髪の毛一本、お絵かき、スプーン
ヨイチは夜道を歩いていた。時刻はすでに草木も眠る丑三つ時。時折四方から吹き込む風はさらし首の髪の毛一本一本もたんぽぽの綿毛も等しく揺らす。この町をこの時刻に出歩くのはおおよそヨイチ1人だけであった。夜回りという忌むべき仕事である。ヨイチは身寄りのない孤児であったが、こうして町での暮らしを営めているのも、夜回りという誰もが嫌がる勤めをかってでているからである。とはいえ、この勤めをする以外、ヨイチがこの町で暮らすすべがないだけなのであるが。
ヨイチが夜回りで行う仕事は3つある。