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#254 法隆寺 夏安吾

 私と妻は法隆寺に行き、夏安吾(げあんご)に参加した。

 夏安吾とは、インド仏教の習慣で、僧侶たちが、布施行や托鉢が困難な、雨季(4月~7月)の期間に、一堂に会して学問の修行をしたことが起源となり、その習慣が中国を経て奈良時代以前に日本に伝わったとのことだった。法隆寺の夏安吾では、聖徳太子が注釈された「三経義疏(さんぎょうぎしょ)」をテキストに講義が行われていた。

 私たちは、10時前に三教院・西室にいった。受付を終え、文机にテキストを置いて座った。10名ばかりの人が参加していた。

 広い堂内は、太い四角い柱で支えられていた。引き戸や障子は取り外され、堂内は明るかった。風も堂内を通り抜けていった。

 テキストは漢文で書かれていた。私は、師が読まれた漢文の個所を必死に探した。『仏性』『煩悩』などの深い意味を問う講義で、私には難解だった。前の文机の女性は、熱心にメモを取っていた。

 ボンボンボンと柱時計が11時を告げた。講義は終わり、私たちは席を立った。


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