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短文学集

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筋も思想も体系も、全部気にせず楽しむことを短文学と称して日々の感傷を綴る。
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2019年6月の記事一覧

病窓に見る桜

病窓に見る桜

 座椅子の上に積んだ本を目の前の座卓に置く。同じようにして積まれた本の山に手が当たって、床に崩れ落ちた。それを拾って置きなおすと、今度は時計が転げ落ちる。腹の底から熱を帯びたため息があがってきて、それを天井に向けておおげさに吐き出した。
 最近、何もかもこんな調子だ。歩けばゴミ箱を蹴飛ばし、書類は指をすり抜けて散らばり、水筒は忘れる。その度に身体の中心に熱が蓄積される。心臓とか、胃とか、そういうも

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