【愛】2023年 inuhaさんのあゆみ【永久保存版】
(サムネイル画像はinuhaさんご本人より使用許可頂きました!心より感謝申し上げます🙇♂️)
はじめに
初日投稿!?出来らあっ!!!!!!
改めまして、VOCALOID Listening Nerd(ボカロリスナー)の苔氏(こけし)と申します。当記事はobscure.氏主催の「 #ボカロリスナーアドベントカレンダー2023 」参加記事になります。今年も本企画の実施、大変お疲れ様です!
早速、初手イキりからお届けした当記事ですが、苔氏によるnoteの投稿は実に1年振り...2022年のアドカレ振りなものでして、普段長文の媒体で魅せる機会の無い苔氏としては、こういう時こそ先陣を切って企画に参加せにゃならん、と思った次第です。
と言いつつも、当記事は普段から苔氏が𝕏(旧𝑻𝒘𝒊𝒕𝒕𝒆𝒓)にて発信している#ぼかれびゅのような内容を、当記事用に書き下ろし、まとめたものになりますから、1つ1つの項目については、あなたが今回紹介する作品について新たな視点を以て親しみたいと思った時、コラムのような感覚で読みに来て頂ければ幸いです。
( #ぼかれびゅ :ボカロ曲に対する所感を、短〜中文のレビュー形式にした投稿を集積したハッシュタグ)
inuhaさんの軌跡
inuhaさんは、2021/05/05『居眠りくん』でデビューした、その豊富な作風と世界観に加え、非常に多作な事から昨年初頭より注目を寄せられているボカロPです。現在(12/01)までに投稿されたオリジナル曲は実に62曲にのぼり、その他のリリースも含めれば発表した楽曲は70曲に迫る勢いです。
苔氏のinuhaさんとの出会いはまさに初投稿「居眠りくん」であり、個人的にとても親しみやすいポップロックに出会えた事の感動を、当時の言葉でツイートに残しております。
それ以降徐々に新たな個性を獲得していく中で、2022/01/03投稿の『ハスキー』に非常に強い衝撃を受けました。オルタナティブロックの枠の中で、途中テンポを変化させる事で本作の中心である"ハスキー"の歩調・感情、そしてそれを取り巻く生活にまで想像を拡げていくアプローチが、当時のボカロシーンでは個人的にかなり新鮮でした。同時に、言葉の節々に溢れる繊細な優しさに、思わず少し涙を流したのを覚えています😭
苔氏はロックバンドであるスピッツをこよなく愛しています。その根幹にあるロック魂と人を心から思える繊細さの部分に、苔氏はこの時inuhaさんに非常に共鳴するものを感じたのだと思います。実際、inuhaさん本人の口からスピッツのファンである旨を聴けた時は、思わず大微笑みを浮かべると共に、胸の底が熱くなるのを感じました。
その後もシューゲイザーを作風の軸としながら、様々な驚くべき発想を取り入れ、次々と自身の個性を更新していきます。それでいて、非常に解像度の高い情景描写の中で、「僕」の世界から見たただ1人の特別な存在への率直な言葉を紡いでいく、inuhaさん独自の表現の軸は決してぶれる事無く描き続けている。この点こそが、inuhaさんを永く愛し続けたいと心より願える最大の理由であると考えています。
また、2022年中にはみとう。さんとタッグを組んだユニット「視聴履歴」として、ボーマス49にて初の作品集『視聴履歴の視聴履歴』をリリースしました。そこで初めてinuhaさん・みとう。さんにお会いし、上手く気持ちを伝えられた自身はありませんが、この経験は生涯忘れる事はありません。
そんな1年を得て2023年、inuhaさんは更に革命的とも言える新たな表現を次々と開拓していきました。ここに決して誇張の意思は無く、寧ろ言葉では語り尽くせないほど多くの感動を、inuhaさんから頂いてきました。そんなinuhaさんの魅力をほんの指先程度でもお伝えすべく、当記事を書きました。前置きが長くなりましたが、少しでも気になるタイトルがあれば、是非とも楽曲を聴きながら苔氏のレビューをご覧ください。
※当記事は、一部『無色透名祭Ⅱ』のネタバレを含みます。
2023年 投稿楽曲一覧
注1:ページの軽量化のため、楽曲のURLはニコニコ動画のみの記載とさせて頂きます。
注2:★サブスク配信あり
01.★家出 (01/29投稿)
2023年最初の投稿曲。この時点から既に、
▶エレクトロニカ×シューゲイザーの融合
▶残響に溶け込むサビのボーカル処理
といった、氏の新たな可能性を感じさせるアプローチが満載な作品となっている。
本作は、Aメロ→サビで1番を終えた後、インターリュードを経て1サビと同様のフレーズをもう一度繰り返す構成になっている。
個人的に、氏の様々な魅力のうち1つはこの"反復表現"にあると考えている。氏の作品における"歌詞の量"は比較的ミニマルにまとまっている事が多く、その上でこの繰り返し表現がある事により、
▶最も伝えたい感情・主題の強調
