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新しい日のとまどい シーン1

生きることに特別な理由なんかない。僕に限ってかもしれないけど多分ない。いやいや、みんなもそんな感じじゃないのかな。深く考えずになんとなく生きている。何のために生きるか、なんて考えるのは中学から高校生。俗に言う思春期。それにしたって後から考えれば、黒歴史だったりね。

それはともかく考えなければいけないのは今のこと…なんだと思う。後悔はある。するんだよ。もっともそのすぐじゃなくってある種、衝動というか興奮の時間が過ぎ去ってからではあるけれど。

彼女との間をギクシャクさせたのは、いつだってこの性格なんだ。そこはわかってる。いやわかってるって言葉にする時点でわかってない。そう言われそうだ。でも治せない。それで4年間続いたんだ。ふたりの暗闘の記録のようなものがさ。

結果が今の僕。彼女が去った部屋は、寒々として広さだけが‥。と書きたいところだが、そんな描写はウソだ。少なくとも僕のケースで言えばだが。
ホットした、それが正直な感想。

家庭という苦悩から逃れるために旅をする、釣りに行く。いたよねそんな文豪と呼ばれる人物が。限界まで我慢して海外まで釣りに行く生活と離婚。どっちがいい。

少なくとも彼が踏み出せなかった一歩を踏み出すことには成功した。それが幸せかどうかはまだわからない。まぁどっちにしても最適解なんてありはしないんだろうから。
二人の時間と一人の自由 その違いを書き出してみようか。

●よかったこと
冷蔵庫の中に保存用のコンテナがなくてスッキリ
好きな時間に酒が飲める
本を読む時間がある
独り言を口にする自由がある
日曜学校へ行く必要がない

●困ったこと
冷蔵庫の中が寂しい
酒浸りで体調が悪い
人付き合いが減った
妄想癖の復活
日曜の過ごし方がわからない

こうして書き出してみるとメリットとデメリットは、ほぼ相関関係にある。
ただし最後の日曜学校云々はもちろん嘘だ。幼稚園からこっち、教会へは足を踏み入れた記憶さえない。

正直にいおうか、たとえば日曜の朝だ。どんなシーンが目に浮かぶ。彼女の淹れてくれたコーヒーの香りで目を覚ます。まぁそこはレモンティーでも、味噌汁でもいいんだけど。それそもそもいっときの幻想だよね。

だからこれからの新しい1日のはじめ方には、いくつかの工夫が必要だ。彼女との時間でもなく、彼女と出会う以前とも違う新しいライフスタイル。では、その違いはどこにあるのだろう。

そこまで考えたとき、その愚かしさに気がついた。
でもそこは分析することでもないよな。ここはシンプルでいい、新しい一歩は今までやらなかったことから初めてみるというのはどうだろう。

悪くないぞ。とりあえず冷蔵庫のドアを開けてみる。保存コンテナはもちろん使いかけの瓶詰めさえない。キレイに片付いているといえば聞こえはいいが、その実情は3本の缶ビールが投げやりな風を見せているだけ。

しかしこれ冷蔵庫の立場?からいえばどうなんだ。こいつをどうにかしてやろう。冷蔵庫本来の姿を維持するためにするべきことといえば料理だよね。レシピというマニュアルがあったとしても、行為としてはとてもクリエイティブだ。生活の中に料理の時間を組み込んでみる。おもしろそうじゃないか。

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