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たとえばどれだけしあわせであっても指先から冷えてゆく夜があって、そんなときわたしは決まってつめたい湖の底にゆらゆらと沈んでゆく。死を渇望するその瞬間にだけ、どうしても鮮やかに映る生がある。伸ばした手はきらめく水面にもぷかり漂う泡にも触れられず届かず虚しく空を彷徨うばかり、そんなふうにして生きてゆかなければならない。生きてゆくほかない。

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