▶同一の歌詞・フレーズの再登場による意味の変容
等の効果をもたらす事がある。本作においては前者の効果が強く現れており、Aメロで本作の背景情報である"家出"の模様を儚げに描いた後、
ーいつか君のことさえ忘れていく
だけどまたどこかで思い出すと
そう確信しているよ
と、瞳に光の見えるような確信の言葉を4回繰り返す。加えて、サビの導入に残響に埋もれるようなボーカル処理が施される事で、よりこのフレーズは我々に強烈な印象を残していく。自由を得た主人公の、強い感情の発露を描いた印象深い作品である。
02.★不登校 (02/07投稿)
前作より更にミニマルかつ、閉塞感の漂う歌詞を、トンネルを列車の抜けていくような残響感と疾走感を湛えたシューゲイザーに乗せていく。
ー君の幸せを願うことしかできない
生きることも死ぬことも諦められない
そんな歌を歌うよ
本作のサビの繰り返しは、先述したような、1サビと2サビでその意味や包含する感情の変容していく表現であるように感じられる。
Aメロに続く1サビは、まだ現実に対する無力感をどこか引き摺ったような重たい心地に満ちているが、開放的なスケール感のバンドサウンドに伴って、2サビでは我武者羅で一途な愛情表現として、言霊を放つようなより純粋な熱量が伝わるように感じられる。歌詞にしない部分にもこれだけのニュアンスが感じられる、氏の表現力が存分に発揮された作品である。
03.幽霊 (02/17投稿)
本作が投稿された時、苔氏は雷に打たれたような衝撃を受けた。自然と涙が溢れた————。
ボカロシーンにおいて時節問わず描かれる事の多い"夏"テーマの楽曲であるが、本作には苔氏自身が"夏"概念の作品に追い求める情景・記憶・情緒の全てが凝縮されていると、自信を持って断言出来る。
ー君に会えてよかったよ
僕のいない夏を楽しんでね
夏の閉じゆく空気の中、夏真っ盛りの記憶を豊かな感性で感じたままに描き出した後、突如告げられる別離の言葉。それまでの鮮やかな思い出が、独りの世界で築き上げた理想であった事、そしてタイトルの意味を、読み手はこの瞬間認識するのである。
間も無いうちに降り注ぐ、実際に花火を仰いでいるかのような身体の奥に響き渡る爆発音。演出1つで、それまで存在しなかった筈の夏の記憶が、『幽霊』の僅か6行の歌詞によって塗り替えられていく。こんな音楽体験は生まれて初めてだった。この現実世界から物語の世界へ取り込まれるような体験を、音楽的アプローチ1本で成し遂げる。映像に表さないからこそ無限の想像を掻き立てる、物語作品において体系化されてきた"夏の終わり"概念の1つの到達点であると強く確信を持った作品である。
04.★南極にいるみたい (03/18投稿)
ボカコレ2023春参加作品。ルーキー部門への最後の参加作品であり、また後に発売される1st EP『ひとり』のリードトラックとなる。
残響系のギターとトロニカ系の電子音という、奔流と静寂の対を成すサウンドのレイヤーを互いに折り重ねる事で、爆発的なスケール感を演出している本作は、氏の主要ジャンルであるシューゲイザー・エレクトロニカを非常に高度な次元で融合した、氏の音楽性の結晶とも言うべき作品である。
この構成が示すように、歌詞の中にも「無と有」「美と醜」「静と動」といった様々な対となる概念が描かれている。
ー僕はひとり取り残されて
なぜかやけに悲しい夜で
ー君がいるなら 大丈夫...!
全体を通しても、閉じた心象が光に向かって開放される様が曲調とリンクして描写されており、聴く者の心にも風が吹き始める。"君"という存在が、"僕"にとって世界を揺るがすほどの確固たる存在である事を描く、力強い無垢さの象徴と言える作品である。
05.奇跡にはなれない (03/31投稿)
氏の作風の根幹がロックである事は大前提に、中でも本作は率直なバンドサウンドを強調した構成となっている。
特に本作のドラムは重要な役割を果たしており、イントロ〜Aメロの疾走感ある展開から、サビの半テンによって生まれる痺れるようなエモーショナルを、是非一度体感して欲しい。2:30〜のリズムパターンとギターの一体となったフレーズも美しい。
ー君の人生を変えちゃうような奇跡にはなれないけれど
"君"というかけがえの無い存在を前にしても尚、心に差す一筋の陰り。ただ1つの存在に縋るほどに、それを失う事への恐れも強まっていく。同時に、自分自身は君にとっての"特別"であれるだろうかと、宙に浮いたままの妄想は膨らんでいく。そんな行く宛の無い不安が、この一節に凝縮されている。
ー帰りの電車で言う 君に会えてよかったよ
返事がない ...って寝てるし
そういった後ろ向きな感情を抱えながらも、最後には今この瞬間"君"と居られる事の尊さを噛み締めるような、温もりの滲むフレーズで締め括る。その温もりはありふれたものかもしれないが、この瞬間、その熱を分かち合うのはただ2人だけである。
