構築させることがスノ担の2010年代最後の宿題なのかもしれない.

 

 

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