ミレニアルズ・サウナ・リポート part1

僕のような平成初期に産まれた人々のことをどこかしらの界隈ではミレニアル世代と呼ぶそうです。

特徴としては完璧主義者であることが挙げられるようで、そうなったのはインターネットでのコミュニケーションが盛んで、他者と己を比較する機会が増えたことや、いわゆる「教育ママ」が多く学業やらスポーツやらで結果を出さなければいけないプレッシャーの中で育ったから、と言われているそうです。

結果、他人の失敗を嗤ったり、周囲から浮かないように立ち回る人がこの世代では非常に多いそうです。

僕自身かなりこの性質には心当たりがあり、中学から2chを見て育っていたと言うこともあって、いたずらに他人の悪口を言ったり、早稲田大学の零細サークルが企画したやたら杜撰なミスコンを、Twitterで死ぬほど馬鹿にしてそれが学部にバレ、学校から厳重注意を受けたこともあります。学部の偉い人たち7人くらいに囲まれ、「ズリセンコキ務長官とは君かね?」と言われた日の記憶は今でも脳裏に焼き付いて離れません。


そんな完璧主義者のミレニアル世代たちが、恥も外聞も捨てて、ありのままになれる場所があります。



サウナです。

普段は大学で、オフィスで、飲みの席で、利口ぶっている大人たちが、薄暗い密室で、チンチンを丸出しにし、肌を焼く高温に喘ぎ、咽び、恍惚の表情を浮かべる・・・

端から見れば一見無益にも思えるこの営みに、忙しい日々の間隙を縫い、熱中し、再びチンチンを丸出しにする。そんな、「完璧」とは程遠い景色を観測できる場所・・・それがサウナなのです。

今回の記事は、ミレニアル世代ド真ん中の筆者が初めてサウナに行った際の、今更感溢れるサウナレポです。ここで今更感溢れる、と枕につけてしまうのも「今更サウナレポかよ」と絶対に言わせたくない感じが死ぬほど出てて我ながらクソダサいですね。これがミレニアル所作というヤツです、かわいいですね。


今回行ったサウナ

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錦糸町駅から徒歩1分の所に位置する温泉施設です。最近隣にPARCOが出来ました。

元々昼からスト缶を歩き飲みながら、要領の得ないことを絶叫しているようなタイプの限界老人がメチャクチャ多いカオスな街でしたが、PARCOが出来てからは限界の老人と今風の若者が入り混じり一層カオスに拍車がかかりました。アーバンリサーチでスト缶持ったボロボロの老人を見掛けた時は悪い夢かと思いました。

そんな錦糸町ですが、実は様々な有名店がひしめく郡"湯"割拠なサウナ激戦区のようで、楽天地はその錦糸町の中でもかなり評判の店らしいです。


今回は下記の60分コースに行ってみました。行ってみたと偉そうに言っていますが、今回サウナに行くまではサウナのことを正直死ぬほどナメており、好き好んで蒸し風呂で蒸されに行くサウナ愛好家の方々のことは人間ではなく肉まんだと思っていたので、楽しくなかった時に備えて一番短いコースで入りました。

結論から言うと100時間コースにしておけばよかったです。僕は人間ではなく肉まんに生まれたかった。

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サウナの流れ

各々細かな違いはありますが、サウナを楽しむための王道の手順というがあります。

①入浴前に水分を摂取する

②シャワーで身体を清める

③サウナ室で身体を温める(7〜10分)

④汗を軽く掛け湯で流して水風呂に浸かる(1〜2分)

⑤備え付けのベンチなどで休む(7〜10分)

⑥③〜⑤を繰り返す(3セット程度)

こうすることで、興奮や緊張を司る交感神経と、身体や心をリラックスさせる作用を持つ副交感神経が交互に刺激され、強い快感が得られるそうです。

交互に刺激、というと聞こえは良いですが実態はもっとアホであるらしく、基本的に80℃〜100℃近くあるサウナ室は人体に取って異常な環境で、そのままだと死んでしまうので交感神経が活性化し、ノルアドレナリンなどの脳汁が分泌されているだけだそうです。アホですね。