06.★1st EP『ひとり』(04/01リリース)
前述の楽曲『南極にいるみたい』をリードトラックとした、氏の計4曲から成る1st EP。春めく空気感の楽曲を中心に、全体としては『南極にいるみたい』のストーリーをなぞるような構成となっている。
Tr.01『南極にいるみたい』
Tr.02『カラフル』
Tr.03『桜』
Tr.04『ひとりにはさせない』
▶Tr.02『カラフル』
全体的にアップテンポなバンドサウンドで、収録曲の中でも一際キャッチーな仕上がりのポップロック。ラスサビ前と後の、疾走感を増幅させるキメのフレーズが爽快である。
そこに乗せるように描かれる歌詞も、青春期の抑え切れない高揚感を彩りを込めて表しており、諸所に終わりゆく事への切なさを散りばめる事で、一層その刹那的な煌めきを際立たせている。人の記憶は、やはり散り際が最も鮮烈な輝きを放つように思われる。「千切れそうな日々の記憶」をリフレインでフラッシュバックするように描きながらも、そこに付随する高揚感は、全く色褪せる事が無い。
▶Tr.03『桜』
リリース時期にピッタリなタイトルを冠しつつ、その晴れやかさに馴染み切れないまま過ぎた青春期の憂いを滲ませるシューゲイザー。
薄桃色に染められたように暖かな残響感の中で、「生きている」事に凭れかかったまま過ごした青春の日々が高い解像度で描かれる。そんな憂鬱な日々が忘れられないままでいるのは、吸い込まれるほどに鮮やかな「君の瞳」に魅入られたからだろうか。憂いに満ちつつも一筋の希望を宿した"春"は、過ぎ去ってしまった今でもその心を生に繋ぎ止めているのかもしれない。
▶Tr.04『ひとりにはさせない』
イントロから冷たい空気の反響を感じさせるサウンドに、暖かなメロディーが折り重なる花びらのように彩りを添えていく。「ひとりにはさせない」、運命を共にしようと誓う信念から紡がれる言葉を重ねた後、ギターの残響が春の嵐の如く吹き荒ぶ壮大なインターリュードに、思わず呼吸さえ奪われそうになる。
その後、「君」と「僕」はどんな運命を辿るのだろうか。我々に残されたのは、「いつもは開かない窓のそばにそっとなんでもなく花びらが」という春の嵐の後のワンシーンのみであるが、この一節こそ、「君」という存在を思わせるのと同時に、直前のインターリュードが、3曲目『桜』には描かれる事の無かった、別れ際の演出であったと気付かせる、最後の重要な因子なのではないか。
この一節が他曲との結び付きをより強固なものにし、ひいてはEP全体のテーマ『ひとり』を強調する。何気無く添えられたように見える一節にも、凄まじい描写力が秘められていると改めて感じた作品である。
07.入学式 (04/05投稿)
EPリリースから僅か4日後の完全新作は、かなりタイムリーなタイトルを冠した、出会いと別れのほろ苦い感情の滲むエレクトロニカである。
1コーラスに収まるシンプルな構成ながら、金物の音色が強い1分強のイントロが圧倒的な没入感を生み出している。歌詞も「天使」というファンタジックな要素を含みながらも、そのキャラクターは人間の輪に馴染めない関西弁の天使という、どこか親しみやすさに満ちた様相である。
ー晴れ間があふれる 羽はまた生える
僕らはどこかで巡り合える るるる
全体を通して、天使との邂逅の模様が、あくまで主人公視点で描かれていく。天使の心情は、基本的に主人公との会話の中でのみ描かれるが、それでも最後のこの一節には、心を開ける相手に出会えた天使の、純粋でかけがえの無い喜びが溢れている。人にもまたそれぞれの出会いと別れがあると、そんな想像を掻き立てる作品である。
08.寝なくても覚めなくても (04/14投稿)
氏は、またしても新たな表情を見せていく。氏の作風の根幹であるシューゲイザーに、今回新たにブルース的なグルーヴを織り交ぜ、渋くも極めて情緒的に訴える壮大な構成に仕上がった作品となっている。
Aメロ(+Bメロ)では特にそのグルーヴを前面に押し出す事で、どこか虚ろげで、曖昧な記憶の迷路を辿るような心地に包まれる。加えて、サビの壮大なピアノ&ストリングス、間奏の官能的なブラス等のアレンジが、更に変幻自在のグルーヴを生み出しており、聴く者によっては中毒に陥るほどの危うさすら感じさせる。全体的に現実感の薄らぐ演出であり、曲中複数回登場する「映画」は、理想を映した夢の世界の比喩か、とも捉えられる。
ーこの映画は前に見たから 結末はわかっているのに
なんで感動してるんだろう なんて素晴らしいんだろう ああ…
このパート(Bメロ)では一際暴力的な低音域の歪みが炸裂しており、"理想"なるものが如何に甘美であり、人の心を支配するほどの中毒性を持つかという示唆を多分に含むように感じられる。優美なメロディーの奥に隠された、底の知れない毒々しさに、無意識のうちに取り憑かれていく。
