ロシア産原油上限価格制度について

ロシア産原油の上限価格制度(Price Cap Policy)の日本に関わる概要は以下のとおりです。

  1. ロシア産原油の上限を決め、これ以下なら海運取引を認める。
    上限は、2022年12月5日時点で1バレル当たり60ドル(FOB)
    逆に、これ以上の価格で行われる取引は認めない。
    そのために、本制度に違反する場合は、取引に各国の業者(後述3.に該当する者)が参加することを禁止する。

  2. 参加国はG7+オーストラリア
    これをプライスキャップ連合という(何ちゅう名前や!)。

  3. この制度により規制を受ける業者は次の5つ
    (1) 売買に関わる者(売主・買主・仲介業者等)
    (2) 支払に関わる者(銀行・融資会社等)
    (3) 海運に関わる者(船主・用船業者・海運船舶代理店等)
    (4) 保険会社
    (5) 船籍の登録業者
    (6) 通関業者

  4. 上記業者は、ロシア産原油が上限以下で取引されたことを証明する書類を保持しなければならない。
    なお上限価格には、送料、保険料、通関費用は含まれない。

  5. 例外として以下を認める
    (1) 日本のサハリン1とサハリン2
    (2) 第三国で精製された石油製品の売買
      → 抜け穴
    (3) 錯誤や偽造書類によって業者が、上限以下の取引と思った場合
      → すごい抜け穴!

ロシア側の対応)
ロシアはこの制度の導入に対して、どのような対応を取るか協議しています。
現在、ロシア産原油はこの制度の上限以下で取引されており、現実的には被害を受けない状態になっていまして、それどころか、転売により利益を得ているインドやトルコ、中国からの値引き要請に対する牽制として利用できる可能性があるとのことです。

※ ここからインサイダー情報です。
(もうあちこちで言われているから、インサイダーでもありませんね💦)

協議されているオプションは次の3つで、どれかひとつとなるか、これらの組み合わせとなるか、あるいは全てのオプションが棚上げとなるかは、まだ決まっていません。

 [オプション1]
価格上限を課しているプライスキャップ連合国(仲介国または仲介業者のチェーンを含む)への石油販売を禁止する。

 [オプション2]
受領者が契約でどの国を指定したかにかかわらず、上限価格を条件とする契約に基づく原材料の販売を禁止する。

 [オプション3]
この制度により、国際価格と比較してロシア指定ブランドの価格が大きく割引されるような場合は、販売を停止する。

なお、プライスキャップ連合(全く何ちゅう名前でしょう)は、前述の(1)~(6)の業者を排除することで、この制度の実効性を担保する、つまりロシアに「この価格以下にしないと貿易できませんよ」と脅すつもりでしたが、ロシアは既に対策をとっていました。

まず、ここ数箇月でなんと100隻以上のタンカーを追加で支配下に置き万一に備えて来ました。
(今年の2月までは、大半の輸出用タンカーは他国に頼っていました。)
→ プーチン氏または側近の慧眼に脱帽です。
また、保険も自前でまかなえます。
支払は、ドルを使わない自分達の通貨で行うこともできます。
(実際、対中国貿易ではドルを使わないルーブル&元取引、対インド貿易ではルーブル&インドルピー取引が主体となっています)
通関は、プライスキャップ連合国(重ね重ね何ちゅう名前でしょう)でなければ問題ありません。

プライスキャップ連合(…何ちゅう…ブツブツ)は、石油が欲しい国なのに、自分達の選択肢を狭くしただけのような気がします。
ただしサハリン1,2(ガス以外に石油も副産物として得られる)が例外として認められたことは、将来の日本にとって良かったですね。

以上

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