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「離れると、街のありがたみがわかりますね。」-久松温泉次男 田邉 茂太-

現在制作中の、東京都大田区池上という街にまつわるエピソードを
さまざまな人に聞いたZINE。
その内容の一部を、noteで公開します。

生まれ育ったところの魅力ってなんだろうって聞かれても、長年住んでると、わかんなかったりしますよね。外の人方がわかるんだろうなっていう。だから聞かれても、「なんかありますかね?」って逆に聴きたくなっちゃうくらいなんですよね(笑)。

私は大田区池上にある久松温泉が実家なので、27歳になる前くらいまで久松温泉の3階に住んでましたね。実家が銭湯なので、お風呂はここのお風呂入ってたから、記憶にないころからお客さんに見てもらってたんですよね。「こんな大きくなったか」って、話しかけられるわけですよ。でも僕は「このおじさん誰だろう」っていう(笑)。

今思い返せば生意気な小僧だったのかもしれないですけど、ツケでメシを食べてましたね。小学生のころなんか、「久松でーす」って言って中華屋入って、ラーメンとかチャーハンとか食べて、「ありがとう」って言ってそのまま出てって、後で母親が払うみたいな。

風呂では思い出はたくさんありますね。銭湯は、自分の家のリビングみたいな感覚でした。うちのお湯、45度以上ある熱い風呂だったんですけど、常連さんがヒーヒー言いいながら入ってる横で小学校の僕が普通に入ってたので、「なんだこいつは」みたいな目で見られるんです。「ボクよく入れるね」って声をかけられたり。

あと、銭湯って教育の場でもあるので、よく怒られましましたね。石鹸を体に塗って、浴場でシャーって滑ってあそんでたりして、お客さんにめっちゃ怒られるっていう(笑)。

よく、銭湯って平等な場だって言われます。「天は人の上に人を造らず」って言った福沢諭吉さんも、実は銭湯も経営してたみたいですしね。そういう意味でも平等なんだろうなって思いますね。



まぁでも、この街に住んでた頃は、若かったっていうこともあって、「なんにもないし、つまらない街だな」と思ってましたね。興味を持つようになったのは、この街を出てからです。近くにいるときはわからないけど、離れるとありがたみがわかるというか。街に限らず人もですけど。

だから、個人商店が日に日に減っていくのは残念ですね。どんどんチェーン店になっていくでしょう。資本の原理に従ったらしょうがない部分もありつつ、どうにかしてローカル感を残していけるのかって考えてます。


この街は人口増えてると思うんですよね。駅ビルもできて、スタバにあんなに人がいるじゃないですか。しかも若い人がたくさんいる。でも、そういう人たちが地域の活動に興味があるかって言ったら、そんなことないんですよね。だから、その人たちに興味を持ってもらえたら、すごい爆発力はあるんだろうなと想ってます。

そういう人が何に興味を持つのかがまだわからないですけど、何かこの街を好きになってくれて、何かやろうっていうふうになるといいんだろうなっていう。その人たちに興味を持たせるっていうのが課題だったりしますね。たとえば今もやってますけど、お寺でライブをやるとか、銭湯で落語をやるとかね。日常の中で接点があると、入りやすいですよね。


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