09.★手のひら彗星 (05/01投稿)
この頃まで、苔氏の中ではまだ『幽霊』の衝撃の余韻を引き摺ったまま過ごしていたように思う。その上で、この作品には『幽霊』の衝撃に匹敵する勢いで食らってしまった。『幽霊』を氏の表現の「開拓」の象徴とするならば、『手のひら彗星』は氏の「集大成」の象徴と言うべき作品であると、苔氏からは提唱していきたい。
当時、本作の構造を自分なりに解析したものを、#ぼかれびゅ公式を通じて発信させて頂いた。未熟な点は多々あるが、仮に本作を歌う事を目標にした場合に、セクション毎にどのような解釈で向き合い、表現するか…というマインドで向き合った結果、氏の本作における数多の拘りを発見出来たのではないかと思う。
本作の歌詞と曲の展開は、非常に密接にリンクしていると考えられる。総じて絵画的な描写が多分に盛り込まれている点は一貫させながらも、大きく3つの舞台転換を伴って展開されていると見る事が出来る。
非常にプログレッシブな曲展開は劇音楽のように一種の舞台装置として曲全体の空気感を次々と変え、歌詞もまたその流れに乗じて見える世界を変え続ける。決まりきった時系列を持たないまま、しかし途切れる事無く変容し続ける、まさに"聴く映画"と言うべき世界観の本作は、決して想像を絶やさない、ただ純粋な感動に向かって創作を続ける氏の作家性を遺憾無く凝縮したマスターピースである。人に氏の作品を勧める時、苔氏は真っ先にこの曲をピックアップしたいと思う。
10.★話変わるけど (05/22投稿)
前述の楽曲『寝なくても覚めなくても』に通ずるような、ブルースのよれた空気感を一層煮詰め、鬱蒼とした心地と共に出力したナンバー。
前半、日の差さない閉塞的な部屋の空気を演出するマイナー調の砕けたアレンジが、一層孤独感を加速させていく。「僕なんかが 生きてていいんですか…」と呟くほどに追い込まれた精神がもはや日常の一部と化したような生活。ところが、
ーなんとなく 好きな音楽をかけました
この一節から次第に空気が変わり始める。
アッパーなオルタナのビートによって、閉塞的な心は途端に弾け、それまでの悩ましさは楽観的な思考に変わり、部屋には光が差し始める。終いには外へと飛び出し、ミクのボーカルもフェイクが入ったりと踊り出すように軽快になる。まさしく言葉通り「話が変わる」のである。
ところで、本作のサムネイルは主人公(と思わしき少年)の他、1人で音楽に没頭する天使の姿も描かれている。この少年の生き辛さが解消されたのなら…と最初は想像していたが、躁状態の彼が真っ先に飛び出していったのは、光の差す窓の外ではないだろうか…などと1人で考え込んでしまった。
11.ブーツと長靴の違い (05/29投稿)
ダイヤモンドダストの如く張り詰めたサウンドが特徴的な、氏の作品の中でも極めて儚い筋書きの下に描かれたエレクトロニカ。季節感は一気に冬へと移ろい、かつ冒頭から死の香り漂う描写が冷たく胸を締め付ける。
ー僕たちはこの吹雪の中で
今父さんへの手紙を届けられずに息絶えてしまう
「僕」と「君」、二人で一つの象徴として、作中では宮沢賢治『双子の星』の"チュンセ"と"ボウセ"が引用されている。苔氏も一度ざっくりと拝読した程度なので詳細に言及するのは難しいが、故郷から遥か遠方の地で、孤独と痛みに曝された二人という共通項を見出す事が出来る。
ー君の心の傷を 詞にしてみたいと思う
チュンセとボウセには間も無く救いの手を差し伸べられる事となるが、本作の二人に希望の光は差したのか、それは知る由も無い。あくまで本作も一人称視点でありながら、運命を共にしてきた互いを尊び、異なる痛みも分かち合おうとする描写が浮かび上がる。その様相は美しくも、胸の詰まるような切なさに満ち満ちている。冒頭の一節に意識を奪われながら、それでも尚この二人の幸せを願わずにはいられない。
12.スパイダー (06/17投稿)
季節の移ろいと共に、氏の楽曲も梅雨の匂いを強めていく。飽和した音色と鋭く抜けていくギターの残響のコントラストで織り成す、湿度感の高いシューゲイザーに乗せて描かれるのは、氏本人の創作との生き方に関わる話のように思われる。
ーこの素敵な雨が止めば
さよならをしなきゃ
君の涙を拭うから さよなら
文学詞の中から生まれ落ちたような、「蜘蛛の生まれ変わり」と名乗る"僕"の存在とは一体何だろうか。関連性は薄いと思われるが、苔氏は真っ先にスピッツの『スパイダー』を想起したくなる。本作の"スパイダー"は決して"君"をどこか遠くへ連れ去るようなロマンの象徴では無いのだが、部屋の片隅に蹲るようにしている"君の涙"(="素敵な雨")をただ拭いたいと、そこに小さく寄り添う存在のように感じられる。
それは氏の作家性を体現するような、決して自身の感情を押し付ける事無くただ傍に寄り添う佇まいそのものであるようにも感じられる。何気無い会話のような一節にも、氏のしなやかな心象を存分に見出す事が出来る。
