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写日記

帰り道
ふと見上げたら

月が見えた


「明日 中秋の名月か···」


明日見れるかな···

妻は
中秋の臨月だった

(明日産まれたら名前は名月かな)

名もなき命

扉は
もうすぐ開こうとしている

(俺は育てられるのだろか)

期待と不安が交差する夜


足取りもいつの間にか
遅くなっていった

(父親と同じになったら···)

父親はサービス業の管理職だった

朝早く出勤し
夜遅く帰ってくる

土日休みはなかった

父親が休みの日は
学校を休んで
父親が行きたい場所へ
行った

何か買ってくれると約束しても
結局忘れて
自分の趣味や仕事に関する物を
購入していた

褒める事もなく
「お前が出来るわけない」
と言われ続けた

愛情を受けないで育った

愛情を分からない俺に
愛情を教えてくれたのが
妻だった

(あんな辛い思いは絶対させない)

いつの間にか
足取りは力強くなっていた

月明かりに照らされた道は
光り輝き
未来を照らしていた



携帯電話が鳴った

電話に出ると
期待と不安の表情になり
来た道を引き返し走りだした

駆け抜けていく道
途中にある公園の時計は
0時を指していた









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