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司法修習生(弁護士の卵)というプラチナチケット活用のススメ

0.はじめに

 思いっきりニッチな話題ですが、ちょうど司法試験合格発表から間もない時期もあり、是非まとめて記載させていただきたく。
(司法試験受験生時代は、僕を形成した沈んでいた時代なので、いつかそのことも記事にしたいところです)

今回のテーマは、
「充実した司法修習を過ごすには?」
というものになります。

そもそも、司法修習とはなんじゃい?と思われる方にざっくり解説をしますと、法曹三者(弁護士、検察官、裁判官)になるための研修です。驚かれる方も多いのですが、司法試験に合格したらすぐに法曹になれるわけではなく。

研修を受けて、2回試験と呼ばれる丸5日間に渡る、司法試験よりも長時間にわたる手書きの試験をパスしないと法曹になれないのです(とても恐ろしいことに、毎年1%前後の修習生が落第し、法曹になれず留年することになります)。

諸々、医師としての素養を身につけるために研修医制度があるのと同様の研修法曹制度のようなものをイメージすると、分かりやすいかもですね。

オンザジョブのインターンに近いプログラム(@裁判所、検察庁、弁護士事務所)と座学(@司法研修所)が組み合わされたおよそ1年の研修で、僕は、新潟でこのプログラムを受けてきました。スライドにするとこんな感じですね。守秘義務を意識して、一応、各種名称はぼかしてあります。

新潟での修習の様子


この新潟での日々は、とても充実したものでして。最初、修習地が第一希望ではない新潟に決まった時には、ショック&不安 で悲しんでおりましたが。

結果としては、出会いに恵まれ(出会いが全てなので、これは運に恵まれました。プリンス、元気にしてる?)、
今では「早く新潟古町に帰って、日本酒飲みたいなあ」と思うほどです。

現在、東京以外の地方に魅了され、積極的に当該地方の仕事を引き受けるようになったきっかけは、修習時代のこの経験によるところが大きいかなあと感じます。


さて、やや長い前置きになりましたが、本題に入りましょう。


1.司法修習生というプラチナチケットを思いっきり活用しよう

 これは、海外MBAを始めとする学生の特権と似たような話だと思うのですが。「修習生」という立場であれば、どんな偉いポジションの人でも本音で話してもらえます。この立場を思いっきり活用しましょう!!ということです。

この特権を活かす対象は、多くの場合、裁判官、検察官、弁護士と法曹関係者だけに限られてしまうイメージを持ちがちなのですが、実は、全くそれに限定されることありませんよ。そういうことをお伝えしたいのです。

もちろん、例えば、弁護士志望の人間が、特に検察官や裁判官の方とディスカッション場をたくさん持つことは超重要です。司法修習生の時だからこそ聞ける話は、数多くあり、この時を逃すとほぼ聞けるチャンスはありません。例えば、検察官が起訴・不起訴を決めるギリギリの事案について質問をしてみたり、裁判官が、民事でギリギリの判断をする際の思考過程を共有してもらう時間は、法曹人生において一生の財産になると思います。ですので、法曹3者と密な時間を過ごすことは大前提です。Must。Must。Must。
(弁護士になった後、検察官や裁判官の人に本音を聞けるチャンスはまずありませんし、今でも、修習中に検察官や裁判官とディスカッションした時間は、今でも僕の財産になっております)

ただ、法曹3者それに加え、ちょっと変わった研修を自分なりに作り、一生の財産形成を試みるのはいかがでしょうか?今回のnoteの趣旨は、そこにあります。

司法修習生のプラチナチケットを活用できるのは、何も法曹の関係性だけではありません。むしろ、法曹関係者以外にもどんどん広げていきましょう!!

以下、その活用方法の例を記載していきます。


2.企業のインターン的なプログラムに応募してみよう(場合によっては、プログラムを創作してみよう)

 すでに学生の時にインターンされていれば全く問題ないのですが。修習の時まで、タイミングを逸してしまった!! という方にお薦めなのがこれです。

例えば、土日を活用し、(最近はメジャーになりすぎましたが)外資系コンサルティングファームの1dayプログラムや2dayプログラムにも参加するのは結構よかったです。それらプログラムを通して、触りの部分だけではありますが、ビジネスの感覚みたいなものを体感できました。ややぼかしつつも、そこで学んだ内容を記述させていただきますと、