13.いい写真が撮れそう feat.夂戸ぽち (07/01投稿)
VocaDuo2023参加曲。心躍るコード感、軽やかなバンドサウンドのささやかな温もりに満たされるポップロックであり、また氏としては人間ボーカルを迎えた初めての楽曲となる。
夂戸ぽち(ちど-ぽち)氏によるボーカルは柔らかな響きを湛えており、楽曲の繊細に移ろう表情を決して邪魔する事の無い、本作の主人公としての役割を果たしつつも、語り部のような佇まいで言葉を添える存在であるように感じられる。
ー君といる時間はいつでもいい写真が撮れそう そんな感じだよ
ーいい写真撮れなくても君がいるならもうなんでもいいって感じだよ
言葉に映る情景もその一つ一つが開放的で、浮き沈みするどんな心地も、"君"さえいれば些細なものに思えてくる、そんな多幸感に包まれている。特に後半の転調(いい写真撮れなくても~)は抑え切れない喜びそのものであり、初心な体温を感じるアレンジも含めてどこまでも愛おしさに溢れた作品である。
14.星渡りの記憶 (08/05投稿+リリース)
本作は、ボカコレ2023夏参加作品である前編(10分)とBOOTH限定リリースである後編(10分)から成る、非常にプログレッシブな計20分の大作である。隠された秘密を解き明かすような特殊なリリース形態に、当時非常に興奮したのを覚えている。
そのベースにはロックがありつつも、それ以上に瞳に映る光景と密接に対応した、セクション毎に次々と移り変わるアレンジで、まさにミュージカルを鑑賞しているかのような圧倒的な没入感へと誘う。
最初、「線香花火」に象徴されるようなミニマルなイメージに彩られていたのが、ふっと目を閉じた瞬間から大輪の花火、「流星」の降り注ぐような壮大なスケールの光景へと一挙に移り変わっていく。最初はすぐ近くに感じていた"君"の存在が、瞬く間に遠く儚い記憶の波間へと巻き込まれていくような感覚へと囚われながら、緩やかに後編の幕が開けていく。
後編では、"君"と離れたくない、そんな潜在的な想いが滲む描写から始まり、前編の記憶が残されたような、現実と空想の曖昧な境界に立たされたような感覚の中を漂っていく。既に変わる事は無いと悟った運命を目前に、今ある時間を何よりも尊ぶと決めた穏やかな心模様が、遠くから弾ける花火の音色と共に演出される。
ー一生が終わる瞬間(とき)を想像している
ー僕は追憶する 夏の日々を 遠い過去のことを
ー君がいなくたって生きていくよ 今のこの気持ちを忘れないためにね
上は前編・後編における最後の歌詞の対比である(※後編は歌詞が未公開のため、正確では無い可能性があります)。後編では終盤、"君"と重ねる最後のひと時の散り際、幻想の彼方に吸い込まれるような爆発的な反響の連続で幕を閉じていく。その奇跡的な刹那を締め括るこの一節に、孤独を絶って歩んでいく確かな意志が感じられる。
20分という尺はこの音楽体験の前では本当に一瞬であり、しかしその中で"僕"の成長の記憶が確かに刻まれていく。映像的表現をふんだんに盛り込んだ、氏独自の世界観を、是非全編に渡って体感して頂きたい。
15.第二ヒント (08/08投稿)
前作から僅か3日後に投稿された、冒頭から疾走感携えたドラムと覆い被さるようなギターの残響の奔流に魅せられる、生の衝動をそのままに落とし込んだオルタナティブロック。夏真っ盛りの薫風感じる爽やかな調べとは裏腹に、歌詞の中では答えの無い日々への焦燥が夏の多彩な情景と共に克明に綴られていく。
ー君の笑顔 紺のスカート
何がしたいんだろう
ー睨む子猫 夏の訃報
どこへ向かうんだろう
瞬く間に過ぎ行く夏の日々の中、一方で自分自身は何か変われているのだろうかと、行き場の無い不安が襲い来る。不安が募るほどに目に映る情景にも陰りが差していく様が、上記のような克明な対比に一際強く表れている。光があればそこには必ず影が存在する。夏は輝かしいばかりでなく、その影では鬱蒼とした、陰りの色も強まるのかもしれないと、今まで気付いていたようであまり想像した事の無い感覚へと意識が向けられていく。
2サビ後、インターリュードの緩急に更に心揺さぶられる。残響感の強いサビから一度落とす事で意識を引き付けた後、リバースシンバルのみとなるラスサビ前の1小節によって、聴き手の焦燥、没入感も最高潮に達する。衝動に満ち溢れながら、氏の洗練されたアレンジを余す事無く味わえる作品である。
16.CDショップであなたにピース (08/17投稿)
氏は時折、「うちのドラマーはロボット」や「コマーシャルのあとで」といった、インダストリアルかつ少々コミックソングの味わいを併せ持つような楽曲を公開しており、本作も以上のような遊び心が散りばめられた音楽となっている。
