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ワークライフバランスを"高い次元で"実現するためには

こんにちは、長洲 (@koki_nagasu) です。

私はこれまで複数の毛色の違う企業で働いてきました。

超激務な投資銀行 (1.5年)

超激務なコンサルティングファーム (3年)

自由度そこそこ ✗ 忙しさそこそこな大企業 (3年)

自由と責任がともに重くパスされるスタートアップ (現職)

キャリア遍歴

幸いなことに超激務で心身を壊すこともその後の大企業でうんざりすることもスタートアップで燃え尽き症候群になることもなく健やかに過ごしておりますが、新たな環境に身を置く度に「自分は仕事とどう関わっていきたいのか?公私をどうバランスさせるか?」を自問したうえでその組織に順応しててきました。
そこで辿り着いた結論は、ワークライフバランスって"高い次元で"実現してナンボだよね、ということです。少なくとも自分にとっては「9-17時で残業ゼロの年間休日125日、手取り30万円」はバランスこそしているかもしれないが人生を謳歌するに足る水準ではないと考えています。

ここでは、高い次元のワークライフバランスとは何か、それを実現するために何をすべきかについて私見をまとめます。主にコンサルティングファームやスタートアップで日々仕事にコミットしている方 (特に若手) 向けの内容になるかなと思います。

高い次元でのワークライフバランスとは

ここ数年、ワークライフバランスを求めている声が強まっています。
一緒に働いてきた同僚や後輩もそうですが、最近では新卒就職活動時の業界・企業選定軸の上位にも入っています。現在副業 (半分趣味) で東大・京大・早大の就活生のコーチをしていますが、彼らも最初は同様に「定時帰りで500万円」くらいの希望でした。情報が溢れており自ら経験する前から何となく雰囲気や負の部分を理解したつもりになってしまっていること、余暇に大した金額を払わず楽しめるコンテンツが増えてきていることなども背景にあるかと思いますが、本論ではないので割愛します。

そのようにワークライフバランスを求めることがメインストリームとなりつつあるにも関わらず、中小ホワイト企業や公務員に人が集まっているわけではありません。例えば地方公務員試験の受験者数は過去十年ほぼ減少の一途を辿っています。

中小ホワイト企業の発信力の低さといった要因ももちろんありますが、その根本的な理由はワーク・ライフそれぞれに幸福と感じる閾値があり、バランス以前にまずはその閾値に達することが大前提であるからであると考えています。その閾値を超えた上でバランスさせることを高い次元でのワークライフバランスと定義しています。

Lifeが満足いく水準でなければバランスしても意味がない

ワークライフバランスの構成要素

・ワークにおける幸福度=やりがい ✗ 収入
・ライフにおける幸福度=使える金 ✗ 時間 ✗ 金と時間の投入先
であるとするならば、ワークライフバランスの構成要素は以下の3つである程度語ることができそうです。

① 金と時間を投入する価値のある「人生を充実させる何か」をもっている
② やりがいのある仕事で ① に足るだけの正当な報酬が受けられる
③ 仕事にコミットしながらも ① に足るだけの時間が残されている

ワークライフバランスの三要素

それでは、①〜③を満たすために具体的に何をすべきかまとめてみます。

① 人生を充実させる何かを持とう

これは特に大それたことではありません。一番簡単に、かつ確実に人生を充実させるものとは、趣味です。

とにかく趣味を持ってください。

ここでいう趣味の要件は唯一つ、疲れを忘れるレベルで没入できるものです。インドアだとかアウトドアだとか、体を動かすとか動かさないだとかは一切どうでも良いです。Netflixでも構いません。

大事なのは「この週末仕事なんかしている場合じゃねぇ」と思えることで、それがワークライフバランスの出発点です。これがないと週末もダラダラ仕事をし続け、月曜日ちょっと楽になるかもしれないがトータル疲れと淀みが溜まり続けるアンバランスな日々を送ることになります。
アフター5や週末に楽しみたいものがあって初めて人は最速・最大効率で働くインセンティブが生まれ実践していくものです。

また、激務界隈では週末にやることがなくとにかく眠ることで回復を図る方も多いですがおすすめしません。ただの回復はマイナスをゼロに戻す効果しかありませんし、しかも大抵はゼロまで回復せず持ち越すことになります。

定期的にがっつりプラスに持っていかないとジリ貧

投資銀行時代は
平日:8:30出社で27:00-28:00退社
休日:土日のどちらかは8時間以上勤務
みたいな生活を送っていましたが、心身に異常をきたすのは決まって休日を回復 (高級ディナー&睡眠) に充てていた人たちでした。幸い同期には心を病んだ人はいませんでしたが、新卒1~2年目にして激太りしたり健康診断の数値が悪化したりしていました。オーダースーツの買い替え頻度が…