A社
:1チーム4人くらいで、あるBtoCビジネス(ex、結婚式場ビジネス)を手掛ける会社の相談。売上を2倍にする方法を考えて欲しい。チャネルの特殊性を意識すべき、面白い問題でした。

例えば、対策としては、書籍もありますが、視点に関する素晴らしい連載がありますので、導入としては、まずはこちらを是非。こちらを読んで、さらに興味が出てくるようでしたら書籍に移るのでいいかと。
https://www.jp.kearney.com/careers/working-here/KearneyJapanMagazine/structurization

将来にどういう仕事をするにしても、こういう考え方ができるというのはとても大事だと思います。
(僕が学生の時とは異なり、今は投資銀行やコンサルティングファームのノウハウの多くが書籍化されておりますので、興味がある人は是非そちらを。今後、出版ラッシュが続くであろう分野は、PEやVC分野でしょうね。まだブラックボックス状態ですから)

上記の連載が秀逸なので、1つだけ他の例を挙げますと、分析(分けて、比較をする)をする際に、オケージョンで分析する次の考え方などはいくらでも応用がきくと思います(なぜなら、粒度を細かくして検討できるので)。

ターゲットオケージョン分析の発想

ターゲットオケージョン分析活用例


モノの見方をいくつかストックしておくことは、活躍の幅を広げてくれること間違いなしです。

M社
:こちらも1チーム4人くらい。2日間のうち、1日目の午前中は問題解決に関するレクチャーを受け、残りの1日半をかけて、クライアント向けのプレゼン内容とプレゼン実施を実行。お題は、あるBtoCビジネス(ex、飲料品メーカー)を手掛ける会社の新製品を作り、数年後の売上拡大を目指すというもの。

例えば、このファームですと、問題解決に関する書籍が有名でした。「課題」の特定というのは、法曹の世界で生きていく上でも重要だと思いますので。修習を機に、少しでも触れておくのはとっても良いことだと思います。
(「課題」と「問題」の定義の仕方も、本当はいろいろなのですがここでは割愛)

現状とあるべき姿のギャップがあいていることを、仮に、「課題」としますと、日本の憲法判例は、当該ギャップを埋めるためのソリューションであると記述できるでしょう。

判決とは何か


さて、話を戻しまして。当時、修習生という立場の珍しさもあってか、プログラムを通して、多くの人が仲良くしてくれましたし、この時に知り合った縁が今でも続いていたりします。


こういう視点を身につけると、

・良い刑務所の条件って何だろう?(再犯率の低下?それとも社会復帰の度合い?)
・刑務所にシェアみたいな概念ってあるのだろうか?
・裁判が長い理由って何だろう?半分の時間にできないだろうか?律速ポイントはどこに?
・弁護士費用について、新しい契約形態は提案できないだろうか? プライシングによるサービスとの弾力性についての関係はどうなっているのだろうか?

などなど、多くのことが気になってくるはずです。弁護士になった後も役に立つことは間違いなしです。

上記は、コンサルティングファームの例ですが、他にも大企業でも中小企業でも、実際に経営の現場を経験することは長い法曹人生できっと役に立つと思います!!

今は、兼業などとの関係もあると思うのですが、土日や隙間時間などを活用して、コンサルティングファームに限らず、リーガルテックの会社や自分の興味のある会社でインターンプログラムを創設するのはかなり良いのではないでしょうか。僕が今、修習生であれば、リーガルテックの会社にはアプローチすると思います(なぜなら、修習生に理解がある人がたくさんいることが容易に想像できるので)


3.自己開拓プログラムを活用しよう

 修習中は、最大3週間、自分で好きなようにプログラムを作れたのですけれども(今は制度が変わってるかもしれません)。そこで思いっきり個性的なプログラムを作ってみましょうということです。僕の周囲では、

・新聞社で取材同行もするプログラム
・ソフトバンク球団でインターンするプログラム
・リーガルテックを手がけるベンチャーでインターンするプログラム

などなど、本当に様々でした。お薦めの攻め方は、やはり弁護士が所属している組織へのアタックですね。弁護士は、かつて修習生として過ごしてきたわけで。やはり、修習生に対して面倒見が良い人がほとんどだと思います。


さて、本題。僕の場合は、あるツテを使って、某有名コンサルティングファームに関係するバス会社の社長の付き人的なものをさせていただきました。

この時に付き人をさせていただいた経験は、今でも印象に残るものでして。理想的な
「CEO像」
の1つをこの時に学びました。

従業員や部下の方を決して責めないところが、特に印象的でして。
「●●さんは、指摘したり、ミスを怒ったりしないんですか?」
と質問をしましたところ、

「経営者の役割は、元気づけることだからね。変に指摘したってしょうがないよ」

とさらり。今でもこの時の経験を度々思い出しますし、自分の試金石にしているCEO像です。

修習生だからこそ、お願いできたプログラムですし、この時にお世話になった恩を後輩に返さないとなあと、日々身を引き締めております。

修習生というプラチナチケットを活用できた典型例じゃないかなと思っております。


4.他にやることはないの?