イントロからフリーダムなブラス&ギター・ベースの音色で表されるのは、ふらっとCDショップに立ち寄った際の抑え切れない高揚感である。このサブスク時代、CDショップの楽しみを知らない、若しくは忘れてしまった人は年代問わず増えているのは確かである。本作には、そんなワクワクを今一度見つけ出すためのヒントが、至る所に散りばめられている。
ーサブスクにいないのを 稲妻の痕跡を
ー「うーん…あるか?ないか…あっ!いや持ってる…
あるか?ないか…あっ!あった!」
過去の同人CD、或いは親や兄弟の趣味で集めたCDの抜けなど、その存在に惹かれながらも縁遠いままのCDに、ふと立ち寄ったCDショップで思いがけず巡り会える事がある。そこから更に、自身の手の届かなかったアーティスト・ジャンルへと興味は加速していき、ますますその陳列棚が魅力的に映る模様が展開されていく。
ーCDショップであなたにピース
ーAからZまでどこにいたって響くミュージック
途中、まさにCDショップの販促のようなキャッチーなフレーズが飛び込んでくる。店内の陳列の模様が一瞬で思い浮かぶ期待感満載のフレーズであり、実際の店舗でも本作が聴けたらいいのに、と強く思う。
ー私ちょっと疲れてる
それはごはんの時間をかなり過ぎても
おそらくはひとりごと 止まる気配がしないよ
ところで、本作は氏の作品では珍しく、すっかりCDショップに魅せられた"僕"を遠巻きに眺める"私"という、新たな人物の視点が登場している。あくまで作品の主体は"僕"でありつつも、そこに一歩引いた視点が加わる事で、周囲に隠し切れないほどの高揚感が強調される。キャッチーかつ奥行きのある、音楽がもたらす無数の想像を体現した作品である。
17.★似合うはずだから (09/10投稿)
本作は、今年08/23より一部対象者に向けて期間限定で公開を開始した新たなVOCALOIDプラグイン「VX-β」のボイスバンクである『カゼヒキβ』を、氏としては初めて導入した作品である。
氏の作風の根幹である、ストリングスを基調に、繊細なメロディーの映える壮大な展開のシューゲイザーとなっており、その要素だけでも十分に満足度は高いのだが、ここにカゼヒキβという新たな因子が加わった事で、個人的には奇跡のような化学反応が起こっているように思われる。
カゼヒキのキャラクター性に立ち返ると、常に風邪気味の中性的な少年、既に亡くなっているといった特徴が目に留まるが、それに付随して、カゼヒキ自身が登場する作品では時にその姿を普遍的な生活の中に描写される事がある。
本作は、決定的にカゼヒキをテーマに描いた楽曲とは言い切れないかもしれない。しかし、「僕」から「君」に向けた率直な想いを歌い上げると共に、どこか死の香りを感じさせる本作の歌詞は、疑いようも無くカゼヒキのために書かれた詩のように思われるのだ。
ー君がいなくても花は咲く
君がいなくても花は散る
君はいなくても花を贈る
きっと似合うはずだから
カゼヒキは亡くなった後、天使となって現世での生活を得た。しかしそんな普遍的な日々を噛み締める度に、そこに"君"がいないという唯一の陰りが一層色濃く感じられる。それでも、見えない"君"に対して花を贈り続ける事で、"君"を普遍的な生活の一部にしようという、心の底からの優しさ滲むサビの歌詞に、当初嗚咽を漏らしそうになりながら聴き入っていた。
ーいつか報われるってのは
だいたい嘘だと思うけど 君のは本当だね
ー君がいない町を過ぎてく
君がいない日々を過ぎてく
君はいなくても君を想う
僕はそう決めたから
繰り返す日々の中で、何か劇的な変化があった訳で無い。一方で、その心象には確かな変化が生じている。彼はそれまで、身辺の生活を大きく変えない事で、"君"の存在を少しでも感じようとしていたのではないか。ラスサビでは、そんな普遍的"だった"生活から離れ、1人で日々を紡ぐ決意が描かれる。形に残るものが全てでは無いという確かな想いを胸に旅立つ、その後には秋風の吹くような緩やかな騒めきが残されていく。
18.★2nd EP『波間へ』(10/01リリース)
前述の楽曲『似合うはずだから』を筆頭に、4トラック全て「カゼヒキβ」を利用した楽曲を収録した、恐らく苔氏の観測範囲では最速となるカゼヒキβ利用のEPである(※アルバムにおける初発はオヨイダキビス『泳いだ踵』収録の「お祈り」)。VX-βは来年4月に公開停止が予定されている事から、全収録曲カゼヒキβによる本作は、いずれ貴重な作品群の1つとして数えられる事だろう。
収録曲自体は全て動画投稿されているが、Tr.03『黄色のピックをなくしたら(namima ver.)』については、昨年11/19に投稿された同名楽曲のセルフカバーであり、カゼヒキβボーカルの音源は現在このEP上でのみ聴く事が出来る。
Tr.01『似合うはずだから』
Tr.02『その闇は闇のまま』
Tr.03『黄色のピックをなくしたら(namima ver.)』