傾向としてプライベートでアクティブな人から転職していきましたが、
残った組も出世し圧倒的な収入とある程度まともな余暇を手に入れておりそれぞれ幸福ではある

特にスタートアップでは仕事自体が趣味といえるほど会社の成長を楽しみにしている人もいますが、果敢なチャレンジをすればするだけ必ずどこかでスタックしたり辛い状況に見舞われる時が来ます。そのときに心の拠り所がひとつしかないのはポートフォリオ・マネジメントとして悪手なので、ぜひ仕事が楽しくてしょうがない人も趣味は持っておくことをおすすめします。
いわゆるエグゼクティブがゴルフや筋トレやトライアスロンに傾倒するのも、職位が上がり経営に携わると仕事の成果が自身の努力に比例しなくなっていく (不確定要素が増える) ことが一因であると言われています。「やればやるだけ成果が出る」ポイントを仕事以外に求めることで心身の健康を保っているのでしょう。 

②③ 正しいステップで仕事の成果を出そう

高い次元でワークライフバランスを実現するには、当然ワーク側も充実させる必要があります。
一旦、ワークが充実している状態を
・やりがいがあるチャレンジングな仕事を担い
・それを土日返上せずにリーズナブルな時間で完遂させ
・その仕事が評価され年収に反映される
と定義し、その状態に辿り着くために必要なステップを整理します。

step0. 身を置く環境を批判的にチェックする

自身のキャパを大きく超える業務量が恒常的にあったり、自分がどれだけ正しく頑張っても評価されなかったり、評価されても言葉だけで報酬に反映されなかったり…
そういった環境ではワークライフバランスを高い次元で実現することはそもそも難しいので、自身にとって何が大事かを改めて整理し、身を置き続けるかも含めて再考したほうが良いでしょう。もはや「石の上にも三年」という時代ではありません。大抵の場合、石の上で三年頑張るよりのびのび羽ばたける環境で一年頑張る方が成長できます

step1. 信頼残高を貯める

何よりも大切なことです。当たり前の話ですが、信頼されればこそやりがいある仕事を任せてもらえますし成長チャンスがより多く巡ってきます。

では、そんな信頼残高はどのようにすれば貯まるのでしょうか?

スモールサクセスや凡事徹底といったこともありますが、最も重要なのは「約束を守る」ということです。
誰もがそんなことは当たり前だと思うでしょうが、経験上実際にできている方はけっこう少ないと感じています。振り返れば私自身コンサルティングファームのジュニアだった頃は何度も約束を違えました。

業務上の約束とは「期限内に合意したレベルの成果を出す」ことです。合意した品質のアウトプットを完成させると言い換えることもできます。つまり、合意形成時に明確に「見込みに届かなくてもOK」と言われない限り、成果・アウトプットが見込みに届かなかった時点で約束を違えたことと同義です。期限が守られない場合は言わずもがなです。
といっても、「じゃあ成果をあげよう!高い品質のアウトプットを出そう!」と言って今すぐどうこうなるものでもないかと思います。

では今すぐできることは何か?
それは守れる約束をすることです。

守れる約束をするとは、別に期待値コントロールを保守的にせよということではありません。やるべきことは以下の2点です。

① 業務依頼を受けた瞬間に「今すぐ動けるか・ゴールへの道筋は描けているか・ゴールへ辿り着けそうか」を自問する

② 期待・見込みに届くことが難しいと感じたら大怪我を回避するために確実に守れる約束を依頼してきた側に提示し合意する

「守れる約束をする」はアクションなので、自身でコントロールできます。この点が「約束を守る」との違いです。

①は基本動作として徹底する前提で、お伝えしたいのは②の重要性です。

成果を残せていない人ほど、失望されることを恐れるがあまり達成のイメージがわいていない状態でとりあえず「わかりました、頑張ります」といった仕事の受け方をして期限間近に破綻することがままあります。そして失った信頼を取り戻そうと無理をして…の負のループが完成します。

そんな悲劇を回避するためにも、少しでも怪しかったら達成確度を高めるために絶対にできるアクションを提示して下さい
たとえば「一旦咀嚼して疑問点があればテキストで質問します」とか「認識ズレがないよう、今日中にアウトラインだけ作成するので明朝15分確認の時間ください」とかです。
これをやるだけで依頼者 (マネージャー) からすると気づいたら破綻している危険性がなくなるので安心して一旦任せてくれます。逆に信頼残高がないうちにこれを怠ると、マネージャーからするとマイクロマネジメントをせざるを得ません。マネージャーはまず何よりもチームが成果を出すことを担保しなければならないからです。経験上マイクロマネジメントは本当に誰も幸せにしないので、徹底的に回避しましょう。

step2. 積極的に残高を切り崩す (=チャレンジする)

