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ある保護者の話

ここ毎年、身近な人の旅立ちを見送っている。

別れは辛い。

自分が歳をとったからか・・・。

いや、そうではないはず。

旅立った故人は、皆、まだまだ若かった。


別れは、前触れもなく唐突に訪れる。

先日も訃報を受け取った。

教え子のお母さんが逝去された。

早すぎる50代前半での別れ。

保護者として、とても尊敬できる方だった。

社長夫人として、いつも整えた身なりで、とても存在感があった。

忖度なしに、いつも真っ直ぐにモノを言うパワフルさがあり、懇談のたびに担任として圧倒された記憶がある。

笑顔がチャーミングな方で、息子想い、家族想いのお母さんだった。

子どもが在学中、必ず懇談に出てくれたし、最終的にはPTAの副会長も受けてくれた。

会うたびにいつも

「先生!頑張ってね!応援してるわ!」

「むすめちゃん、かわいいわね!SNSで見てるわよ!」

と激励された。

特に印象に残っているのは

「先生は、息子の担任だけど、家では2人のかわいいむすめちゃんの父親なの。だから、家族を一番に大切になさい。」

担任の家庭のことまで気遣いできる懐の広さに、心底感銘を受けた。


一昨年から、闘病生活を送っていたとのこと。

元気なお母さん代表みたいな方だったので、訃報を受け、最初信じることができなかった。

だけど、「余命一年」を2年以上も延ばし銀婚式までたどり着き、医者の常識を覆したという話を聞き、やっぱりすごい人だなぁと感動した。


お通夜に行った。

喪主である旦那さんの、妻への深い愛情を感じた。

2人の息子とも私が担任だったこともあり、久しぶりの対面に悲しさはありつつも、お互い笑顔も見えた。

長居すると、色々込み上げてきそうだったので、早々に会場を後にした。

香典返しのお礼状には、夫から妻への最後のラブレターがしたためられていた。

とても素敵な文章だった。

はっとさせられた一文があった。

そこには、ぼくに会うたび激励してくれたように、いつも夫を励ます妻の姿が書かれていた。



白い花に埋め尽くされた、とても大きな遺影。

美しく、凛としたたたずまいで、にっこり笑顔のお母さん。

体力あるうちに遺影を撮りたい、と撮影されたそうだ。

太陽みたいに明るい人だった。


Rくん、Nくん、お母さんは君たちの誇りだね。

お母さんと過ごした日々の思い出を大切に。

ぼくも、君たちのお母さんみたいに、誰かを励ます人でありたい。



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