Tr.04『帰らなくちゃいけない』
▶Tr.02『その闇は闇のまま』
時雨の海の中を息を潜めて駆けるような、密やかな空気と疾走感を運ぶポストロック。息交じりの歌声は、繊細さだけでなく胸の奥底の騒めく心象も鮮明に映し出す。
氏の作品では珍しく"俺"という一人称の主人公の、他者からの感情への介入を避けるようにして寂寞の檻の中に生きる模様が、ラスサビに突入するまでの2回のヴァースによってじっくりと描写されていく。Aメロを〆る言葉の詰め方に、その奥に渦巻く焦燥を滲ませながら……
彼が抱える「闇」とは、どれだけ突き放そうと優しい"君"との、唯一の関係が途切れてしまう事への不安ではないだろうか。「それだけだ」と繰り返し紡ぐ、その優しさに生かされてきた、自身の心と向き合う描写に、切なさと愛おしさで胸がいっぱいになる。
▶Tr.03『黄色のピックをなくしたら(namima ver.)』
本作は、昨年11/19投稿の初音ミクver.が初出であり、本トラックはカゼヒキβによるセルフカバーとなる。
苔氏は元々、本作の柔らかな残響感と共に紡がれる、「僕に青春がないのは偶然じゃなかったんだ」「僕とあなたは出会うと決まっていたのか」といった、失われた青春への強烈な感傷を体現したフレーズが、氏の歌詞の中でも5本の指に入るくらい好きである。
そんな印象的な本作は、カゼヒキβボーカルによってよりその偶像性を増していく。一度その記憶から完全に切り離された"僕"が、「黄色のピック」という具象によって偶発的にかすれた記憶の渦へと巻き込まれていく。そんな曖昧ながら解像度の高い体験を、カゼヒキβの唯一無二の声が新たにもたらしてくれる。
▶Tr.04『帰らなくちゃいけない』
エフェクトの鋭く効いたギターのフレーズを軸に、全体的にパキッとした音像の中で展開されるシューゲイザー。
「コートニー」とはカナダの地名か、或いは人名だろうか。一瞬にも感じられる別離の情景が、次々とカットの切り替わるようなセンセーショナルな展開によって描かれていく。
「涙に宿る火のような悲しみ」という、心の奥底の感傷にクローズアップした描写から、寂しげなコーラス→爆発的な残響へと遷移していくインターリュードは、そこに映る2人のかけがえの無い記憶を想像させると共に、別れ際の「…もう帰らなくちゃいけない」という一言の重みを一層加速させる。別離の関係にも色を添える、カゼヒキβの佇まいは最後の最後まで印象的である。
19.行きたいところがある (無色透名祭Ⅱ参加曲→11/07本人投稿)
無色透名祭Ⅱ参加曲。公開から5日後に本人による投稿も行われた。
マイナー調の少し張り詰めた空気漂うイントロから、火事によって棲み処が失われようとしているという、不穏な描写で幕を開ける。
ー楽しいことも その反対も形を失う
故郷を失う事の意味を表した、鋭く生々しい表現に胸が詰まるような想いになる。一方、主人公は新たな門出に向けて、寂寞を押し込めながらも前を向こうとする様相が強調されている。
ー僕は今 行きたいところがある 持ち物は少なくしてしまおう
いつか終わる そのいつかは今じゃないと思う
ーこの寂しさたちが どこからやってきたか
たどっていけばいつも君に行き着く 美しい季節 花がこぼれる
二度登場するこれらの歌詞は、1回目と2回目でその背景が異なるように思われる。1回目が災禍の前とするならば、2回目は故郷を追いやられた後の心情ではないだろうか。
故郷のまだ残っている頃、既に"君"の存在はそこには無い。何気無い生活の中で、どこか心に穴の空いたような心地で過ぎ行く日々。そんな悲しみさえも、この災禍が奪っていくのかもしれないという示唆を与えつつも、最終的にはまた同じ寂しさに行き着く様が綴られていく。そこには、いくら生き様が変わろうとも薄らぐ事の無い"君"への想いがありのままに描写されており、壮大な残響の奔流と相まって、この先も命を灯していく、揺るぎの無い意志を感じる事が出来る。形には残らずとも生き続ける、人生を導くような感動がそこには待っている。
20.ひだまりチャット (『合成音声のゆくえAlter』収録曲)
2023年、話題沸騰であったコンピシリーズの一角『合成音声のゆくえAlter』収録曲。アルバム中盤、全体の流れを支えるような意味を持つ本作は、茜空の模様がが浮かぶような、一際暖かな残響の調べに包まれるシューゲイザーである。
6分間という緩やかな時間のスケール感を伴って描かれるのは、特段の優しさに包まれた、"君"の傍にいる事の純粋な多幸感である。生活と地続きの情景の中、それが彼にとってどれほど特別なものであるかが、歌詞を読み解いていくうちに見えてくる。
ーおはようの鐘が鳴る少し前の
この空気だけは楽に吸えるんだ
ー記憶はずっと記憶でしかないよ
もうすぐ学校 行かないと