貯蓄から投資へ、です。
信頼残高を貯めっぱなしにしても何の意味もありません。また、できる仕事ばかり繰り返していてはそれ以上積み増されることもありません。
積み上げた信頼をレバレッジしてよりタフで面白い仕事を取りに行きましょう。そのチャレンジはさらなる信頼残高となり、それはいずれ評価 (給与) となり、さらにはご自身のビジネスパーソンとしての市場価値向上に繋がっていきます。社内での信頼残高すら積めない方には、社外含めた市場価値を高めることは決してできません

step3. 自分の実力を正確に把握する

step1,2と並行して、自分の実力を過大/過小評価せず正確に把握することが非常に重要です。なぜならばそれがないと「自分がどの約束は守れるのか」「どういうレベルの残高投資ならできそう (できる可能性がある) なのか」が分からないからです。
特に、日々の仕事の中で「時間ないしこれくらいで良いかな (やれるだけやったよな) 」とか「まあどうせ上長のコメントはいるしこれくらいでさっさと出しておいた方が効率的だよな」というコスパ重視という名の"妥協"の動きをしている方は要注意です。自分のことをやればできる子と過大評価している可能性があり、土壇場で破綻して (確固たる理由なく積んでいたまやかしの) 信頼がなくなる危険性があります。

自分の実力を正しく把握するには、以下の2つのアプローチを両方やるのが吉です。前者は能力を、後者は効率性 (馬力) を把握し高めるイメージです。

1. 時間を無限にしてトライする

ひとつの業務に対して徹底的に時間を使い、「もうこれ以上どれだけ時間を使っても質は上がらない」というアウトプットを出してレビューを受ける

そのアウトプットが100点満点ならあとはスピードを上げるだけだし、それは絶対にできます。逆にもし100点満点でなければ、ご自身の知識/能力としてなにかが足らないということです。フィードバックを真摯に受け止め改善しましょう。

2. 構造的に時間を制限する

要すると「働く前に遊ぶ」ということ
たとえばコアタイム後は一旦手を止め趣味の時間を設け、そのあとに残された時間で改めて仕事をする

時間を強制的に制限することで業務の密度が高まるとともに、1,2ヶ月もすれば自分が本気で集中すればどの程度のスピードでアウトプットを出すことができるかを把握することができます。

BCG在籍時、マネージャーにお願いして一時的にタスクを絞って1つのタスクに全力投球したうえでレビューを受けるということをやっていました。自分では考え抜いたつもりでも秒で穴を見抜かれ冷や汗をかく経験はなかなか辛かったですが、その後の大きな財産になっています。

また、仕事の前に趣味に時間を使うのは個人的に非常におすすめです。
夜中や休日にダラダラ働いていませんか?
「平日を穏やかに過ごすためのプレ月」と言えば聞こえは良いですが、土日の48時間も生まれれば大抵余裕になってしまい、結果プレ月の生産性は低く仕事以外にできるはずだった何かを犠牲にしてしまっています。

どうせ仕事はやるものなので、先に趣味等に時間を使ってしまったほうがトータルで両方できる可能性が高まります。そしてそれこそが高い次元のワークライフバランスに近づくひとつの方法です。
また、「自分がどの程度時間をかければどの程度のアウトプットが出せるか」が分かるようになるので、適切なスケジュール管理をできるようになるし、結果として (神経が図太くなり) 仕事が残っていてもマインドシェアを奪われずに心から趣味に興じることができるようになります。
正直言えば私も過去2,3回は趣味に時間を使いすぎた結果「やべ、間に合わないかも…」となったことがありますが、それまでの信頼残高で許してもらったり事前に守れる約束をしていたことで軌道修正ができたりして乗り切ることができています。こういったことからも日々の信頼残高がいかに大切かということが分かるかと思います。

さいごに

ワークライフバランスを高い次元で実現するには心理的安全性を担保しつつチャレンジして世界を拡げていくことが重要であり、それにはメンバー&マネージャー双方の協力が不可欠であることをご認識いただければと思います。

また、何をするにも信頼残高が大事なので、まずは一緒に働く人との約束に対して誠実でありましょう。
現在成果を出せている人もそうでない人もまずはそこからです。

そのために、漫然と指示/依頼されたことを鵜呑みにするのではなく、「どんな約束をするか」から考えて自らの業務の主導権を手放さないようにしてください。

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