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TrueDure 35 : Pororoca、あるいは生成変化する光

今日は休みだ。外は暑いのでなるべく室内で過ごそうと思う。最近は仕事が忙しくて少し部屋が散らかってきているのでそれの片付けをして、今週末の出張に向けて洗濯をした。洗い終えた衣服を干そうと思って、ふと何か音楽でも聴きながらにしようと、ぼくはPororocaの『シャラズルデイズ』を流した。そしてぼくは洗濯物を干しながらこの曲に感化されて、泣いた。感動的な曲というよりは盛り上がるアッパーな曲である『シャラズルデイズ』で泣くことになろうとは自分でも意外だった。理由は簡単だ、すぐにわかるが、これは喜びの涙である。

せっかくなので何かPororocaで何か書いてみようと思ってこの記事を書いている。ぼくがなぜ泣いたのか、その理由が単純に彼らとの友情と個別的な記憶に関わっていることも分かっている。一方で、ぼくはこの喜びの感情をしっかりと書いておくことが何か大切な気がするので、徹底した友達贔屓で書いてみる、備忘録として。

2023年7月17日にROAD TO ROCK IN JAPAN FES. 2023最終公開オーディションでの結果、今年のロッキンにPororocaの出演が決まった。彼らがバンドを結成した当初から彼らの音楽を聴いて、ライブに行って、歌い踊ってきたぼくにとってとても嬉しい知らせであった。ぼくのように、あるいはそれ以上にPororocaとたくさんの時間を過ごしてきた人たちにとってとても大切な日になっただろうと思う。

彼らの音楽はどの曲も明るい。どの曲にだって光が灯っている。それは小さかったり、大きかったり、暖色だったり、寒色だったり、蛍のような優しさもあれば、陽射しが鏡に反射したような鋭さもあれば、星の瞬きのような恒常さもある。いずれにせよ、彼らの音楽にはどこか光があって明るい。

しかし、それは彼ら自身が素朴に明るい人間であることを意味していない。ぼくが見てきた彼らは弱々しくなったり、背伸びをして見せたり、傷ついたり、不安がったりしてきた。しかし、彼らが作る音楽は懸命に誰かを照らそうとしている。「どのような光ならばあなたが輝くだろうか」と問うているように、彼らの音楽はその時にできるやり方で、光ってみせる。どこかにいる誰かを照らすために。

そんな彼らが作る音楽の光が、多くの人たちを照らしてきた。Pororocaの音楽によって日常の何気ない時間が奇跡化される、あるいはもう戻らない時間が祝福されながら見送られていく。暗い世界の中で、彼らも同様に暗さに飲み込まれそうになりながらも、やはり最後には光ってみせる。それがたとえ弱々しい光であっても、彼らの音楽は光ることをやめない。この光でどこかの誰かが懸命に生きていることを照らせるのであれば、どんな光にだってなる。こうした願いが彼らの音楽には息づいているようにぼくには思われる。

誰かを照らすための光、それがPororocaの音楽が作ってきたものだとぼくには感じられる。そしてぼく自身もまた彼らの音楽によって照らされてきた一人である。そうして彼らが誰かを照らしてきた光は彼ら自身を照らす光となって彼らの元に返ってきた。ぼくが『シャラズルデイズ』を聴いて涙したのはそんな光景が浮かんだからだと思う。彼らが誰かに贈り続けてきた光が、彼ら自身を照らしている。

きっとこれからも世界は暗いだろう。いいことばかりではない。ついつい下駄が引きずられるように足取り重く歩かざるをえない日々もあるだろう。そんなシャラズルな日々の中でもきっとPororocaはどうすればあなたを照らせるだろうかと思い、悩み、そして光ってみせるんだろうと思う。

ひとまずは2023年8月12日、彼らの光に負けない光で彼らを照らし返せるような時間が作れたらいいなとひっそりとぼくは思っている。


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