 もちろん、そりゃあ、他にやった方がいいことが山盛りなことは間違いないです。選択しなかった法律(租税法、労働法、知的財産法など)の勉強もするべきでしょうし、PC操作に関する研修も可能なら受けるべきでしょうし(ex、パワポ操作)、さらには、海外案件を手掛けることや留学を前提に、英語の勉強だってするべきでしょう(目標は、TOEFL100以上、IELTS7.0以上)。人によっては、ITの資格(IPAの資格試験)や中小企業診断士の勉強をしたいという人もいるはず。何だかんだ、修習生の時が一番時間があるわけですから、やれるならやった方がいいに決まっています。

それでも、個人的見解を押し通させていただけますれば、「その時にしかできないことに集中する」という姿勢で、1・2を優先すべきだと思います。司法試験を突破できるくらいに座学が得意な方であれば、何だかんだ、苦しみながらもペーパー試験はどうにかできると想像しますので。修習生の時にしかできないことは、やはり、人の出会いに代表される経験だと思います。自分の知らないことをたくさん見て、聞いて、体感して、さらには、同期とひたすら一緒に過ごして。そういう時間の方が座学をするよりよほど大切だと思います。

是非、修習生の時にしかできないことに集中し、その後の素敵な法曹人生に備えていただければなと考えております。


5.今後の方向性

 

 さて、ここまでツラツラと記載してみましたものの。あくまでも60期後半(弁護士は、期で分類する文化があります)の人間の戯言にしか過ぎません。

つまり、過去の人間の戯言です。

僕が修習生をやっていた頃と異なり、今では、youtuber弁護士が増え、ツイッターで露出する先生も増え、関連書籍も増え、さらには物理的距離を取り払うZOOMウェビナーなどの機会も増え、多くの情報にアクセスが可能ですので。是非、この世代にしかできない形で、研鑽を重ね、新たな可能性を開拓していただければと思っております!!
(むしろ、僕が新しい世代の方々から学びたいです)

完全に脱線ですが、僕のロースクール同級生の井上拓先生は、こんな感じでyoutuber弁護士やっております。講義の内容やチャンネルの構成もよく考えているだけでなく、熱くて面倒見が良い先生ですので。要チェックな先生です。

井上拓先生のyoutube

以前、別の記事にも引用しましたが、operator、adviser、investerのどれが自分の肌に合うのか、もしくは、今までにないadviserの形を目指すのか、多くの可能性が出てきていると思います。

社会のバランスシートでの位置づけ

オペレーター、アドバイザー、インベスター

 

だいぶ長くなってしまいました。さて、ここまできて今更かよ?と思われるかもしれませんが、念のため、強調させていただきますと、弁護士の仕事は、素晴らしい仕事であるということは大前提です。

弁護士、さらにはアドバイザリー業が超向いている人にとっては、この記事の内容はあまり響かないと思います(ただ、アドバイザリーを続けるにしてもいろんな視点を身につけることは有益だと思います)。

医師が、人の生命を物理的・精神的に救うのに対し、弁護士は、人の生命を社会的に救うわけですから。本当やりがいがあります(僕レベルですら、一生忘れられない現場に何回か立ち会っております)。

それでも、法曹資格を持った上で、

・実は、自分はアドバイザリー以外の方が向いているのかもしれない
・自分の時間の切り売りのアドバイザリー業務に限界を感じるかもしれない
・オペレーターやインベスターで、世の中に直接インパクトを与える仕事をやりたいかもしれない

などの内なる声を感じてしまう方。そんな方々にとってこのnoteは参考になると思います(むしろ、願っておりますし、僕が修習生だった時に知りたかったことを書いたつもりです)。内なる声に従って、早いうちから行動すると、きっと良いことがあるはず!

新しい時代の新しい法曹の在り方を体現してくださる後輩は、すでに登場しているのだろうと思います。そんな後輩の皆様とお話できる時を今から楽しみにしております。

ご連絡やご相談もお気軽に!!!

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