これらの描写から分かるように、今ここにある「ひだまり」は夢の中のものであり、間も無く別れなければならない事を悟る。"君"のその姿も現実では無い事を知りながらも、それでも彼の眼には希望の光が宿っていくのを感じる。
ー明日はきっといい日になるよ
明日もきっと思うけど
ー明日は絶対いい日にしよう
君と笑う日にしよう
深い残響感のインターリュードを経て、小さな希望だったものが最後には確信へと変わっていく。自分の世界は少しずつ、しかし確実に良い方へ変えていけると、深い信念を湛えた作品である。
21.シェフの気まぐれロック (12/09投稿)
※12/18追記
なななボカロオルタナティブ祭2023冬参加作品。個人的に、ボカロ系投稿祭の中でも一際血の騒ぐイベントである。
本作はコミックソング的な傾向の強い作品で、キレの鋭いフレーズに対して、フリーダムに飛び出す擬音の歌詞が特徴的である。
ガレージロック・ロックとブルースの中間色を繋ぐ、多彩なギターの音色を次々と聴かせる構成で、自らの手に馴染んだ音楽のスパイスを感じたままに散りばめていくような、尽きる事の無い期待感へと導いてくれる。
ー君の笑顔見たくていつでも
君のことを考えてる
そんなおどけた調子の中で、ふと顔を見せるひと匙の優しさに、心はまるごと持っていかれてしまう。"君の笑顔"が見たいというその一心によって、普段は表に出る事の無い、自分でも知らなかった自分に出会う瞬間のときめきを凝縮した、存分の自由に向かって羽ばたける作品である。
22.ありとあらゆるあれこれが (12/20投稿)
※12/31追記
氏の2023年最後のリリースとなる本作は、日常の延長線上で付き纏う、靄のかかったようなやり切れない心地を体現したポストロックである。
アコースティックで穏やかな調べを取り巻くように、普段以上に歪みを纏ったギターやブラスの際立つ構成で、壮大に展開しながらも胸の奥に渦巻く鬱々とした感情を引き出す空気感を生み出していく。
本作の曲構成は、基本的に同じ歌メロを繰り返しながら、その間を3回の表情の異なるインターリュードで繋ぐような展開となっている。1回目(1:10〜)がこの心の靄を体現しているとすれば、以下のフレーズを皮切りに展開される2回目(2:37〜)のインターリュードが、またその印象を大きく塗り替える。
ーぐちゃぐちゃ散らかる ぐしゃぐしゃ暴れる
解決に向かわないまま増幅した感情が、ふと糸が切れたように振り切れる。身辺を散らかすという表現が実際の行為であるか心象の比喩であるかは分からないが、この直後に訪れる、ノイズが渦巻く環境音の爆発と、その奥でグルーヴを生み出すピアノの旋律に痺れるインターリュードは、そんな感情を一度清算するような描写に感じられる。
ーそれを背にして明かり落とした
るるるる奏でる らららら歌っている
「それ」という感情を過去に残して、今の自分と向き合うための歌へと変えていく。3回目(3:36〜)のインターリュードの大団円的な調べから、最後は初音ミクの歌声ひとつで締め括る。過去の愁いからの脱却、そして確実に未来への兆しを拓くこの歌が、1年の終わりにある事が心より嬉しく思う。
さいごに
以上、計26曲が年内にリリースされた2023年inuhaさんの全てとなります。数あるアーティストの中でも尋常でないリリースペースと一切妥協の無い作品の数々で、我々リスナーも心より楽しませて頂きました。
苔氏のレビューによって、inuhaさん楽曲の魅力が伝え切れたとは1mmも考えておりません。inuhaさんとの出逢いのほんの足掛かりとなれば、それだけで苔氏は幸せです。是非一度、今回紹介した作品を聴いてみて下さい。そして、その時に感じたままの想いを"あなた自身"の言葉にして頂きたいのです。
inuhaさんの世界観が様々な人の言葉によって広がっていくのを、苔氏は見てみたい。媒体は何でも構いません。#ぼかれびゅを活用して頂いても、苔氏のDMに送って頂くのでも構わない。可能であれば、このnoteのように、なるべく長くご自身の手元においておけるような(欲を言えば様々な人が閲覧出来るような)状態にしておくのが良いと思います。苔氏は、今後も末永くinuhaさんの作品を愛していけるようにこの記事を書きました。皆様も、自身の好きな作家の世界観、更にそれを通して自分自身と今一度深く向き合ってみませんか。
以上!!!苔氏による#ボカロリスナーアドベントカレンダー2023初日の記事でした!ド ド ド ド ド ド ド
明日は「め」さんより記事が上がる模様です 今日の分ももしかしたら上がっているかもね 今後も今回以上の熱量こもった記事が次々と投稿されていく事が期待されるので、皆さん覚悟の準備をしておいてください!いいですね!!
おまけ
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(ヒント:犬(inu)が8匹なので……)