マガジンのカバー画像

短文学集

25
筋も思想も体系も、全部気にせず楽しむことを短文学と称して日々の感傷を綴る。
運営しているクリエイター

2022年10月の記事一覧

五月雨、一矢となって。

五月雨、一矢となって。

くれなずむ空は薄雲を浮かべ、朱に藍に染めては散らす。
渡る風は夏の残滓をすっかり浚って、路地の隅まで清澄で満たした。
こうしていつまでも座っている、私の鼻先を金木犀が嘲笑う。
今に冴えわたる月が現れ、心地よい寒気を降り積もらせるだろう。

肌が湿っていくのを感じながら、私は瞼を閉じる。
何も映さないその暗幕の中に、ずっと何かを探していた。
そうしている間に過ぎた季節が、朝が、雨が、閃いては消えてゆ

もっとみる