また、水風呂に入ると高温の身体が冷やされるので、一時的に身体はリラックスしますが、15℃〜20℃くらいの水の浸かり続けていると人間は体温を奪われて死んでしまうので、結局ここでも交感神経が優位となります。アホですね。

そして外気浴と呼ばれる⑤の工程で、異常な環境に置かれていた人体を休めるために副交感神経が一気に活性化し、強烈なリラックス効果を生む、というのがサウナが気持ち良い理屈のようです。(諸説あります)

たまに命綱をつけずに素手でクソ高いビルに登ったりする意味不明な外人がいますが、あれも要はサウナです。あえて死にそうになってみて脳汁を出してるって感じです。捨象すればジェットコースターもサウナですし、戦争だってサウナです。でも、こうやって説明すると、サウナが気持ち良い理由もなんとなく想像できますね。


実際に蒸されてみる

御託はさておき実際にサウナに入った時の話をします。

楽天地のサウナの詳細情報です。

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サウナ室の温度は91℃、間違いなく人間にとって異常な環境です。

入室と同時に尋常ではない熱気が体を包みます。中には恐らくサウナの熟練者と思しき方々が大股を拡げ、陰茎を隠す素振りも見せずに鎮座しています。さながら幻影旅団のようです。幻影旅団との違いと言えば全員が陰茎を露出している点くらいでしょうか。

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実際にサウナ室に設置された椅子に腰掛けます。サウナ室の内部は基本的に木造で、熱を保ちにくいつくりとなってはいますが、それでもかなりの高温です。タオルの敷いていない剥き出しの木に肌が触れると身体がビクリと跳ね上がる程には熱い。

水を打ったような静寂の中、サウナ室に設置されたテレビから聴こえてくるかすかな音声で、サウナ室ではもしもツアーズが流れていることを知ります。僕は一生坂下千里子のもしもツアーズが観たかった。


皆がそうだとは思いませんが、サウナ室の高温の中では何か物を考えようにも暑さで考えがまとまらないので、自ずと身体の感覚に集中することとなります。重さに耐えかねて自分の身体を伝って滴り落ちていく汗の粒や、肌の表面がチリチリと痺れていく感触。熱が少しずつ皮膚を越え、肉を伝い、骨まで届いてくるような感覚に集中していると、いつの間にか時間が経っていきます。

最近の人間、特に社会人なんかは睡眠時間以外は基本的にスマホやらPCやらで視聴覚情報の濁流に晒されています。食事時は言うに及ばず、風呂時や移動時間も音楽を聴いていたりする人も少なく無いはずです。

そんな状況が当たり前になった今日だからこそ、サウナ室で体感する「無」の時間がとても新鮮に思えます。

外からの情報の一切を遮断して、身体感覚だけに意識を集中させる。マインドフルネスやら観察瞑想やらに近い考え方かもしれません。


ただ、そこは室温90℃を越す灼熱のサウナ室。瞑想だなんて生温いことを言っていられる環境ではありません。シッダールタでさえサウナ室の前では一介のパンピー、テニスサークルの大学2年生です。

暑さが人体の許容限界に近づき、徐々にサウナ室で息をするのが苦しくなってきます。空気を吸い込む度、肺のあたりに熱が溜まっていく。喉も渇き、頭もボーッとしてきます。よく分かりませんが、多分ここが絶好の水風呂タイミングです!

急いでサウナ室を後にし、水風呂エリアへ向かいます。当然、サウナ室で存分に蒸された身体は汗まみれなので、水風呂を身体に掛けて汗を流します。この水風呂がまたバカみたいに冷たい!あまりの冷たさに漏れ出る声を抑えることができません。図書館でセックスをしている女子高生みたいな状態のまま、そのまま身体を水風呂に沈めます。

腰まで浸かったあたりで、身体に溜まった熱が一気に水中で炸裂したような、芯が痺れるような快感に襲われます。脊髄から首を通り、後頭部目掛けて冷たさと快感が駆け抜ける感覚に、身体の平衡を保てなくなります。微かな水流でも体が倒れそうになるほどで、さながら風に煽られるアドバルーンのよう。

