見出し画像

「この歳で、地元みたいな場所をつくれるってのは予想してなかったです。」 -天野企画 天野光太郎と、池上のこと-

現在制作中の、東京都大田区池上という街にまつわるエピソードを
さまざまな人に聞いたZINE。
その内容の一部を、noteで公開します。



僕、この街は地元じゃないけど地元感があるんですよね。駅降りたら「地元戻ってきた感」があるっていうか。

もともと駅の近くの「SANDO」っていうカフェで店長やってたってのもあるけど。なんか、よく言えば自由で楽しい、わるく言えば荒んだ時期をこの街ですごしたのが大きいなぁ。



2019年の5月に「SANDO」ができたころは、店長じゃなかったんです。僕も会社員やってたんですけど、「天野くん、手伝ってくれない?」って知り合いに言われて、週末だけ手伝いに来るようになったんですよね。

最初は「なんでこの街なの?」って思ってたんです。名前は知ってたけど、あんまりイメージがなくて。で、来るようになったら、「こんないいとこ、なんで知られてないんだろ」って。ここ、空気が独特ですよね。京都とか、鎌倉とかみたいに知名度はないけど、ちょっと似たような感じあるじゃないですか。寺町特有の空気の流れ方してるな。



本門寺にある展望台から景色を見渡すと、武蔵小杉とか蒲田とかのビルが見えるでしょ。初めてあの景色をみたとき、別世界から外を除いてるみたいな、不思議な感覚になったんですよね。そのときはちょうど夕暮れどきだったんで、なおさら。「こんなとこあるんだ」って感じで。だから、「これはおもしろい街に違いない」って、期待感が高まっていきましたね。

店長になってからは、週5.6はこの街に来てましたけど、なんか、噛みしめる感じじゃなかったんですよね。僕もカフェの店長なんかやったことないから混乱してて。「どうしたらいいんだろう」みたいな。



それで、とりあえず酒いっぱい飲みましたね。店終わったら酒を求めて街に出て。いろんな店で飲み食いしてましたよ。「ちゃこーる」でしょ、あと「滝亭」、「成田屋」、「梅善」それと「にれの木」か。「ヒマラヤ」でカレー食って、隣のバー「ルーツ」に行くとか。そんで、帰るのだるいし、風呂だけ「桜館」とか「蓮沼温泉」とか、銭湯行って。終電無くして谷口くんと黒田さんが住み開きしてた「ちおん」に泊まらせてもらったり。なんか大学生みたいなことしてたなぁ。

結構、この街にゆかりがない友達も遊びにきてくれましたね。「いいからこい!チャコールな!」って呼び出してね。初めて池上に来た友達と、池上の人をまぜこぜで飲み行ってたりしてたんですよ。

いやぁ、それはもう、いろんな酒がありましたよ。疲れを癒すための酒、ストレス発散のための酒、楽しい酒…。荒んでたけど、全然ネガティブな感じじゃないですね。あのとき「あんまり酒飲むのよくないしなぁ」とか、躊躇するんじゃなくて、振り切れて飲んでよかったなと。

あの飲みまくってた時期があったから、仲良くなれた人がたくさんいるんで。狙ってないんですけど、街の人との関係が濃くなりましたよね。僕相当、酔っ払ってダメなところ見せてましたからね(笑)



この歳で、地元みたいな場所をつくれるってのは予想してなかったです。僕の場合、下北も地元みたいな感覚があるんですけど、あそこは20代前半からライブしてましたからね。この街の場合、30代になって、ゼロからですからね。それはやっぱ、飲みまくって、ダメなところも見せたからなんでしょうね。まぁ、みんなに嫌われなくて良かったなって思いますね(笑)



サポートがきましたって通知、ドキドキします。