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創業社長と初期メンバーのインセンティブの不一致

はじめに

「創業社長」と「初期メンバー」は手を取りあって頑張って、成功をわけあうイメージは大きい。ただ、日々とか短期(半年-1年)の働きにおいては、そのインセンティブというのは思った以上に揃ってないのではないかということを思ったので書く

会社の長期的成長へのインセンティブを揃えるためのSO

スタートアップでは、従業員の数が少ないこともあり、(基本的に)大株主である創業社長とメンバーの距離は近く、創業者の「こういう世界が作りたい!こういうプロダクトを出そう!」という課題意識に対して、しんどくても共感して頑張るというモチベーションが湧きやすい

とはいえ人間なのでモチベーションだけでは続かない。そこで出てくるのがストックオプションである。最近は、スタートアップもストックオプションについてのリテラシーが上がっているので、初期メンバーに近ければ近いほど、可能性としては大きく跳ねうる株式をもらえることもあると思う

これらのモチベーション + インセンティブがあると、スタートアップでは、いわゆる大企業にいるよりも、平均的に、日々ヘルシーな状態で仕事ができる確率はあがると思う。しかも最近は、スタートアップの給与水準も上昇傾向にあるので、(なかなかコンサルはじめプロフェッショナルファームほどとは難しいが)500-600万というよりも、800万とかそれ以上、という水準も珍しくなくなってきたように感じる

初期メンバーともなると、かなり自分ごと感も人一倍高いので、必ずしも高いポジションにいるからということに限らず、会社へのコミット度は高いケースが多いと思う。小さかった会社が、何年か働くうちに大きくなり、注目もされてくると尚更だ

手放しにタレントを歓迎する創業社長と、必ずしもそうでない初期社員

そうして、会社が成長のペースを掴んできた際に、創業期から頑張ってきた、非株主(or SOがあってもそれほど大きいポーションじゃない場合)の初期社員にとって難しい場面が生じることがある。〇〇部長とか、△△執行役員というような、鳴り物入りの人材を中途で採用する場面が増える局面だ。会社がうまく成長してくると、ピカピカ(キラキラ?)っぽい人も、給与を下げてでも入社してくれるようになる。創業社長としては嬉しい話だ。前職での功績もあり、数年前にはきっと入ってくれなかったような人が、ぜひ入りたい、と言ってくれる。会社にとってもよい話だ。もちろんピカピカな人が皆活躍できるとは限らない。でも、そうした人材が貢献できる余地は多分にある

初期社員にとっても、基本的には良い話である。自分の愛着をもって、自分ごと化している会社が一歩進むきっかけになるし、自分もSOを持っているので、原理的には、それで会社が大きくなれば、自分にとってもリターンがあるということになる。いわゆる大企業において、どこの馬の骨かわからない人(失礼)が急に入ってきて上司になるケースに比べて、論理的には、たしかに自分と社長(や、上席にいる人間)の間に階層は増えるかもしれないが、自分にもリターンのある話になりうる

難しいのは、SOというものはどこまでいってもよくわからんものであり(すでに上場していて値がついているケースはまた別)、上場するまで、そしてロックアップ期間が解けるまで、1円にもならないということだ。仮に会社がうまくいってても、必ずしも早く上場することが事業にとってプラスになるわけでもなく、最近は非上場で大きくなってからゆっくり上場しようという会社も多い(これ自体は良い傾向だと思う)。なので、前述の、中途でピカピカの人が入ってきた際の足元(半年-1年など)のスパンでの影響は、レポートしなくてはいけない対象が増えるとか、自分が頑張って学びながらやってきたことよりも良いアウトプットを出すかもしれないとか、その人が働く上で心理的安全性が下がるリスクも、実はかなり多い

顕在化するギャップ

創業社長としては、その新しい人Bが入ってきたことによりもたらされる業績への影響も嬉しいし、それによって以前からいるメンバーがプレッシャーを感じている状況も、どちらも好ましいものに映るだろう。初期メンバーAと話しても、多くの場合、初期メンバーも優秀な人であれば、その人が入る意味を理解しているので、納得感がないわけではない。それでもやはり。仕事における能力値は、コンサルのように極度に同質性が保たれている環境ならさておき、一様にドラゴンボールのスカウターのように定量化できるものではない。プレゼン力、語学力、ロジカルさなど、目立ちやすいスキルもある。でも、多くの場合総合格闘技なので、一様にA<Bなどと決めつけるのは難しい。きっと初期社員Bはモヤモヤを抱えながらも、でも以後も頑張っていくのだろうと思う

会社として魅力があり、良きマインドをもった社員が多いスタートアップでは、いわゆる大企業と比べて、自分のポジションに固執する人は少なく、個人の事情<会社の成長という、会社(≒株主)にとっては好都合な人が相対的に多いのでないかと思う。スタートアップといっても、創業者以外は基本的にサラリーマンと何ら変わりなく(悪い意味ではない)、日々のモチベーションのうちで、自分がユニークな価値を出しているか、認められているか、固定給(+ボーナス)がどう変動するかといった要素が占める割合は少なくないはず。なので、特に成長の軌道にのってきたスタートアップほど、随所ではこうしたギャップが生まれているのだろうと推察する

創業社長はどうすべきか?

正直、あまり経歴とかピカピカさに引っ張られることに意味はないと思うが、初期メンバーに配慮して、事業の成長に本当に必要な人材を組み入れることを恐れるべきではない。初期メンバーと言っても、(大株主ではあるものの)初期のリスクを全身で負っている人間とは別物である(繰り返すが、基本的にサラリーマンである)

提供すべき・考えるべきは、急にふわっとしたものになってしまうが、配慮だと思う。「SOをあと1%あげる」(ので、より長期的リターンにアラインしてますよね)という話を理詰めで話すのではなく、これまでの働きのどの部分に感謝をしていて、そのうちのここは今後も期待していて、今度入ってくる人はこれこれだから入ってもらうということを、ちょっと丁寧に話し過ぎかな?と思う量の4倍くらい話す。飲みに行くというのも一つかもしれないし、別にそうせずとも、対話を複数回して、配慮を示すということの効用は、思った以上に高いのでないかと思う

アメリカであれば、正直こうしたSOといったリターンはダイレクトにインセンティブ・モチベーションに響く。一方日本では、良くも悪くも、共同体としての会社というものの中で快適に働きたいという気持ちは強い。これは(日本における)外資系の会社でも、スタートアップでもあまり関係はない。ので、この点を意識して、対応していくことが最適なリテンションに近づくのでないかと考える




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