そう、僕は陰茎を露出し、人前で恍惚の相を晒し、無様に水中を漂う変態アドバルーン。ミレニアム世代でも、完璧主義者でもありません。そこには快楽に溺れた人間の原始の姿のみがあります。


水風呂に身体を沈めてジッとしていると、だんだん冷たさが鈍くなり、温もりの膜が全身を覆っていく感覚が訪れます。界隈ではこの膜を「天使の羽衣」というらしいです。天使の寛大さは貴賎なく、陰茎を露出し快楽に溺れた哀れな僕へさえ、冷たさからの救済を与えます。

そのまま羽衣に包まれ、温もりの寵愛受け続けても良いのですが、あまり長居すると身体が冷え切り、その後の外気浴であまりキマれなくなってしまうそうなので、ほどほどで水風呂から退散します。

ここから先がサウナの真骨頂。外気浴で交感神経を限界まで活性化させた状態から、一気に副交感神経を刺激し身体をリラックス状態に持っていきます。センターオブジアースで言えば最後の下り、丸の内サディスティックで言えば大サビからのアウトロです。


楽天地の浴場には地上9階からの景色を一望できる大窓があり、その窓に沿うようにして椅子が並べられているスペースがあります。
界隈ではこのような場所を「ととのいスペース(原文ママ)」と呼ぶらしく、その有無やクオリティは、サウナの評価へ直結します。それほどととのいスペースはサウナ体験の中で重要な役割を占めています。

一糸纏わぬ状態で、ゆっくりとその椅子へと腰掛けると、まるでそう振る舞うことがあらかじめ身体に刻み込まれていたかのように、自然と目蓋が視界を覆います。その強制力は、強制と呼ぶにはあまりにも優しく、それでいてどうしようもなく抗い難い。


はじめは身体から。疲労とも倦怠ともとれるような、全身から力が抜ける感覚が訪れ、やがてそれは快感として脳に伝わってきます。
思考は曖昧になり、先ほどまで考えていたことや悩んでいたことが白く塗り潰されていき、白昼夢を観ているような眠気が訪れます。

脳は思考を辞め、訪れては去っていく身体的な感覚にのみ精神が集中します。

シャワーの音、空調から吹く風、身体を滑っていく水滴、気化熱で冷めていく肌。身体から感じ取る情報量は圧倒的で、スマホなんか無くとも、時間が一瞬にして過ぎていきます。

おれの身体、エンタメじゃん!!
そんなことを考えながらふと顔自分の顔を触ると、口角が上がっていることに気がつきます。口は力なく開き、目は開くでもなく、閉じるでもなく、ただぼんやりと一点を見つめます。眼球まで腑抜けたのか、視界はピンボケしたように濁り、今の自分は近くも遠くも観たくないのだということを伝えます。

文句無しの快感です。身体はどこまでも椅子に沈み、立ち上がる気など露も起こりません。入浴開始から20分程度しか経っていないのですが、この時点でほぼイキかけてしまっています。
もう一度この快感を味わいたいという欲求が倦怠感に勝る頃、ようやく重い腰を上げます。二回戦の時間です。



恍惚にフラつく足どりをなんとか制して命からがら脱衣所へ。予め買っておいたイオンウォーターを喉に流し込みます。清涼感が喉を通り、胃を通る感触が手に取るようにわかります。汗、思考、悩みや疲労。身体を満たす快感に押し出されるように体外へ出ていった彼らの居たスペースに、イオンウォーターが浸潤していきます。

このイオンウォーターがまた最高に美味い!暑さと発刊で失った水分を体が取り戻そうとしているのか、誇張抜きに1ターンで300mlくらい流し込めます。夏休みの部活終わりで飲んだ、”あの”ポカリの味がして、意味不明な「報われ感」が全身を駆け巡ります。

暑さでボーッとした頭を冷えたイオンウォーターで覚まし、もう一度サウナ室へ向かいます。もう一度あの快感を味わいたい。既に脳ミソは完全に浮かれ切っています。しかし、二周目では一周目の快感が裸足で逃げ出すほどのハチャメチャな快楽が待ち受けているのでした・・・

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